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第2部 バララセ東部 ~密林の巨鳥と水竜の島
第101話 捕虜
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ランは村で避難を手伝っていた。すでに子ども達は全員避難を終えたが、体の不自由な老人の避難が遅れていた。
村に取り残されている者がいないか確認してまわるランの肩の上でロロロが長い鼻をしきりに動かした。
『変な臭いがする……。これは、聖域にいた奴らと同じ臭いだ! 早く逃げよう!』
だけど、その時、ランの前には逃げ遅れた老女がいて、ランは手をさしのべていた。
「アヨおばあちゃん。早く避難しよう。さ、つかまって」
足の悪い老婆は「あたしはもういい。手遅れになる前に、あんただけ逃げなさい」と言って、ランの手をとらなかった。
「そんなこと言わないで。まだまにあうから」
ランがそう言った瞬間、爆音が鳴り響いた。外にでると、全身を白い服で覆った男、そして、破壊された家と吹き飛ばされた村人の姿が見えた。
もう逃げられない。
敵に見つかってからは避難所には向かえない。老婆の震えた声が聞こえた。
「逃げなさい。早く、あんただけ、逃げなさい」
ロロロが小さなおびえた声で言った。
『ラン、逃げよう。どうしようもないよ。アヨばあちゃんをつれてはいけないよ』
ランは肩の上のロロロをつかんで地面におろし、言った。
『ロロロは逃げて。ううん。ロロロはイーアに伝えにいって。絶対に、村にはかえってこないように。さ、早く』
『でも、でも、』
その時、入り口を白く暗い影が覆った。
『ラン!』
『ロロロ、早く行って!』
小さなロロロは窓から外に飛び出し走り去った。
大柄な白装束の男が乱暴にランの腕をつかみ、ランはむりやり外へと連れだされた。
白装束の大男は、もう片方の手に鎖をもっていて、その鎖がまるで意思を持っているかのように動いてアヨおばあさんの体にまきつき、倒れたおばあさんをひきずりだした。
ランたちが引きずっていかれた村の中央には、奇妙な紋様のついた白い服を着て銀仮面をつけた男が、村には存在しないはずの豪奢なイスに座っていた。
その傍に、すっかり顔が変色変形したバララセ人の男が首に鎖をつけられ、地に座っていた。
ランは、首に鎖をつながれたその男が誰なのか、最初わからなかった。あまりにひどく顔が腫れあがっていたから。
白装束の魔導士は、首に鎖をつけられた捕虜をけりつけ、たずねた。
「言え、蛮族の犬。この女はだれだ?」
「……ラン……カンラビの巫女……」
その声をきき、ランは気が付いた。
(お兄ちゃん……?)
家族の仇をうつために、そしてこの地から帝国軍を追い払うために、バララセ解放軍に加わり、帝国軍と戦っていたはずの兄ザンバだった。
兄は激しい暴行で顔が判別できないほどの傷を負っているだけでなく、意識が朦朧としているようすだった。なにか毒薬か、魔法をかけられているのかもしれない。そもそもザンバは帝国の言葉を話せないはずなのに、白装束の魔導士が言うことを理解している。
「ふははは。さっそく巫女を捕まえたぞ。巫女なら知っているであろう。石板の欠片のありかを」
白装束の銀仮面の男が何を言っているのか、ランは言葉を理解できなかった。そのようすを見て、白装束の男は、ザンバをけりつけて命令した。
「おい、その女から石板の欠片のありかを聞き出せ」
カンラビの言葉でザンバは言った。
「石板、欠片、どこに、ある……?」
「なにそれ? そんなもの、知らないよ。お兄ちゃんだって、知らないでしょ?」
石板の欠片なんてものについて、ランは聞いたこともない。
「知らない」とザンバがつげると、白装束の魔導士はイラついた様子で、魔法で杖の先に炎を燃やし、その炎をザンバの胸に押し付けた。皮膚が、肉が、焼けこげる臭いと苦痛の叫び声がひびいた。
ランは「やめて!」と叫び、もがいたが、ランを押さえつける大男の腕力は強く、ふりほどくことはできなかった。
苦痛にあえぎながら、ザンバは言った。
「だれも、しらない……知ってるとしたら……長老……」
「長老は、どいつだ?」
白装束の魔導士は、その場に連れてこられていた、逃げ遅れた老人たちを見渡した。だけど、その中に長老はいない。
白いローブの下に白銀の鎧を着こんだ、帝国の騎士のような装いの男が、ニヤニヤと笑いながらこたえた。
「申し訳ありません。ジグモ様。さきほど、蛮族の老いぼれを一匹、吹き飛ばしてしまいました。あれが長老なら、もう欠片しか手に入りません。虫けらどもはすぐに死んでしまうので、どうにも手加減が難しくて」
ランにはその男の言葉はわからなかったけれど、何を言っているのかは、そのあざ笑うような口調でわかってしまった。
(長老さま……)
「フンッ。ならば、他の年寄に聞けばよい。おい! 老いぼれどもから聞き出せ」
白装束の魔導師ジグモはザンバを再度けりつけ、ザンバは言葉をしぼりだした。
「石板の、欠片……どこ……?」
「かわいそうに。ザンバや。かわいそうに……」
アヨおばあさんがそうつぶやき続けるほかは、誰も何も言わなかった。
「フンッ。蛮族め。ならば、これならどうだ?」
白装束の魔導士ジグモはそういって、立ち上がり、杖の先に大きな火の玉を灯した。
そして、その大きな炎を、ランの顔へと近づけた。
視界全体が炎におおわれ、ランは目をつぶった。まだ触れてはいないのにすでに熱が皮膚を焦がしそうだった。
「蛮族どもめ。早く吐かなければ巫女の顔が焼け落ちるぞ」
ランは覚悟を決めた。
その時、アヨおばあさんの叫び声が聞こえた。
「ある! 聖域の神殿の先に隠された宝があると言い伝えられている!」
その言葉をザンバが伝えると、白装束の魔導師は火の玉を消し、舌打ちをした。
「やはりあの遺跡か」
白装束の魔導師ジグモは杖を自分の口の前に持っていき、そして、魔法で声を大きく拡散させた。
「聞け。逃げ隠れた蛮族どもよ。カンラビの巫女の命を助けてほしければ、貴様らの神殿にある秘宝、石板の欠片を持ってこい。持ってこなければ、巫女もほかの老いぼれも全員殺す!」
村に取り残されている者がいないか確認してまわるランの肩の上でロロロが長い鼻をしきりに動かした。
『変な臭いがする……。これは、聖域にいた奴らと同じ臭いだ! 早く逃げよう!』
だけど、その時、ランの前には逃げ遅れた老女がいて、ランは手をさしのべていた。
「アヨおばあちゃん。早く避難しよう。さ、つかまって」
足の悪い老婆は「あたしはもういい。手遅れになる前に、あんただけ逃げなさい」と言って、ランの手をとらなかった。
「そんなこと言わないで。まだまにあうから」
ランがそう言った瞬間、爆音が鳴り響いた。外にでると、全身を白い服で覆った男、そして、破壊された家と吹き飛ばされた村人の姿が見えた。
もう逃げられない。
敵に見つかってからは避難所には向かえない。老婆の震えた声が聞こえた。
「逃げなさい。早く、あんただけ、逃げなさい」
ロロロが小さなおびえた声で言った。
『ラン、逃げよう。どうしようもないよ。アヨばあちゃんをつれてはいけないよ』
ランは肩の上のロロロをつかんで地面におろし、言った。
『ロロロは逃げて。ううん。ロロロはイーアに伝えにいって。絶対に、村にはかえってこないように。さ、早く』
『でも、でも、』
その時、入り口を白く暗い影が覆った。
『ラン!』
『ロロロ、早く行って!』
小さなロロロは窓から外に飛び出し走り去った。
大柄な白装束の男が乱暴にランの腕をつかみ、ランはむりやり外へと連れだされた。
白装束の大男は、もう片方の手に鎖をもっていて、その鎖がまるで意思を持っているかのように動いてアヨおばあさんの体にまきつき、倒れたおばあさんをひきずりだした。
ランたちが引きずっていかれた村の中央には、奇妙な紋様のついた白い服を着て銀仮面をつけた男が、村には存在しないはずの豪奢なイスに座っていた。
その傍に、すっかり顔が変色変形したバララセ人の男が首に鎖をつけられ、地に座っていた。
ランは、首に鎖をつながれたその男が誰なのか、最初わからなかった。あまりにひどく顔が腫れあがっていたから。
白装束の魔導士は、首に鎖をつけられた捕虜をけりつけ、たずねた。
「言え、蛮族の犬。この女はだれだ?」
「……ラン……カンラビの巫女……」
その声をきき、ランは気が付いた。
(お兄ちゃん……?)
家族の仇をうつために、そしてこの地から帝国軍を追い払うために、バララセ解放軍に加わり、帝国軍と戦っていたはずの兄ザンバだった。
兄は激しい暴行で顔が判別できないほどの傷を負っているだけでなく、意識が朦朧としているようすだった。なにか毒薬か、魔法をかけられているのかもしれない。そもそもザンバは帝国の言葉を話せないはずなのに、白装束の魔導士が言うことを理解している。
「ふははは。さっそく巫女を捕まえたぞ。巫女なら知っているであろう。石板の欠片のありかを」
白装束の銀仮面の男が何を言っているのか、ランは言葉を理解できなかった。そのようすを見て、白装束の男は、ザンバをけりつけて命令した。
「おい、その女から石板の欠片のありかを聞き出せ」
カンラビの言葉でザンバは言った。
「石板、欠片、どこに、ある……?」
「なにそれ? そんなもの、知らないよ。お兄ちゃんだって、知らないでしょ?」
石板の欠片なんてものについて、ランは聞いたこともない。
「知らない」とザンバがつげると、白装束の魔導士はイラついた様子で、魔法で杖の先に炎を燃やし、その炎をザンバの胸に押し付けた。皮膚が、肉が、焼けこげる臭いと苦痛の叫び声がひびいた。
ランは「やめて!」と叫び、もがいたが、ランを押さえつける大男の腕力は強く、ふりほどくことはできなかった。
苦痛にあえぎながら、ザンバは言った。
「だれも、しらない……知ってるとしたら……長老……」
「長老は、どいつだ?」
白装束の魔導士は、その場に連れてこられていた、逃げ遅れた老人たちを見渡した。だけど、その中に長老はいない。
白いローブの下に白銀の鎧を着こんだ、帝国の騎士のような装いの男が、ニヤニヤと笑いながらこたえた。
「申し訳ありません。ジグモ様。さきほど、蛮族の老いぼれを一匹、吹き飛ばしてしまいました。あれが長老なら、もう欠片しか手に入りません。虫けらどもはすぐに死んでしまうので、どうにも手加減が難しくて」
ランにはその男の言葉はわからなかったけれど、何を言っているのかは、そのあざ笑うような口調でわかってしまった。
(長老さま……)
「フンッ。ならば、他の年寄に聞けばよい。おい! 老いぼれどもから聞き出せ」
白装束の魔導師ジグモはザンバを再度けりつけ、ザンバは言葉をしぼりだした。
「石板の、欠片……どこ……?」
「かわいそうに。ザンバや。かわいそうに……」
アヨおばあさんがそうつぶやき続けるほかは、誰も何も言わなかった。
「フンッ。蛮族め。ならば、これならどうだ?」
白装束の魔導士ジグモはそういって、立ち上がり、杖の先に大きな火の玉を灯した。
そして、その大きな炎を、ランの顔へと近づけた。
視界全体が炎におおわれ、ランは目をつぶった。まだ触れてはいないのにすでに熱が皮膚を焦がしそうだった。
「蛮族どもめ。早く吐かなければ巫女の顔が焼け落ちるぞ」
ランは覚悟を決めた。
その時、アヨおばあさんの叫び声が聞こえた。
「ある! 聖域の神殿の先に隠された宝があると言い伝えられている!」
その言葉をザンバが伝えると、白装束の魔導師は火の玉を消し、舌打ちをした。
「やはりあの遺跡か」
白装束の魔導師ジグモは杖を自分の口の前に持っていき、そして、魔法で声を大きく拡散させた。
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