あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は

山井縫

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試食会の時に起きた出来事は

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「ああ、私も聞いたよ。それ」
 私もそれを言ったエリナの姿を思い出し、少し切なくなった。
「ああ、それからあの時フル先も顔を出したんだよね」
「フル先が?」
 ああ、そういえば隣の理科準備室にいたっていってたっけ。
「うん。家政科室の扉、誰でも入れるように扉あけ放ってたの。で、トイレ行くときに前通ったのを香が気づいて声かけたのよ」
 部屋の並びとしては一番奥が理科室、隣が理科準備室、そして家政科室という並びだ。
 みんな扉に一番近いテーブルに陣取っていたので前に人が通れば気づいて当然だ。
「そっか……」
 私は一瞬【楽しそうで何よりだね】と言いかけてその言葉を呑み込んだ。今日のフル先の事を考えればそんな言葉は相応しくない事にきづいたからだ。
「で、みんな十七時二十分くらいまでいたんだって?」
「まあ、みんなっていうか、私と香にしょう子が最期まで片付けで残った感じ。で、全部終わったから一応フル先に声かけようと想って準備室覗いたら、何か電話かけてたんだよね」
「ああ、私もそんな話聞いたな」
 十七時から熊谷先生と電話で話をしていたんだっけ。
「うん。だから声はかけずにそのまま帰ったの」
「なるほどね、因みにエリナはその時にはいなかったんだよね」
「勿論、とっくに出て行ってたよ」
 時間的には転落の直前という事になるか。既に屋上にいた可能性が高いかな。
「因みに出てった時どこに向かったかとかは知らない?」
「うん。聞かなかった。けど……」
「なに? なんかしってるの?」
「ひょっとしたら理科準備室に寄ってるかも?」
「理科準備室って、フル先の所?」
「うん。扉を左に出ていったのを見たんだよね。あっちは理科室と準備室以外どん突きだし」
 確かに、他の場所にいくなら右へ折れるはずだ。
「もし理科準備室に行ったとしてどれくらいの時間かは分かる?」
「いや、わからないな。ずっと見てた訳じゃないからね」
「そっか。それって、フル先がこっちに来る前じゃないんだよね。呼びに行ったとか……」
「違う違う。後だったよ」
「そっか……。うん、それって警察に話した?」
 この間理科準備室で話を聞いた時はそんな話してなかった筈だ。エリナの事は家政科室に居るのを遠目に見たとしかいってなかった……。
「うんん……今思い出したから言ってないけど。言った方が良いかな」
「今から言いに言ったらまた時間取られるんじゃない? 私がついでにいっとくよ。もう今日は帰っちゃいなよ」
「わかった。ありがとう」
「いや。こっちこそ引き留めてごめんね」
 想えば今日彼女は二人の教師の死体を見てしまっている。相当な心労があった筈だ。それにも関わらず長々と話をしてしまった。何だか申し訳なく感じる。
「ううん。何か頭がごちゃごちゃしてたからさ、警察に話きかれただけで終わってたらもやもやしっぱなしだったと想う。こっちこそトーコと話せてよかったよ。じゃあ、今日は帰る。またね」
「うん、気を付けて」
 言ったと同時に、ガラガラガラと扉が鳴る。見るとそこには今日何度か見た光景。スーツ姿の男性がこちらに向かって話しかけてくる。
「東雲塔子さんですね。お待たせしました、こちらへどうぞ」
 
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