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第4部 帝国の終焉 ~滅亡をもたらすダークエルフ~
第204話 <氷の砦>
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イーアとユウリは古の戦場であったという湿地でゴーレム兵を倒しながら進んでいった。しばらくして、行く手に氷に閉ざされた砦の全貌が見えてきた。
ここにたどり着くまでに襲いかかってきたウラジナル配下の魔導士や戦士のほとんどは、ユウリが自然魔法で片づけた。
敵の魔導士も<白光>の一員だから、けっこうな力を持つ魔導士だったはずだけど、今のユウリの敵ではなかった。
それに敵の魔道士は、もう数少なかった。
国王が亡くなったというしらせが帝都をめぐった時には、ウラジナルが率いていたスタグヌス派の魔導士達もほとんどがウラジナルを見限って、レイゼ派とクロー派の決定に従うことにしたらしい。
「嫌になるほど、変わり身が早いよ。あの人達は」
ユウリはうんざりした表情でそう言ったけれど、邪魔をしないのなら、<白光>の存在はイーアにとって、もうどうでもよかった。
今大事なのは、これ以上悪用される前に、ウラジナルから『支配者の石板』を奪い返すことだ。
前方に待ち構える巨大な氷の塊を見ながら、イーアはつぶやいた。
「あれが、<氷の砦>……」
ぶ厚い氷の中に石造りの古い建造物が見える。
その建物自体は小さいが、その周囲の氷は巨大で、まるで氷の城のように見える。
古代魔術の技術で生成され続けるあの氷は、どんなに暑い夏にも溶けることなく、大砲を撃ちこんでも、魔導士数十人が火炎魔法で燃やしても、溶けてなくなることはないという。
ユウリはいつも通りの冷静な声でつぶやいた。
「あのぶ厚い氷を破らないと中には入れないけど、僕の魔法では難しいな。バルトルさんが言うには<白光>の魔導師でもあれをすぐに破れる人はいないって。ウラジナルはそれをわかっててあそこに逃げこんだらしいけど。どこかに弱点がないかな」
「たぶん、だいじょうぶ。あの氷を壊せそうな召喚獣がいるから」
「あれを? 火竜のブレスでも溶かすのは不可能だと言われているのに?」
唯一、イーアが望みはしないのに契約させられた精霊がいた。
あの巨大な氷を破壊するのにぴったりの精霊。まるでオレンはあの砦のことを知っていたかのようだ。
今は遠い昔のように感じられるあの日の記憶、溶岩の中に消えたオレンを思い出し、イーアは少し胸が痛むのを感じた。
「うん。禁忌召喚獣だから、本当は呼んじゃいけないんだけど。たぶん、あの精霊なら、できると思う。でも、あの氷って、とかしても再生しちゃうかな?」
「砦の中にある古代魔術の装置で発生させているから再生するだろうけど、再生する前に中に入ればいい。僕の風魔法で一瞬で移動できるから、問題ないよ。イーアが氷を溶かしたら、すぐに突入しよう」
「じゃ、その作戦でいこう」
その言葉を聞きつけたかのように、イーアのすぐ傍にティトがあらわれた。暖かい太陽のようなティトのまとう匂いが一瞬ただよった。
『ようやく、最後の戦いだな』
そう言って、ティトは黄金色の体をふるわせた。
イーアは『友契の書』を取り出して、目当ての精霊のページを開いた。召喚は可能な状態になっている。
「召喚するよ」
「うん」
イーアはかつてオレンの命と引き換えに契約を結んだその精霊の名を呼んだ。
『溶岩魔神ヴァラリヒヌ、あの砦の氷を溶かして!』
それまで何もなかった湿地に、溶岩の体でできた一つ目の巨人が現れ、周囲から火炎が立ち昇った。
溶岩魔人の頭上に燃え盛る巨大な溶岩の塊があらわれた。
溶岩魔神が砦の方にむかってゆっくりと腕を動かすと、燃え盛る溶岩の塊が厚い氷に閉ざされた砦へと飛んでいった。
轟音とともに巨大な溶岩球は氷の城へとめりこんでいき、大量の水蒸気がたちのぼり辺りは霧に包まれた。
『ありがとう、ヴァラリヒヌ』
イーアは溶岩魔神に礼を言って、帰らせた。
ユウリが手をあげると、あたりを漂っていた水蒸気が水になってぐるぐると空を廻っていき、視界がクリアになった。
砦の入り口を閉ざしていた厚い氷の壁は消え失せていた。
空を漂う水は水龍のように形を変え、急速に勢いを増し、砦の入り口へと突っこんでいき、入り口の扉を破壊した。
同時に、風がイーア達を包み、次の瞬間には、イーアは砦の入り口の中に立っていた。
<氷の砦>の中には、古代魔術で作られたゴーレム兵がたくさんうごめいていたけれど、ゴーレムたちはユウリの風魔法とティトの体当たりで次々に粉砕されて土にもどっていった。
やがて、<氷の砦>の最奥に到達した。
扉を開けると、その先には<白光>のローブを着た魔導師が一人だけいた。
「来たか。帝国に滅亡をもたらすダークエルフよ」
敵意をむき出しにする老人に向かって、イーアは淡々と言った。
「支配者の石板を渡して。石板を渡してくれさえすれば、あなたのことは放っておくから」
すでに勝負は決まっている。
帝国は滅亡し、ウラジナルは<白光>を失った。
ウラジナルを裏切ったスタグヌス派の話では、もう補完部品がないため、今のウラジナルには『支配者の石板』を使用することもできない。
ただ一人年老いた魔導師が残っただけだ。
「帝国なき世で、生きながらえて何になる。ここでお前達を葬り去り、帝国を復活させるのだ!」
ウラジナルはそう叫んで杖をあげた。
部屋の中央に巨大なゴーレムが出現した。
ここにたどり着くまでに襲いかかってきたウラジナル配下の魔導士や戦士のほとんどは、ユウリが自然魔法で片づけた。
敵の魔導士も<白光>の一員だから、けっこうな力を持つ魔導士だったはずだけど、今のユウリの敵ではなかった。
それに敵の魔道士は、もう数少なかった。
国王が亡くなったというしらせが帝都をめぐった時には、ウラジナルが率いていたスタグヌス派の魔導士達もほとんどがウラジナルを見限って、レイゼ派とクロー派の決定に従うことにしたらしい。
「嫌になるほど、変わり身が早いよ。あの人達は」
ユウリはうんざりした表情でそう言ったけれど、邪魔をしないのなら、<白光>の存在はイーアにとって、もうどうでもよかった。
今大事なのは、これ以上悪用される前に、ウラジナルから『支配者の石板』を奪い返すことだ。
前方に待ち構える巨大な氷の塊を見ながら、イーアはつぶやいた。
「あれが、<氷の砦>……」
ぶ厚い氷の中に石造りの古い建造物が見える。
その建物自体は小さいが、その周囲の氷は巨大で、まるで氷の城のように見える。
古代魔術の技術で生成され続けるあの氷は、どんなに暑い夏にも溶けることなく、大砲を撃ちこんでも、魔導士数十人が火炎魔法で燃やしても、溶けてなくなることはないという。
ユウリはいつも通りの冷静な声でつぶやいた。
「あのぶ厚い氷を破らないと中には入れないけど、僕の魔法では難しいな。バルトルさんが言うには<白光>の魔導師でもあれをすぐに破れる人はいないって。ウラジナルはそれをわかっててあそこに逃げこんだらしいけど。どこかに弱点がないかな」
「たぶん、だいじょうぶ。あの氷を壊せそうな召喚獣がいるから」
「あれを? 火竜のブレスでも溶かすのは不可能だと言われているのに?」
唯一、イーアが望みはしないのに契約させられた精霊がいた。
あの巨大な氷を破壊するのにぴったりの精霊。まるでオレンはあの砦のことを知っていたかのようだ。
今は遠い昔のように感じられるあの日の記憶、溶岩の中に消えたオレンを思い出し、イーアは少し胸が痛むのを感じた。
「うん。禁忌召喚獣だから、本当は呼んじゃいけないんだけど。たぶん、あの精霊なら、できると思う。でも、あの氷って、とかしても再生しちゃうかな?」
「砦の中にある古代魔術の装置で発生させているから再生するだろうけど、再生する前に中に入ればいい。僕の風魔法で一瞬で移動できるから、問題ないよ。イーアが氷を溶かしたら、すぐに突入しよう」
「じゃ、その作戦でいこう」
その言葉を聞きつけたかのように、イーアのすぐ傍にティトがあらわれた。暖かい太陽のようなティトのまとう匂いが一瞬ただよった。
『ようやく、最後の戦いだな』
そう言って、ティトは黄金色の体をふるわせた。
イーアは『友契の書』を取り出して、目当ての精霊のページを開いた。召喚は可能な状態になっている。
「召喚するよ」
「うん」
イーアはかつてオレンの命と引き換えに契約を結んだその精霊の名を呼んだ。
『溶岩魔神ヴァラリヒヌ、あの砦の氷を溶かして!』
それまで何もなかった湿地に、溶岩の体でできた一つ目の巨人が現れ、周囲から火炎が立ち昇った。
溶岩魔人の頭上に燃え盛る巨大な溶岩の塊があらわれた。
溶岩魔神が砦の方にむかってゆっくりと腕を動かすと、燃え盛る溶岩の塊が厚い氷に閉ざされた砦へと飛んでいった。
轟音とともに巨大な溶岩球は氷の城へとめりこんでいき、大量の水蒸気がたちのぼり辺りは霧に包まれた。
『ありがとう、ヴァラリヒヌ』
イーアは溶岩魔神に礼を言って、帰らせた。
ユウリが手をあげると、あたりを漂っていた水蒸気が水になってぐるぐると空を廻っていき、視界がクリアになった。
砦の入り口を閉ざしていた厚い氷の壁は消え失せていた。
空を漂う水は水龍のように形を変え、急速に勢いを増し、砦の入り口へと突っこんでいき、入り口の扉を破壊した。
同時に、風がイーア達を包み、次の瞬間には、イーアは砦の入り口の中に立っていた。
<氷の砦>の中には、古代魔術で作られたゴーレム兵がたくさんうごめいていたけれど、ゴーレムたちはユウリの風魔法とティトの体当たりで次々に粉砕されて土にもどっていった。
やがて、<氷の砦>の最奥に到達した。
扉を開けると、その先には<白光>のローブを着た魔導師が一人だけいた。
「来たか。帝国に滅亡をもたらすダークエルフよ」
敵意をむき出しにする老人に向かって、イーアは淡々と言った。
「支配者の石板を渡して。石板を渡してくれさえすれば、あなたのことは放っておくから」
すでに勝負は決まっている。
帝国は滅亡し、ウラジナルは<白光>を失った。
ウラジナルを裏切ったスタグヌス派の話では、もう補完部品がないため、今のウラジナルには『支配者の石板』を使用することもできない。
ただ一人年老いた魔導師が残っただけだ。
「帝国なき世で、生きながらえて何になる。ここでお前達を葬り去り、帝国を復活させるのだ!」
ウラジナルはそう叫んで杖をあげた。
部屋の中央に巨大なゴーレムが出現した。
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