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*第三の壁
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「い、いいよ、ニル…ん…そんなこと」
「黙ってろ。」
シオンにズボンを下ろさせると下着の中から突き上げるとてつもない鈍器がそこにあった。思わずまじまじと見てしまうとシオンは恥ずかしそうに内股になって隠そうとした。
ニルはよく見せるよう指示するとおずおずと足を広げ下着を下ろし思わず絶句するほどのモノをようやく取り出したのだ。
「…おま…こんなもん隠し持ってたのかよ」
「うぅ…恥ずかしいから、あんま言わないで」
恥ずかしい?恥ずかしいってもんじゃない。
こんなの、行きつけの銭湯にもいなかったぞ。
ニルは恐る恐るそれに指を近づけるとピクリと反応する。
シオンが「んっ」と色っぽい声を出す、まだちょっと触っただけなのにさっきよりも心なしか大きくなったそれに驚いた。
ニルは身を低くして意を決した。片手でそれを優しく握るとシオンが身じろぎをする。
ゆっくり、ゆっくりと上下に動かすと公園にある水飲み場のようにトロトロと先っぽから先走りが漏れ出てくる。
徐々に速度を早めていくとシオンは声を抑えながらふるふると体を震わせる。
そんな色めかしいイケメンの姿は眼福だ。ニルの方もそんなシオンの表情に釣られて心臓がどくどくと高鳴っていた。
しばらくして、シオンの声が一際上擦りびゅっと白濁した液体が先っぽから勢いよく飛び出た。
口を覆っていた手がズレて我慢していた声もその拍子で大きく漏れ出てしまう。
手に溜まった液体を見て、今後について考えることが増えてしまったと心の中でため息をついた。
息を整えたシオンは自分の出したものがニルの手にベッタリとくっついているのを見てゾッとしたと同時にすぐに自分の懐に入れていたハンカチで痛いほどニルの手を擦った。
「ごめん、ごめんニル。こんなはずじゃ」
「いたたたた、平気だってこのぐらい男なら誰でもあるだろ?」
「うぅ…」と未来の魔王らしからぬひ弱な態度を見せたシオン。たかが他人、しかも俺みたいなちんちくりんに下の世話をされたくらいでこんなんになるようじゃ傍若無人な魔王には程遠いなと呆れた。
いまだに頬を染めて恥ずかしそうにしているシオン、その心中を察することは鈍感なニルにはできなかったようだ。
と、まぁ、第三の壁を無事(?)乗り越えて朝を迎えた俺たち。
あの後シオンは気恥ずかしくなったのか背中を向けてスヤスヤと眠ってしまい、ニルは広々とベッドを使うことができた。しかし朝目を覚ますとどうしてかまたシオンの腕の中にいたため結局シオンの我儘をちゃんと、いいやそれ以上にニルは叶えたのだった。
このお代分はきっちり働いて返して貰わないとな、と密かに心に決めた。
昨日の食堂まで行くと、リベリアの言う通り朝から豪華な朝食がすでに用意されていた。
前世は朝も夜もカップラーメン一筋だったニルにとってこれほどまでに健康的な食事をするのは久しぶりだった。
まだ客達の残飯を貪っていた時の方がマシなくらいだ。
長いテーブルにはすでにリベリアが座っており、こちらに気がつくと笑顔を浮かべて朝の挨拶をしてきた。
「よくお眠りになられましたか?」
「まぁ…はい。」
曖昧に返事をしたニルと恥ずかしそうにもじもじし始めたシオンにイグニスは首を傾げた。
食事を始めた三人。流石は貴族様だとニルはイグニスの優雅な手元に見惚れているとふと声がかかった。
「それで、討伐は今夜に行われるのですか?」
「あぁ。そのつもり。昨晩戦略を練ってみたんだけど、さすがにシオン一人じゃ武が悪すぎるから、そちらの兵も借りたいんだけど、どうだろう?」
「勿論です。実践経験が少ない点を除けば十分に力のある兵達でございます。ご自由にお使いください。」
快く承諾してくれたリベリアに頷くと借りてきた猫のように静かにニルの隣に座るシオンを見た。
ニルは朗らかに小さく笑うとシオンの腕をちょこんと触った。こわばっていたシオンの体から力が抜け、ニルに釣られて笑う様子は反対側で見ていたリベリアでさえ見惚れるほどのものだった。
この二人にはきっと計り知れないほどの深い絆があるのだろう。
リベリアはそう思った。
「ひとついいか?……どうして勇者に依頼をしなかった?」
唐突なニルの質問にシオンは驚いた。が、自分の出る幕ではないことをわかっていたために膝の上に置いた手をきゅっと握るしかできなかった。
リベリアは少し目を広げたが、聞かれるだろうとわかっていたのかどうしてとも言わずに口を開きだした。
「最初は私も勇者に依頼しようと王都に文を送ったのですが、帰ってきた手紙に記されていたのは派遣できるのはおよそ二年後だと。」
「二年後?!」
流石に驚きを隠せなかったニルは勢い余って浮かせた尻をはっとして元に戻した。
「今は手一杯だと…各地で勇者への依頼が殺到していてなかなか対応できないのだと、そう書いてありました。」
ニルは原作を思い出していた。勇者の役目は魔王を倒すこと、それから騎士団でも手に負えないような魔物関連の被害の解決。魔王が静かにしている今基本的に勇者はその辺の依頼をこなして戦闘に慣れるのだが、まさかそんなにも手が回っていなかったとは思っても見なかった。
しばらく思考しているとあぁ、なるほどとようやくその理由がわかった。
ニルは深くため息をついた。
「勇者は多分来ない。二年後というのも対応する気がない依頼にそう答えているだけだろう。」
リベリアは「え」と言葉を発し何が何だかわからないようだ。
「勇者の予言書は知ってるか?」
「え、ええ。勿論。ーー魔王が復活しこの世界に災いをもたらす時、異界から凄まじき力を持った勇者が召喚される。彼の者はその力で魔王を倒し世界を救うだろう。ーー誰でも知ってる有名な予言書です。」
簡単に予言書の一節を口にしたリベリアに頷く。
「じゃあ、その予言の続きは?」
「続き?」
ニルはにやりと笑いながら大きく頷いた。
「勇者が現れし時より季節が一周した頃、魔王は現れ世界を混沌に陥れるだろう。
季節が一周、つまり一年だ。召喚されてから一年後、魔王と勇者達は相まみえる。無事倒せたとしたら勇者達は元の世界にすぐに戻されるだろうな。二年も、いいや二日もしないうちに。」
「では!すでにふるいにかけられていたと!私達なんてどうでもいいと、そう言われていたというわけですか!条件もなく魔物被害の募集をしていたのは、ただ世間体を繕っているだけだと。」
興奮気味に血相を変えてリベリアはバンッと机を叩いた。
リベールの街は確かに栄えてはいるが、権力者という権力者はいない。リベリアは末端の貴族、国が重要視していないことはすぐに読めた。
「そういうことだ。勇者は一生来ない。それに予言書の続きを知っている人もそういない。だから、国は平気で嘘をついた。勇者が帰った頃に、彼らの強い願いですぐに帰還することになったと伝えれば世界を救った勇者らを責める国民はいないだろう。」
気に食わないリベリアはギリギリと奥歯を噛み締めた。
しかし通りすがりの俺の話をここまで信用してくれるのは流石にちょろすぎやしないかと心配になる。が、リベリアは「目の前に現れてすらくれない勇者より、食卓を共に囲んだ恩人を信頼するのは当たり前です。」そう力強く言ったためなんだか逆に小っ恥ずかしくなった。
だが、やはりなぜ俺がそんなことを知っているのかは気になったらしく眼鏡の奥の瞳をきらりと輝かせて前のめりに質問してきた。ちなみに隣で大人しく座っていたシオンも視線をじっとこっちに向けてきた。
「俺は以前、しがない食堂で働いてたんだけど、そこに偶然王都の神官が来たんだ。これはそいつらの話をこっそり盗み聞きして得た情報だ。」
リベリアは目を見開いて「まさか」「そんな」とうわごとのように呟いていた。一方でシオンは特に何の反応も見せずに大人しく隣に座っている。
「…卑怯にも程があります。王国は私達を一体なんだと思っているのか。…しかし、お二人が現れてよかったこの御恩は一生忘れません。」
「おいおい、まだ何も始まっちゃあいないぜ。」
クスクスと笑えばついさっきまで怒り心頭だったリベリアもほっと息をついていた。
高い金額に見合った信頼も傾いた。それにシオンにとって初の群れとの戦い、経験値を積むにはいい機会だ。
気を抜けば地獄を見る、しかし勝てばバックに一つの街がついたと言っても過言ではない。シオンの今後の活動においてスポンサーはなくてはならない存在、今のうちに確保しておいて損はないだろう。
朝食を終え、シオンとニルは部屋へ戻った。計画を練った後すぐにマクベル率いる兵隊のところへ向かった。情報共有を終え、装備と能力を確認すると夜の討伐へ備えた。
月が真上に登り夜が一層濃くなった頃シオンとニルそれとマクベル一隊は邸の門の前で出発に備えていた。出現場所は事前に予想していた中央通りから3本ほど逸れた道。少しでも奴らの動きを把握したいと予測に長けたリベリアの部下達が割り出した場所だ。正直俺達の能力では闇雲に探すしかでき無さそうだったからとてもありがたい。
横に立っているシオンをチラリと見ると黒い騎士服に思わず見惚れた。これはリベリアがシオンの格好(やっすい冒険者の装備)を心配して特注した装備だ。シオンの体格、雰囲気、戦闘スタイルに合わせてデザインしてくれたため体にピタリと馴染みよく似合っていた。
それからわかったことだがリベリアは相当な過保護らしく非戦闘員であるニルの装備もついでに作ってくれた。
「そんなボロで討伐に臨もうとしているのですか?!ありえません。それじゃあ刺されたら死にますよ!!」と、まるで心配性の母親の如く凄い勢いで部下を呼びつけていた。淡白な人だと思ったがどうやら違うらしい。
ということで俺の装備も少しデザインは違うがシオンに似た黒騎士風になってしまった。髪色も相まってシオンよりも心なしか悪役感が出てしまっている気がするが、そんな新衣装をさっきまでしこたま褒められたためお揃いっていうのは否めないがまぁいっか、と落ち着いてしまった。
ニルの視線に気がついたシオンはニコリと微笑む。
「どうしたの?お腹すいた?」
「いや、さっき食ったばっかだろ」
自分に対してまで鈍感なニルは見惚れていたなんて思っていないのだろう。急に振り向かれて驚きながらもこんな時でもニルの腹の心配をしてくるシオンに大きく呆れた。
戦うのは自分だってのに随分余裕なものだ。まぁ確かにシオンの今のレベルを考えれば難しいことでもない。だがこの世界はシオンにとって不利に動いている、いつ何があるか分からない中気を抜くなんてことはしないように注意しなければならない。
それをシオンに伝えればまっすぐ真剣な目で「はい」と素直な返事が返ってきた。まるで、なんかじゃないもうこいつは忠実なワンコで決定だ。そうなると自分がいつまでこいつのリードを握っていられるか心配事が多くなる。
シオンの手前ため息をつくわけにもいかずしれっと視線を逃すとちょうど時計の針が予定時刻を指そうとしていた。
「さてと、行きますか。」
「黙ってろ。」
シオンにズボンを下ろさせると下着の中から突き上げるとてつもない鈍器がそこにあった。思わずまじまじと見てしまうとシオンは恥ずかしそうに内股になって隠そうとした。
ニルはよく見せるよう指示するとおずおずと足を広げ下着を下ろし思わず絶句するほどのモノをようやく取り出したのだ。
「…おま…こんなもん隠し持ってたのかよ」
「うぅ…恥ずかしいから、あんま言わないで」
恥ずかしい?恥ずかしいってもんじゃない。
こんなの、行きつけの銭湯にもいなかったぞ。
ニルは恐る恐るそれに指を近づけるとピクリと反応する。
シオンが「んっ」と色っぽい声を出す、まだちょっと触っただけなのにさっきよりも心なしか大きくなったそれに驚いた。
ニルは身を低くして意を決した。片手でそれを優しく握るとシオンが身じろぎをする。
ゆっくり、ゆっくりと上下に動かすと公園にある水飲み場のようにトロトロと先っぽから先走りが漏れ出てくる。
徐々に速度を早めていくとシオンは声を抑えながらふるふると体を震わせる。
そんな色めかしいイケメンの姿は眼福だ。ニルの方もそんなシオンの表情に釣られて心臓がどくどくと高鳴っていた。
しばらくして、シオンの声が一際上擦りびゅっと白濁した液体が先っぽから勢いよく飛び出た。
口を覆っていた手がズレて我慢していた声もその拍子で大きく漏れ出てしまう。
手に溜まった液体を見て、今後について考えることが増えてしまったと心の中でため息をついた。
息を整えたシオンは自分の出したものがニルの手にベッタリとくっついているのを見てゾッとしたと同時にすぐに自分の懐に入れていたハンカチで痛いほどニルの手を擦った。
「ごめん、ごめんニル。こんなはずじゃ」
「いたたたた、平気だってこのぐらい男なら誰でもあるだろ?」
「うぅ…」と未来の魔王らしからぬひ弱な態度を見せたシオン。たかが他人、しかも俺みたいなちんちくりんに下の世話をされたくらいでこんなんになるようじゃ傍若無人な魔王には程遠いなと呆れた。
いまだに頬を染めて恥ずかしそうにしているシオン、その心中を察することは鈍感なニルにはできなかったようだ。
と、まぁ、第三の壁を無事(?)乗り越えて朝を迎えた俺たち。
あの後シオンは気恥ずかしくなったのか背中を向けてスヤスヤと眠ってしまい、ニルは広々とベッドを使うことができた。しかし朝目を覚ますとどうしてかまたシオンの腕の中にいたため結局シオンの我儘をちゃんと、いいやそれ以上にニルは叶えたのだった。
このお代分はきっちり働いて返して貰わないとな、と密かに心に決めた。
昨日の食堂まで行くと、リベリアの言う通り朝から豪華な朝食がすでに用意されていた。
前世は朝も夜もカップラーメン一筋だったニルにとってこれほどまでに健康的な食事をするのは久しぶりだった。
まだ客達の残飯を貪っていた時の方がマシなくらいだ。
長いテーブルにはすでにリベリアが座っており、こちらに気がつくと笑顔を浮かべて朝の挨拶をしてきた。
「よくお眠りになられましたか?」
「まぁ…はい。」
曖昧に返事をしたニルと恥ずかしそうにもじもじし始めたシオンにイグニスは首を傾げた。
食事を始めた三人。流石は貴族様だとニルはイグニスの優雅な手元に見惚れているとふと声がかかった。
「それで、討伐は今夜に行われるのですか?」
「あぁ。そのつもり。昨晩戦略を練ってみたんだけど、さすがにシオン一人じゃ武が悪すぎるから、そちらの兵も借りたいんだけど、どうだろう?」
「勿論です。実践経験が少ない点を除けば十分に力のある兵達でございます。ご自由にお使いください。」
快く承諾してくれたリベリアに頷くと借りてきた猫のように静かにニルの隣に座るシオンを見た。
ニルは朗らかに小さく笑うとシオンの腕をちょこんと触った。こわばっていたシオンの体から力が抜け、ニルに釣られて笑う様子は反対側で見ていたリベリアでさえ見惚れるほどのものだった。
この二人にはきっと計り知れないほどの深い絆があるのだろう。
リベリアはそう思った。
「ひとついいか?……どうして勇者に依頼をしなかった?」
唐突なニルの質問にシオンは驚いた。が、自分の出る幕ではないことをわかっていたために膝の上に置いた手をきゅっと握るしかできなかった。
リベリアは少し目を広げたが、聞かれるだろうとわかっていたのかどうしてとも言わずに口を開きだした。
「最初は私も勇者に依頼しようと王都に文を送ったのですが、帰ってきた手紙に記されていたのは派遣できるのはおよそ二年後だと。」
「二年後?!」
流石に驚きを隠せなかったニルは勢い余って浮かせた尻をはっとして元に戻した。
「今は手一杯だと…各地で勇者への依頼が殺到していてなかなか対応できないのだと、そう書いてありました。」
ニルは原作を思い出していた。勇者の役目は魔王を倒すこと、それから騎士団でも手に負えないような魔物関連の被害の解決。魔王が静かにしている今基本的に勇者はその辺の依頼をこなして戦闘に慣れるのだが、まさかそんなにも手が回っていなかったとは思っても見なかった。
しばらく思考しているとあぁ、なるほどとようやくその理由がわかった。
ニルは深くため息をついた。
「勇者は多分来ない。二年後というのも対応する気がない依頼にそう答えているだけだろう。」
リベリアは「え」と言葉を発し何が何だかわからないようだ。
「勇者の予言書は知ってるか?」
「え、ええ。勿論。ーー魔王が復活しこの世界に災いをもたらす時、異界から凄まじき力を持った勇者が召喚される。彼の者はその力で魔王を倒し世界を救うだろう。ーー誰でも知ってる有名な予言書です。」
簡単に予言書の一節を口にしたリベリアに頷く。
「じゃあ、その予言の続きは?」
「続き?」
ニルはにやりと笑いながら大きく頷いた。
「勇者が現れし時より季節が一周した頃、魔王は現れ世界を混沌に陥れるだろう。
季節が一周、つまり一年だ。召喚されてから一年後、魔王と勇者達は相まみえる。無事倒せたとしたら勇者達は元の世界にすぐに戻されるだろうな。二年も、いいや二日もしないうちに。」
「では!すでにふるいにかけられていたと!私達なんてどうでもいいと、そう言われていたというわけですか!条件もなく魔物被害の募集をしていたのは、ただ世間体を繕っているだけだと。」
興奮気味に血相を変えてリベリアはバンッと机を叩いた。
リベールの街は確かに栄えてはいるが、権力者という権力者はいない。リベリアは末端の貴族、国が重要視していないことはすぐに読めた。
「そういうことだ。勇者は一生来ない。それに予言書の続きを知っている人もそういない。だから、国は平気で嘘をついた。勇者が帰った頃に、彼らの強い願いですぐに帰還することになったと伝えれば世界を救った勇者らを責める国民はいないだろう。」
気に食わないリベリアはギリギリと奥歯を噛み締めた。
しかし通りすがりの俺の話をここまで信用してくれるのは流石にちょろすぎやしないかと心配になる。が、リベリアは「目の前に現れてすらくれない勇者より、食卓を共に囲んだ恩人を信頼するのは当たり前です。」そう力強く言ったためなんだか逆に小っ恥ずかしくなった。
だが、やはりなぜ俺がそんなことを知っているのかは気になったらしく眼鏡の奥の瞳をきらりと輝かせて前のめりに質問してきた。ちなみに隣で大人しく座っていたシオンも視線をじっとこっちに向けてきた。
「俺は以前、しがない食堂で働いてたんだけど、そこに偶然王都の神官が来たんだ。これはそいつらの話をこっそり盗み聞きして得た情報だ。」
リベリアは目を見開いて「まさか」「そんな」とうわごとのように呟いていた。一方でシオンは特に何の反応も見せずに大人しく隣に座っている。
「…卑怯にも程があります。王国は私達を一体なんだと思っているのか。…しかし、お二人が現れてよかったこの御恩は一生忘れません。」
「おいおい、まだ何も始まっちゃあいないぜ。」
クスクスと笑えばついさっきまで怒り心頭だったリベリアもほっと息をついていた。
高い金額に見合った信頼も傾いた。それにシオンにとって初の群れとの戦い、経験値を積むにはいい機会だ。
気を抜けば地獄を見る、しかし勝てばバックに一つの街がついたと言っても過言ではない。シオンの今後の活動においてスポンサーはなくてはならない存在、今のうちに確保しておいて損はないだろう。
朝食を終え、シオンとニルは部屋へ戻った。計画を練った後すぐにマクベル率いる兵隊のところへ向かった。情報共有を終え、装備と能力を確認すると夜の討伐へ備えた。
月が真上に登り夜が一層濃くなった頃シオンとニルそれとマクベル一隊は邸の門の前で出発に備えていた。出現場所は事前に予想していた中央通りから3本ほど逸れた道。少しでも奴らの動きを把握したいと予測に長けたリベリアの部下達が割り出した場所だ。正直俺達の能力では闇雲に探すしかでき無さそうだったからとてもありがたい。
横に立っているシオンをチラリと見ると黒い騎士服に思わず見惚れた。これはリベリアがシオンの格好(やっすい冒険者の装備)を心配して特注した装備だ。シオンの体格、雰囲気、戦闘スタイルに合わせてデザインしてくれたため体にピタリと馴染みよく似合っていた。
それからわかったことだがリベリアは相当な過保護らしく非戦闘員であるニルの装備もついでに作ってくれた。
「そんなボロで討伐に臨もうとしているのですか?!ありえません。それじゃあ刺されたら死にますよ!!」と、まるで心配性の母親の如く凄い勢いで部下を呼びつけていた。淡白な人だと思ったがどうやら違うらしい。
ということで俺の装備も少しデザインは違うがシオンに似た黒騎士風になってしまった。髪色も相まってシオンよりも心なしか悪役感が出てしまっている気がするが、そんな新衣装をさっきまでしこたま褒められたためお揃いっていうのは否めないがまぁいっか、と落ち着いてしまった。
ニルの視線に気がついたシオンはニコリと微笑む。
「どうしたの?お腹すいた?」
「いや、さっき食ったばっかだろ」
自分に対してまで鈍感なニルは見惚れていたなんて思っていないのだろう。急に振り向かれて驚きながらもこんな時でもニルの腹の心配をしてくるシオンに大きく呆れた。
戦うのは自分だってのに随分余裕なものだ。まぁ確かにシオンの今のレベルを考えれば難しいことでもない。だがこの世界はシオンにとって不利に動いている、いつ何があるか分からない中気を抜くなんてことはしないように注意しなければならない。
それをシオンに伝えればまっすぐ真剣な目で「はい」と素直な返事が返ってきた。まるで、なんかじゃないもうこいつは忠実なワンコで決定だ。そうなると自分がいつまでこいつのリードを握っていられるか心配事が多くなる。
シオンの手前ため息をつくわけにもいかずしれっと視線を逃すとちょうど時計の針が予定時刻を指そうとしていた。
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