もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん

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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~

第174話 塔への攻撃

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「<白光>……」

「我が名は<白光>が<実践者>イシタウル。団長閣下の命により、帝国にあだなすダークエルフの命、もらい受けにきた」
 
 イーアが無言でいると、<白光の魔導士>イシタウルはしゃべり続けた。

「恐ろしきダークエルフよ。まさか例の物の秘密を守るためにできる限り人払いをしている地下最下層に穴をあけて強襲すとは。今や<黒竜の子>に匹敵する脅威との評もうなずける。だが、げに恐ろしきは我らが団長閣下。かのアグラシア最強と名高しアンドルすら落としたダークエルフならば、間もなくこの地に達するであろうと予想され、私を配置されたのだから」

(これは、罠……)

 イーアがこの部屋から逃げようとした時、部屋の四方にあった魔法装置からイーアに向かって光が放たれた。
 光の鎖にとらえられたイーアは、身動きできなくなった。

『ルヴィ、召喚できる?』

 精霊語で話しかけても、『友契の書』からの反応はない。召喚術が無効にされている。
 誰かが装置を解除しない限り、イーアは身動きが取れない。

(ティトなら動けるけど……)

 ティトなら、イーアが召喚しなくてもイーアの傍に自力で転移できる。
 だけど、チャンスは一度きりだ。
 ティトが不意討ちを失敗すれば、身動きとれないイーアは簡単に殺されてしまう。

 イーアに打つ手はないと思っている<白光>の魔導士は、床に降りてくると勝ち誇った声で言った。

「あきらめよ。ダークエルフ。この装置は我らが古代魔術と帝国最新鋭の魔導技術の結晶。粗野なエルフの召喚士ごときに破れるものにあらず。さて、時は満ちた。しばしそこで見学しているがよい」

 今、壁面には二つの映像が映し出されている。
 ひとつは、複雑な魔導語と模様が刻まれた様々な魔導部品からなる大砲のような形のもの。おそらく、あれが新型兵器だろう。
 そして、もうひとつは、霧に覆われた見覚えのある黒い塔の影。

「あれは、ウェルグァンダルの塔……」

 新型兵器のターゲットは、ウェルグァンダルの塔だった。
 <白光>の魔導士イシタウルは言った。

「帝国にとって真の脅威きょういありの子のごとき反乱軍にあらず。<黒竜の子>とウェルグァンダルこそが真の脅威。あの塔は、しかし、異界にある」

 ウェルグァンダルの塔がある場所は、地図上でいえば帝国と共和国の間にある、帝国の属国に広がる荒野だ。
 だけど、あの塔は霊的位相がすこし違う場所、つまり、人界からみれば異界にある。
 人界から完全に隔絶した遠い場所ではないけれど、塔の周辺にあるあの濃い霧は、人界の普通の人や物を通さない。
 昔は、あの霧はもっと薄くて人も通れたらしいけれど、ガリが塔主になってから、ほとんど何も通さないように変えたらしい。

「だが、その異界へも貫通する我らが最新魔導兵器の威力、とくと見よ」

 イーアは急に全身から力が抜けていくのを感じた。
 あの新型兵器が、再び世界から霊力を奪っていく。
 室内に、どこか別のところでなされているアナウンスの声が響いた。

「発射5秒前、4,3,2,1」

 壁面に映し出された新型兵器から、激しい光とともに強大な霊力の塊らしきものが発射されたのが見えた。

「ふふふふふ。愉悦ゆえつ極まりない。崩壊の時を待つこの瞬間」

 広い室内に<白光>の魔導士の笑い声が響いた。
 イーアは祈るような気持ちでいた。

(ガリならきっと、どうにかしてくれるはず……)

 でも、町一つを一瞬で消し去る強大な攻撃に対して、何ができるだろう。
 しばらくして、ウェルグァンダルの塔を映し出していた映像が、強い光に包まれ、見えなくなった。
 <白光>の魔導士は歓喜の声をあげた。

「時は来たれり!」

 映像が戻った時、ウェルグァンダルの塔の周辺にあったはずの霧が晴れていた。
 そして、そこには何もなかった。
 ウェルグァンダルの塔は跡形も無く消えていた。塔の周辺にあった暗い林も一瞬で焼き尽くされて消えていた。

「そんな……」

 塔の中にいたはずのヤララやリグナムは……?
 そして、あの塔は、慈悲深き竜ウェルグァンダルそのものであり、『友契の書』を動かす古の召喚士たちが眠る場所でもある。

 <白光>の魔導士イシタウルの勝ち誇った笑い声が響いた。

「げにはかなき。長き歴史をもつ召喚術の名門ウェルグァンダルの塔は一瞬で消えた。さて、次はこのダークエルフを消し去る時」

 <白光>の魔導士イシタウルが杖を振りかざした。
 その瞬間、イシタウルの斜め後ろには臨戦態勢の黄金色の霊獣が現れていた。
 イシタウルはティトに気が付いていない。タイミングはバッチリだった。

 だけど、その時、ティトが出現したのとほぼ同じ瞬間に、イシタウルの背後には、巨大な口をもつ奇妙な精霊が出現していた。

(あれは……)

 イーアは図鑑でしか見たことがない。だけど、あれは『大食獣バクロドン』という珍しい精霊だ。
 バクロドンは何でも食べちゃう精霊で、しかもバクロドンの口内に入った者は魔力も筋力も失い、自力で逃れることはできなくなる。

 ティトよりも早く、バクロドンの大口が動いていた。巨体と愚鈍そうな顔に似合わず、それは恐ろしいほどの素早さだった。
 イシタウルが背後の気配に気が付き振り返ろうとしたその時には、すでにバクロドンの巨大な口がイシタウルを包みこむところだった。

 イシタウルは大食獣バクロドンの口の中に消えた。
 ティトもイーアも、あぜんとしてその様子を見送った。
 巨大な口の中から、助けを呼ぶ声が、たぶん「べグラン! 助けよ! べグラン!」と言っている声が、微かに聞こえていたが、バクロドンはしっかり閉じた口をむしゃむしゃと動かしている。

『食べちゃった……』

 イーアがつぶやいた時、『戻れ、バクロドン』という声が聞こえた。
 <白光>の魔導士を食べたバクロドンは、そのまま異界へと姿を消した。
 そして、大きなため息まじりの声が聞こえた。

「やれやれ。最悪の想定通りになってしまった。こうなってしまっては、もうどうしようもない」

「ゲオ先生?」

 声の主はゲオだった。
 バクロドンを召喚して<白光>の召喚士を食べさせたのは、ゲオだった。
 結局、ゲオはイーアの石サソリには足止めされなかったらしい。

 ゲオは速やかにイーアを拘束していた魔導装置を停止した。
 ティトは、『おれの出番は全然なかったな』と、ちょっと残念そうにつぶやいた。

 自由の身になったイーアは、霧の晴れた荒野を映し出す壁面の映像を指さして叫んだ。

「ゲオ先生、ウェルグァンダルが新型兵器で消されちゃいました!」

「心配無用。『友契の書』はまだいきている。つまり、塔は無事だということだ」

 ゲオは落ち着き払ってそう言って、『友契の書』を見せた。
 イーアもあわてて、自分の『友契の書』を確認した。

『ルヴィ? 平気?』

『はい。少々変更に対応する必要がありますが。基本性能に変化はありません』

 いつも通りの冷静沈着なルヴィシェスカの声が聞こえた。
 イーアは首をかしげた。古の召喚士達は無事なようだ。
 だが、壁の映像には大地の他に何も映っていない。ウェルグァンダルの塔は消えている。

『ウェルグァンダルの塔は今、どうなってるの?』
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