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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第169話 同級生たち
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イーア達の隠れ家。
マーカス以外、ほとんど誰もいないことが多い家だけど、今日は5人も部屋の中にいた。
イーアとケイニスは、ペンデュラムを手に地図の前で集中しているオッペンを見つめている。
ケイニスと一緒に訪れたローレインは、部屋の向こうでゆっくりとお茶を飲んで休んでいる。
ローレインは毎日、無償で病人やケガ人の治療をしているから、とても疲れているのだ。
最近、ローレインは貧しい人達から聖女と呼ばれているらしい。お金がなくて何の治療も受けられなかった人達にとって、ローレインは唯一の希望だから。
オッペンは、ついに降参するように言った。
「だめだ。ぜんっぜん、わかんねぇ」
イーアはオッペンに支配者の石板の在処、あるいは新型兵器の在処、を探してもらっていた。
だけど、オッペンはお手上げだというように言った。
「誰かが隠してんだよ。占術には見つからなくする術も色々あっからよ。そういう術を誰かがかけてんだろ」
イーアはそれを聞いて理解した。
「そっか。そうだよね。相手は帝国政府だもん。<星読みの塔>の偉い占術士が協力してたってふしぎじゃない、というか、絶対協力してるよね」
相手が悪い。オッペンの力で見つけることは不可能だろう。
ケイニスが心配そうにたずねた。
「次の攻撃対象や時期も占えないか?」
支配者の石板の力を使った新型大量破壊兵器に大打撃を受けた隣の大国、チュラナム共和国は、今は帝国に干渉する力を失っている。
だから、帝国政府は新型兵器を使って、次は国内の敵対勢力、つまり革命軍やギアラド人居住地を攻撃するかもしれないと、ケイニスは予想している。
町一つを瞬時に消してしまうような攻撃をされたら、打つ手はない。
一瞬で大勢の人々が殺されてしまう。
だから今、革命軍は一度集合させていた勢力を分散させて隠れている。
オッペンは投げやりに答えた。
「だめだな。俺は元々そういう細けぇ占いは苦手なんだ。けど、どっちにしろ、あの兵器のことは全部わかんねぇよ」
「結局、役にたたないな。オッペンは」と、マーカスが悪口を言い、オッペンが言いかえした。
「お前だって、なんの役にもたってねぇだろ。この留守番人形。だいたい、占術士つっても、そんなにバンバンなんでも見えるわけじゃねーんだよ。エレイくらいだぜ。色々見えるのは。でも、エレイはそのために目が見えなくなって歩けなくなって、体が弱ってひとりじゃ生活できねーんだ。天才でもそんくらいの<代償>が必要なんだよ」
マーカスは肩をすくめた。
「お前はやらされなかったのか? <代償>。<星読みの塔>ってのは、占術の才能のある子どもを無理やり連れてきては、<代償>でボロボロにしながら、死ぬまで帝国のために占わせるとこって聞いたぞ」
「昔の<星読みの塔>は、そういうひでぇことをバンバンやってたらしいけど、ししょーが禁止したから、今はやってねぇ。むしろ、おれは<代償>を使うことを禁止されたぜ。「安易な<代償>の使用は不幸を作り出すだけだ」って口癖みてぇに言うんだ。強い<制約>使う許可もくれねーんだよ、ししょーは」
イーアは考えながら言った。
「別の探し方をしなきゃだね。あの兵器はボンペール商会が造ったみたいだから、ボンペール商会から情報を得られないかな」
ボンペール商会の会長はグランドールで同じクラスだったアイシャの父だ。
アイシャはボンペール商会の軍事部門のことなんて何も知らないだろう。
でも、アイシャに会いに行って、こっそりとスパイになるような精霊をボンペール家に忍び込ませることができれば、何か情報がつかめるかもしれない。
だけど、イーアはもうずっとアイシャに会っていない。アイシャの連絡先も知らなかった。
以前アイシャの家の冬至祭パーティーに行ったから、ボンペール家の場所は知っているけれど。
「突然、わたしが会おうって言ったら、アイシャ、ふしぎがるかな」
イーアとアイシャは友達ではあるけれど。
ケイニスとローレインが革命勢力の一員だということは、グランドールの生徒たちも知っていて、ずっと学校に来ていないイーアのことも、たぶんみんな疑っているだろう。
突然イーアから連絡がきたら、きっと怪しく思うはずだ。いくら、普段のんびりしているアイシャでも。もしも、アイシャが何も思わなくても、アイシャの周囲の人は怪しく思うだろう。
「ふしぎがるだけじゃすまないだろうな」
マーカスが、新聞を見ながら言った。
「ほら、見ろよ。アイシャ・ボンペールは、ずいぶん出世しなさったぞ」
マーカスがイーア達の方に突きつけた新聞の一面には、大きな文字が躍っていた。
「ボンペール家令嬢、第三王子とご婚約」
皆、驚きすぎて、数秒の間沈黙してしまった。
「マジかよ!」
「アイシャが、王子様と結婚!?」
マーカスは新聞をふりながら言った。
「この前まで平民だったボンペール家の娘が第3王子とはいえ王子と婚約。絶対ありえない身分差だ。なのに、この新聞には、アイシャ・ボンペールがとても優秀で人柄がよくて美人だってことしか書かれていない。きっと帝国政府が新聞社に圧力をかけているんだ」
ケイニスが淡々と言った。
「いまや王家も追い詰められて必死だ。あの新型兵器もボンペールが造ったんだろ? ボンペール商会の軍事技術と財力がなければ生き残れないと判断して、なりふり構わず王家にとりこむことにしたんだろう」
マーカスは嫌味たっぷりにケイニスに向かって言った。
「その通りだとして、あんな兵器を出されて、お前達はどうするんだ? 結局、帝国政府がなりふり構わず大商人を身内に取り入れたら、革命軍は負けるしかないってことだろ」
「こいつ、ロボになっても性格悪いよな。本当に性格悪すぎるぜ」と、オッペンが言ったけれど、ケイニスは冷静に言った。
「革命の戦いは他国との軍事戦争とは違う。どんなに強い兵器を持っていても、自国民全員を殺すことはできない。あいつらは忘れているかもしれないが、民なくして国はないんだ」
「そうだね」と相槌をうったところで、イーアは思いついた。
「そうだ、キャシーに会おう。わたしが突然アイシャに近づいたら絶対あやしまれるから、キャシーに一緒に行ってもらうことにするよ」
アイシャの親友であるキャシーなら、アイシャに会っても疑われないはずだ。
オッペンがつぶやいた。
「そういや、キャシーのやつ、今なにしてんだろうな。おれは<星読みの塔>に入ってから、一回も会ってねーや」
「わたしも、ずっと学校に行ってないから、キャシーにも会えてないよ。キャシーのことだから、きっとずっとグランドールで勉強がんばってるよね。……あ、でも、キャシーはもうすぐ卒業かも」
本当なら、今、イーア達はみんなグランドールの3年生のはずだった。
グランドール魔術学校は、卒業までに4、5年かける人もいるけれど、順調にいけば3年で卒業できる。
ここにいる5人はもうずっと学校に行っていないから、まだまだ卒業できそうにないけれど、真面目に学校に通っているキャシーは今年卒業に必要な科目をすべて修了できるはずだ。
「……。後悔はしてないけど、先にみんなが卒業しちゃうのは、ちょっと寂しいね」
イーアが思わずそうつぶやくと、「ああ」とケイニスはつぶやき、「俺は後悔しかないね」とマーカスが言った。
「おれは後悔なんてしてねぇぞ。ぜんっぜん寂しくもねぇ」とオッペンは明るく言い、そして最後にローレインが部屋の向こうから「わたくしも一片の後悔もありません」と落ち着いた声で言った。
マーカス以外、ほとんど誰もいないことが多い家だけど、今日は5人も部屋の中にいた。
イーアとケイニスは、ペンデュラムを手に地図の前で集中しているオッペンを見つめている。
ケイニスと一緒に訪れたローレインは、部屋の向こうでゆっくりとお茶を飲んで休んでいる。
ローレインは毎日、無償で病人やケガ人の治療をしているから、とても疲れているのだ。
最近、ローレインは貧しい人達から聖女と呼ばれているらしい。お金がなくて何の治療も受けられなかった人達にとって、ローレインは唯一の希望だから。
オッペンは、ついに降参するように言った。
「だめだ。ぜんっぜん、わかんねぇ」
イーアはオッペンに支配者の石板の在処、あるいは新型兵器の在処、を探してもらっていた。
だけど、オッペンはお手上げだというように言った。
「誰かが隠してんだよ。占術には見つからなくする術も色々あっからよ。そういう術を誰かがかけてんだろ」
イーアはそれを聞いて理解した。
「そっか。そうだよね。相手は帝国政府だもん。<星読みの塔>の偉い占術士が協力してたってふしぎじゃない、というか、絶対協力してるよね」
相手が悪い。オッペンの力で見つけることは不可能だろう。
ケイニスが心配そうにたずねた。
「次の攻撃対象や時期も占えないか?」
支配者の石板の力を使った新型大量破壊兵器に大打撃を受けた隣の大国、チュラナム共和国は、今は帝国に干渉する力を失っている。
だから、帝国政府は新型兵器を使って、次は国内の敵対勢力、つまり革命軍やギアラド人居住地を攻撃するかもしれないと、ケイニスは予想している。
町一つを瞬時に消してしまうような攻撃をされたら、打つ手はない。
一瞬で大勢の人々が殺されてしまう。
だから今、革命軍は一度集合させていた勢力を分散させて隠れている。
オッペンは投げやりに答えた。
「だめだな。俺は元々そういう細けぇ占いは苦手なんだ。けど、どっちにしろ、あの兵器のことは全部わかんねぇよ」
「結局、役にたたないな。オッペンは」と、マーカスが悪口を言い、オッペンが言いかえした。
「お前だって、なんの役にもたってねぇだろ。この留守番人形。だいたい、占術士つっても、そんなにバンバンなんでも見えるわけじゃねーんだよ。エレイくらいだぜ。色々見えるのは。でも、エレイはそのために目が見えなくなって歩けなくなって、体が弱ってひとりじゃ生活できねーんだ。天才でもそんくらいの<代償>が必要なんだよ」
マーカスは肩をすくめた。
「お前はやらされなかったのか? <代償>。<星読みの塔>ってのは、占術の才能のある子どもを無理やり連れてきては、<代償>でボロボロにしながら、死ぬまで帝国のために占わせるとこって聞いたぞ」
「昔の<星読みの塔>は、そういうひでぇことをバンバンやってたらしいけど、ししょーが禁止したから、今はやってねぇ。むしろ、おれは<代償>を使うことを禁止されたぜ。「安易な<代償>の使用は不幸を作り出すだけだ」って口癖みてぇに言うんだ。強い<制約>使う許可もくれねーんだよ、ししょーは」
イーアは考えながら言った。
「別の探し方をしなきゃだね。あの兵器はボンペール商会が造ったみたいだから、ボンペール商会から情報を得られないかな」
ボンペール商会の会長はグランドールで同じクラスだったアイシャの父だ。
アイシャはボンペール商会の軍事部門のことなんて何も知らないだろう。
でも、アイシャに会いに行って、こっそりとスパイになるような精霊をボンペール家に忍び込ませることができれば、何か情報がつかめるかもしれない。
だけど、イーアはもうずっとアイシャに会っていない。アイシャの連絡先も知らなかった。
以前アイシャの家の冬至祭パーティーに行ったから、ボンペール家の場所は知っているけれど。
「突然、わたしが会おうって言ったら、アイシャ、ふしぎがるかな」
イーアとアイシャは友達ではあるけれど。
ケイニスとローレインが革命勢力の一員だということは、グランドールの生徒たちも知っていて、ずっと学校に来ていないイーアのことも、たぶんみんな疑っているだろう。
突然イーアから連絡がきたら、きっと怪しく思うはずだ。いくら、普段のんびりしているアイシャでも。もしも、アイシャが何も思わなくても、アイシャの周囲の人は怪しく思うだろう。
「ふしぎがるだけじゃすまないだろうな」
マーカスが、新聞を見ながら言った。
「ほら、見ろよ。アイシャ・ボンペールは、ずいぶん出世しなさったぞ」
マーカスがイーア達の方に突きつけた新聞の一面には、大きな文字が躍っていた。
「ボンペール家令嬢、第三王子とご婚約」
皆、驚きすぎて、数秒の間沈黙してしまった。
「マジかよ!」
「アイシャが、王子様と結婚!?」
マーカスは新聞をふりながら言った。
「この前まで平民だったボンペール家の娘が第3王子とはいえ王子と婚約。絶対ありえない身分差だ。なのに、この新聞には、アイシャ・ボンペールがとても優秀で人柄がよくて美人だってことしか書かれていない。きっと帝国政府が新聞社に圧力をかけているんだ」
ケイニスが淡々と言った。
「いまや王家も追い詰められて必死だ。あの新型兵器もボンペールが造ったんだろ? ボンペール商会の軍事技術と財力がなければ生き残れないと判断して、なりふり構わず王家にとりこむことにしたんだろう」
マーカスは嫌味たっぷりにケイニスに向かって言った。
「その通りだとして、あんな兵器を出されて、お前達はどうするんだ? 結局、帝国政府がなりふり構わず大商人を身内に取り入れたら、革命軍は負けるしかないってことだろ」
「こいつ、ロボになっても性格悪いよな。本当に性格悪すぎるぜ」と、オッペンが言ったけれど、ケイニスは冷静に言った。
「革命の戦いは他国との軍事戦争とは違う。どんなに強い兵器を持っていても、自国民全員を殺すことはできない。あいつらは忘れているかもしれないが、民なくして国はないんだ」
「そうだね」と相槌をうったところで、イーアは思いついた。
「そうだ、キャシーに会おう。わたしが突然アイシャに近づいたら絶対あやしまれるから、キャシーに一緒に行ってもらうことにするよ」
アイシャの親友であるキャシーなら、アイシャに会っても疑われないはずだ。
オッペンがつぶやいた。
「そういや、キャシーのやつ、今なにしてんだろうな。おれは<星読みの塔>に入ってから、一回も会ってねーや」
「わたしも、ずっと学校に行ってないから、キャシーにも会えてないよ。キャシーのことだから、きっとずっとグランドールで勉強がんばってるよね。……あ、でも、キャシーはもうすぐ卒業かも」
本当なら、今、イーア達はみんなグランドールの3年生のはずだった。
グランドール魔術学校は、卒業までに4、5年かける人もいるけれど、順調にいけば3年で卒業できる。
ここにいる5人はもうずっと学校に行っていないから、まだまだ卒業できそうにないけれど、真面目に学校に通っているキャシーは今年卒業に必要な科目をすべて修了できるはずだ。
「……。後悔はしてないけど、先にみんなが卒業しちゃうのは、ちょっと寂しいね」
イーアが思わずそうつぶやくと、「ああ」とケイニスはつぶやき、「俺は後悔しかないね」とマーカスが言った。
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