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6話 マグロ・フォルクス公爵の決意
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【マグロ・フォルクス公爵視点】
私は王国を支える大貴族の一人、マグロ・フォルクス……貴族階級で言えば公爵に当たる。私より上の階級は王族しか居ないのだ。しかし、私は公爵としてはやってはいけないことをしてしまった。
愛すべき婚約者であったレミーラ・ヒュンケル伯爵令嬢と、幼馴染であり公爵令嬢のシエナ・ウィンドミルとの間で気持ちが揺らいでしまっていた。そして……私は幼馴染であるシエナに気持ちが向かってしまっていたのだ。
レミーラのことは愛していた。決して、伯爵令嬢だからと馬鹿にしたこともない。確かに公爵令嬢であるシエナの方が身分という意味では高いが……そんなところで彼女達を判断したことなど一度もなかった。私は両方の女性を愛していたのだ。
これは気持ちの問題……公爵令嬢であり、私の大切な幼馴染のシエナに、レミーラが勝てなかっただけなのだ。私は確かにシエナを優先していた……肉体関係まで持つ仲になったのは、シエナの方だった。シエナ公爵令嬢とはもちろん婚約をしていない。だからこそ、肉体関係など許されることではなかったのだ。
「私と婚約解消をしてください」
それがレミーラからの言葉だった……私はショックを受けた。彼女も同じ気持ちだっただろう。彼女はシエナとの仲を改めないのであれば、これ以上付き合い続けるのは難しいとまで言っていた。私の正しい選択肢は、その時にレミーラ伯爵令嬢に対して頷くことだったのだ。
シエナ公爵令嬢とは距離を置くと……そう言えば、レミーラはまだ私の隣に居てくれただろう。しかし、私はシエナとの仲を改善することを拒んだ。そして、婚約解消が成立したのだ。
ヒュンケル家の令嬢、レミーラ。彼女にはその後、多くの噂話が流れたと聞く。私の噂話も流れてはいたが、身分的に私は公爵であるのでレミーラ程のダメージは負わなかった。レミーラには本当に悪いことをしたと思っている。私の隣には現在、シエナが居るのだから……。
「ねえ、マグロ。このままではレミーラ嬢が可哀想だわ……なんとかしてあげられないのかしら?」
「なんとかと言ってもな……私には何も出来ないよ」
私はシエナを選んでしまったのだ……これ以上、彼女に近づくのは駄目だ。そんなことをするのは……それに、シエナも黙っていないはずだし。
「マグロは公爵と言う立場なんだし、第二夫人という形で招いてあげたらどうかしら? レミーラ嬢もきっと喜ぶでしょう……彼女はきっとまだ、あなたのことが忘れられないのでしょうし」
「第二夫人だと……? しかし、それは……」
「私にはわかるのよ、マグロ。彼女はきっとあなたのことがまだ好きなのよ。間違いないわ」
「そ、そうだろうか……?」
「ええ、間違いないわ。第二夫人として迎え入れてあげるのが、彼女にとっての幸せだと思うわ」
これは女同士だから分かる直感のようなものだろうか? まさか、シエナからこんな提案が出て来るとは思わなかったな。しかし……彼女が許してくれるのなら、良い提案かもしれない。レミーラは確かに今は傷心で悲しんでいるだろう……あんな噂話もあって精神的にまいっているかもしれない。優しく慰められるのは、元婚約者である私だけだ。
それに彼女からしても悪いは話ではないはずだ。何せ公爵の第二夫人となるのだからな……貴族という立場で、これほどの名誉はなかなかないだろう。
「よし、なんとか説得してみよう」
「ええ、絶対にその方が良いわよ。多少、ごねられても引いたら駄目よ? 女というのは、多少、強引な男性に惹かれるんだから」
「そ、そういうものかな……?」
「ええ、そういうものよ。強引に引っ張って行ってくれない男性なんて、単なるモヤシじゃない。誰がそんな男性のことを好きになると思っているの?」
「そ、そうだな、言われてみれば……確かにシエナの言う通りだ。よし、参考にしてみるか」
「ええ、強引に行くことをおすすめするわ。うふふふふっ」
……? 何かシエナは楽しんでいるように感じられたが、きっと気のせいだろう。彼女もレミーラのことを心配していたのだな。
さて、レミーラ。もう悲しむ必要なんてないんだ。私達は一度は婚約解消をした関係だが、それもすぐに修復される。まあ、君が第二夫人という立場ではあるが……君からすれば十分な立ち位置の確保と言えるだろう。
このマグロ・フォルクス公爵の第二夫人になれば、嫌な噂話などすぐに消えてなくなるさ。さあ、君をすぐにでも迎えに行くとしよう!
私は王国を支える大貴族の一人、マグロ・フォルクス……貴族階級で言えば公爵に当たる。私より上の階級は王族しか居ないのだ。しかし、私は公爵としてはやってはいけないことをしてしまった。
愛すべき婚約者であったレミーラ・ヒュンケル伯爵令嬢と、幼馴染であり公爵令嬢のシエナ・ウィンドミルとの間で気持ちが揺らいでしまっていた。そして……私は幼馴染であるシエナに気持ちが向かってしまっていたのだ。
レミーラのことは愛していた。決して、伯爵令嬢だからと馬鹿にしたこともない。確かに公爵令嬢であるシエナの方が身分という意味では高いが……そんなところで彼女達を判断したことなど一度もなかった。私は両方の女性を愛していたのだ。
これは気持ちの問題……公爵令嬢であり、私の大切な幼馴染のシエナに、レミーラが勝てなかっただけなのだ。私は確かにシエナを優先していた……肉体関係まで持つ仲になったのは、シエナの方だった。シエナ公爵令嬢とはもちろん婚約をしていない。だからこそ、肉体関係など許されることではなかったのだ。
「私と婚約解消をしてください」
それがレミーラからの言葉だった……私はショックを受けた。彼女も同じ気持ちだっただろう。彼女はシエナとの仲を改めないのであれば、これ以上付き合い続けるのは難しいとまで言っていた。私の正しい選択肢は、その時にレミーラ伯爵令嬢に対して頷くことだったのだ。
シエナ公爵令嬢とは距離を置くと……そう言えば、レミーラはまだ私の隣に居てくれただろう。しかし、私はシエナとの仲を改善することを拒んだ。そして、婚約解消が成立したのだ。
ヒュンケル家の令嬢、レミーラ。彼女にはその後、多くの噂話が流れたと聞く。私の噂話も流れてはいたが、身分的に私は公爵であるのでレミーラ程のダメージは負わなかった。レミーラには本当に悪いことをしたと思っている。私の隣には現在、シエナが居るのだから……。
「ねえ、マグロ。このままではレミーラ嬢が可哀想だわ……なんとかしてあげられないのかしら?」
「なんとかと言ってもな……私には何も出来ないよ」
私はシエナを選んでしまったのだ……これ以上、彼女に近づくのは駄目だ。そんなことをするのは……それに、シエナも黙っていないはずだし。
「マグロは公爵と言う立場なんだし、第二夫人という形で招いてあげたらどうかしら? レミーラ嬢もきっと喜ぶでしょう……彼女はきっとまだ、あなたのことが忘れられないのでしょうし」
「第二夫人だと……? しかし、それは……」
「私にはわかるのよ、マグロ。彼女はきっとあなたのことがまだ好きなのよ。間違いないわ」
「そ、そうだろうか……?」
「ええ、間違いないわ。第二夫人として迎え入れてあげるのが、彼女にとっての幸せだと思うわ」
これは女同士だから分かる直感のようなものだろうか? まさか、シエナからこんな提案が出て来るとは思わなかったな。しかし……彼女が許してくれるのなら、良い提案かもしれない。レミーラは確かに今は傷心で悲しんでいるだろう……あんな噂話もあって精神的にまいっているかもしれない。優しく慰められるのは、元婚約者である私だけだ。
それに彼女からしても悪いは話ではないはずだ。何せ公爵の第二夫人となるのだからな……貴族という立場で、これほどの名誉はなかなかないだろう。
「よし、なんとか説得してみよう」
「ええ、絶対にその方が良いわよ。多少、ごねられても引いたら駄目よ? 女というのは、多少、強引な男性に惹かれるんだから」
「そ、そういうものかな……?」
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……? 何かシエナは楽しんでいるように感じられたが、きっと気のせいだろう。彼女もレミーラのことを心配していたのだな。
さて、レミーラ。もう悲しむ必要なんてないんだ。私達は一度は婚約解消をした関係だが、それもすぐに修復される。まあ、君が第二夫人という立場ではあるが……君からすれば十分な立ち位置の確保と言えるだろう。
このマグロ・フォルクス公爵の第二夫人になれば、嫌な噂話などすぐに消えてなくなるさ。さあ、君をすぐにでも迎えに行くとしよう!
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