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第1部 グランドール魔術学校 ~亡国の古城と地底竜の守るもの~
第57話 地下深くへ
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双竜模様の扉の先には、地下深くへと続く長い長い階段があった。
進むべきか否か、イーアは一瞬、迷った。
だけど、オッペンが階段に駆けこむのを見て、イーアも気持ちをおさえられなくなった。
この地下には、モルドーが守っている何かがある。
この先に進めばガネンの森が襲われた理由がわかるかもしれない。
イーアはオッペンの後を追い、扉の先に進んだ。
「長い階段だな」
オッペンが元気よく先頭に立って階段をおりていった。
「この辺りの壁や階段は地下2階までとは造りがちがうね」
ユウリにそう言われて、イーアも気がついた。
たぶん、地下2階まではかつてギアラドのお城だった部分なのだろう。壁も床も切り出された石が丁寧に並べられていた。
だけど、さっきの扉から先は、様子が違う。
階段部分は石でできているけど、壁や天井は自然のままだ。
オッペンが階段を降りながら体をブルブル震わせた。
「なんか、さっきから変な感じがすんだよな。ここ、なんか変だよな?」
「そう?」
イーアはよくわからなくて聞き返したけど、ユウリは言った。
「ぼくも奇妙な感じがする。階段を降りるにつれ、なんだか、よくわからないけど不安になってくるんだ……」
そう言われて、イーアは気がついた。
ここはガネンの森やウェルグァンダルの塔と似たような気配がする。イーアはあっちの世界に慣れているせいで、特に何も感じていなかったけれど。
イーアはひとりごとのようにつぶやいた。
「そっか。この先は、精霊が住む世界なのかも」
やがて、階段は終わり、平坦な道に出た。この辺りはまるで洞窟の中のようだ。
ユウリはつぶやいた。
「この先は一本道みたいだ。なんだろう。何か、引っかかるな」
ユウリの言う通り、この先の道は一本道が何度も曲がりながらずっと続いているようだ。
オッペンが言った。
「いいから行こうぜ。進まねーと何があるかわかんねーよ」
「わかったよ。でも、足もとに気をつけた方がいいかも。ドレシア」
ユウリは周辺をさらに明るく照らした。
あたりは地下とは思えないほどはっきりと見えるようになった。
イーア達は通路を進んで行った。
突然、ユウリは言った。
「待った。何かおかしい」
ユウリはイーアとオッペンを追い抜いた。ユウリがさらに一歩前に踏み出すと、途端に、音もなくユウリの足が着地した先の床が消えた。
「ユウリ!」
でも、ユウリは落ちかけたところでとっさに浮遊魔法を唱えていた。
魔法で空中に浮遊しながら、足の下の暗い大穴を見て、ユウリはつぶやいた。
「落とし穴か……」
「やべっ。おれ、あのままだったら、落ちてたぜ」
イーアとオッペンはまだ浮遊魔法がうまく使えない。
落とし穴は何メートルも続いていて、とても跳び越えることはできそうになかった。
ユウリはイーア達のそばに戻ってきながら言った。
「ぼくはもうひとりぐらいなら背負って移動できると思う」
「わたしはだいじょうぶ。オッペンといっしょに先に向こう側に行ってて」
イーアは『友契の書』を取り出した。
ユウリがオッペンを背負って魔法で移動していった後、イーアはペテラピのフモシーを呼びだした。
ペテラピは大きな白いうさぎみたいな霊獣だ。
とっても大きくて、ふわっふわのきれいな毛並みをしている。
ガネンの森にいた頃、イーアはフモシーという名前のペテラピと仲がよくて、よくお布団がわりにしていた。今もたまに寮でフモシーを呼んでいる。
それはそうと、呼びだしたフモシーにイーアは頼んだ。
『フモシー。向こう側までつれてって』
『すぐそこね。でも、狭くて天井が低いね。まぁいいわ、こんくらいならどうにかなるでしょ。しっかりつかまって』
イーアはフモシーにのって首のあたりをしっかりつかんだ。
フモシーは一瞬で落とし穴を跳びこえた。
反対側にいたユウリとオッペンは跳んでくるフモシーにぶつからないように両側の壁にぴったりくっついていたけど、フモシーの毛が顔にふれて、オッペンはくしゃみをした。
フモシーが帰った後、オッペンは名残惜しそうに言った。
「ふわっふわだったな。ふわふわでかうさぎ。あのふわふわ、また触りてぇ……」
オッペンはすっかりフモシーのふわふわな毛のとりこになったみたいだった。
さらに少し進むと、今度は、両側の壁から炎が出てきた。
ユウリが水魔法で消火してくれているすきにイーア達は走りぬけた。
さらにしばらく進むと、とても広い空間に出た。
天井には、いくつかキラキラとした鍾乳石があった。
誰もいないけど、イーアは周囲に無数の精霊の存在を感じた。
ユウリがあたりの様子を見ながら言った。
「ここはきっと、もともと地下の大洞窟なんだ。城の地下にあった洞窟を迷宮につくりかえたのかな」
イーアはたぶんその逆だろうと思った。
きっと、ギアラドの人達は地下の迷宮の上に城をたてたのだ。地下の迷宮を守るために。
「つーことは、やっぱ、この先にあるのはお宝だよな」
オッペンはうれしそうだ。
でも、イーアは不安になってきた。
モンペルたち、封印された扉、これまで遭遇したトラップ……すべて、この先にある何かを守るためのものだ。
そして、モンペルたちとモルドーが千年以上の間守ってきた何か……それは、きっと、オッペンが想像しているような財宝ではない。
ガネンの森にあったのと同じもの、決して白装束の魔導士の手に渡してはいけないものがここにあるとしたら。
そして、白装束たちがそれを狙ってこの地下に入りこもうとしているのなら。
やっぱり、あの守護双竜の扉は封印しておかないとまずい。
イーアは言った。
「これ以上、進まない方がいいかも。もどろう」
「あんだよ。イーア。らしくねーな。びびったのか?」
何も知らないオッペンは挑発するように言ったけど。
「そうじゃないけど。できたら、わたしは、ここにいるモルドーに会って話をしたいけど。あの扉、今は誰でも入れる状態だよね?」
ユウリはうなずいた。
「うん。カギは開いたままだよ」
「ここには、モルドーたちが守ってきたとても大事なもの、絶対に白装束……<白光>に渡しちゃいけないものがあるんだと思う。だから、戻ろう。あの扉のカギを、もう一回閉めなきゃ。ここに誰も入らないように」
でも、オッペンは言った。
「もうちょっとだけ。あのむちゃくちゃでっかい扉の向こうを見てから、帰ろうぜ?」
オッペンが指さす先、イーア達の前方には武骨な巨大な扉があった。双竜模様の扉よりもずっと大きく、何の装飾もほどこされていない、ひたすら頑丈そうな扉だ。
そして、イーアの耳には低い唸り声のような音が聞こえていた。
「なんか、聞こえるね……」
「すぐに戻ろう! これはたぶん魔獣の声だ!」
ユウリが叫んだ時、突然、前方の巨大な扉が開いた。
進むべきか否か、イーアは一瞬、迷った。
だけど、オッペンが階段に駆けこむのを見て、イーアも気持ちをおさえられなくなった。
この地下には、モルドーが守っている何かがある。
この先に進めばガネンの森が襲われた理由がわかるかもしれない。
イーアはオッペンの後を追い、扉の先に進んだ。
「長い階段だな」
オッペンが元気よく先頭に立って階段をおりていった。
「この辺りの壁や階段は地下2階までとは造りがちがうね」
ユウリにそう言われて、イーアも気がついた。
たぶん、地下2階まではかつてギアラドのお城だった部分なのだろう。壁も床も切り出された石が丁寧に並べられていた。
だけど、さっきの扉から先は、様子が違う。
階段部分は石でできているけど、壁や天井は自然のままだ。
オッペンが階段を降りながら体をブルブル震わせた。
「なんか、さっきから変な感じがすんだよな。ここ、なんか変だよな?」
「そう?」
イーアはよくわからなくて聞き返したけど、ユウリは言った。
「ぼくも奇妙な感じがする。階段を降りるにつれ、なんだか、よくわからないけど不安になってくるんだ……」
そう言われて、イーアは気がついた。
ここはガネンの森やウェルグァンダルの塔と似たような気配がする。イーアはあっちの世界に慣れているせいで、特に何も感じていなかったけれど。
イーアはひとりごとのようにつぶやいた。
「そっか。この先は、精霊が住む世界なのかも」
やがて、階段は終わり、平坦な道に出た。この辺りはまるで洞窟の中のようだ。
ユウリはつぶやいた。
「この先は一本道みたいだ。なんだろう。何か、引っかかるな」
ユウリの言う通り、この先の道は一本道が何度も曲がりながらずっと続いているようだ。
オッペンが言った。
「いいから行こうぜ。進まねーと何があるかわかんねーよ」
「わかったよ。でも、足もとに気をつけた方がいいかも。ドレシア」
ユウリは周辺をさらに明るく照らした。
あたりは地下とは思えないほどはっきりと見えるようになった。
イーア達は通路を進んで行った。
突然、ユウリは言った。
「待った。何かおかしい」
ユウリはイーアとオッペンを追い抜いた。ユウリがさらに一歩前に踏み出すと、途端に、音もなくユウリの足が着地した先の床が消えた。
「ユウリ!」
でも、ユウリは落ちかけたところでとっさに浮遊魔法を唱えていた。
魔法で空中に浮遊しながら、足の下の暗い大穴を見て、ユウリはつぶやいた。
「落とし穴か……」
「やべっ。おれ、あのままだったら、落ちてたぜ」
イーアとオッペンはまだ浮遊魔法がうまく使えない。
落とし穴は何メートルも続いていて、とても跳び越えることはできそうになかった。
ユウリはイーア達のそばに戻ってきながら言った。
「ぼくはもうひとりぐらいなら背負って移動できると思う」
「わたしはだいじょうぶ。オッペンといっしょに先に向こう側に行ってて」
イーアは『友契の書』を取り出した。
ユウリがオッペンを背負って魔法で移動していった後、イーアはペテラピのフモシーを呼びだした。
ペテラピは大きな白いうさぎみたいな霊獣だ。
とっても大きくて、ふわっふわのきれいな毛並みをしている。
ガネンの森にいた頃、イーアはフモシーという名前のペテラピと仲がよくて、よくお布団がわりにしていた。今もたまに寮でフモシーを呼んでいる。
それはそうと、呼びだしたフモシーにイーアは頼んだ。
『フモシー。向こう側までつれてって』
『すぐそこね。でも、狭くて天井が低いね。まぁいいわ、こんくらいならどうにかなるでしょ。しっかりつかまって』
イーアはフモシーにのって首のあたりをしっかりつかんだ。
フモシーは一瞬で落とし穴を跳びこえた。
反対側にいたユウリとオッペンは跳んでくるフモシーにぶつからないように両側の壁にぴったりくっついていたけど、フモシーの毛が顔にふれて、オッペンはくしゃみをした。
フモシーが帰った後、オッペンは名残惜しそうに言った。
「ふわっふわだったな。ふわふわでかうさぎ。あのふわふわ、また触りてぇ……」
オッペンはすっかりフモシーのふわふわな毛のとりこになったみたいだった。
さらに少し進むと、今度は、両側の壁から炎が出てきた。
ユウリが水魔法で消火してくれているすきにイーア達は走りぬけた。
さらにしばらく進むと、とても広い空間に出た。
天井には、いくつかキラキラとした鍾乳石があった。
誰もいないけど、イーアは周囲に無数の精霊の存在を感じた。
ユウリがあたりの様子を見ながら言った。
「ここはきっと、もともと地下の大洞窟なんだ。城の地下にあった洞窟を迷宮につくりかえたのかな」
イーアはたぶんその逆だろうと思った。
きっと、ギアラドの人達は地下の迷宮の上に城をたてたのだ。地下の迷宮を守るために。
「つーことは、やっぱ、この先にあるのはお宝だよな」
オッペンはうれしそうだ。
でも、イーアは不安になってきた。
モンペルたち、封印された扉、これまで遭遇したトラップ……すべて、この先にある何かを守るためのものだ。
そして、モンペルたちとモルドーが千年以上の間守ってきた何か……それは、きっと、オッペンが想像しているような財宝ではない。
ガネンの森にあったのと同じもの、決して白装束の魔導士の手に渡してはいけないものがここにあるとしたら。
そして、白装束たちがそれを狙ってこの地下に入りこもうとしているのなら。
やっぱり、あの守護双竜の扉は封印しておかないとまずい。
イーアは言った。
「これ以上、進まない方がいいかも。もどろう」
「あんだよ。イーア。らしくねーな。びびったのか?」
何も知らないオッペンは挑発するように言ったけど。
「そうじゃないけど。できたら、わたしは、ここにいるモルドーに会って話をしたいけど。あの扉、今は誰でも入れる状態だよね?」
ユウリはうなずいた。
「うん。カギは開いたままだよ」
「ここには、モルドーたちが守ってきたとても大事なもの、絶対に白装束……<白光>に渡しちゃいけないものがあるんだと思う。だから、戻ろう。あの扉のカギを、もう一回閉めなきゃ。ここに誰も入らないように」
でも、オッペンは言った。
「もうちょっとだけ。あのむちゃくちゃでっかい扉の向こうを見てから、帰ろうぜ?」
オッペンが指さす先、イーア達の前方には武骨な巨大な扉があった。双竜模様の扉よりもずっと大きく、何の装飾もほどこされていない、ひたすら頑丈そうな扉だ。
そして、イーアの耳には低い唸り声のような音が聞こえていた。
「なんか、聞こえるね……」
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