いじっぱりなシークレットムーン

奏多

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  Waning Moon 15

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 ***


 肌がつるつるになる重曹泉で両手両足を伸ばす。

「ふは~、最近忙しかったから生き返る~」

 浴槽が11もある大浴場には、硫黄の匂いが立ちこめている。

 岩を模した黒いタイルの床は、ところどころがぼこぼことなっていて、歩くだけで足の裏の土踏まずが刺激されて、健康にいいそうだ。

 ……綺麗になりたいと思う。
 課長が触っても気持ちいいと思える肌に。

 なんて――。

「違うわよ、あたしそんなキャラじゃないんだから! 綺麗に痩せたらいいなって思ってるだけよ!」

 いけない想像をしてしまうあたしは、もう何度目か、洗い場で身体を隅から隅までよく洗って美肌の温泉に入る。化粧も落とした。

 ちょっと低温度のジャクジー風呂に潜って全身マッサージ……と思いきや、かなり水流が強くて溺れるかと思った。

 腰だけではなく、太股とかお腹、二の腕にくるように身体をずらす。

 うん、これはなかなか……。

 半分眠りかけて、ずるっと滑ってしまうと、またもや水流に揉まれて溺れそうになる。思い切り水流に遊ばれているの図。

 社長、あたしやっぱりカワウソじゃないです!!

 サウナに入ってテレビを見ながら、だらだら汗をかいて……水風呂は冷たくて嫌いだから、やはりまたあのジャクジー風呂と行ったり来たり。

「はぁはぁ、これで痩せたはず……」

 体重計で測ったら、ちょっとは体重が落ちて、喜んで出ることにした。

 更衣室は大きく、化粧が出来る洗面台も横一列ずらりと並ぶ。

 そこには売店で販売されているらしい、高級化粧品が置かれてあり、ちょっと気になった化粧水と美容液をつけてみたが、大人になりきれていない顔立ちはそのままだ。

 結構あたしはこれがコンプレックスである。衣里のような切れ長の目でもないし、素の杏奈のようなぱっちりと大きい目でもない。美人顔ではないから、カワウソだのカバだの言われる。

 目をぱっちりと見せ、小顔にさせるために、雑誌でお勉強をして化粧でそれらしくなってはきたけれど、化粧をとった顔はいまだ幼い。
 
「しまった、化粧ポーチは部屋に置いたバッグの中だ」

 髪を乾かして、下着の上に浴衣と羽織を着る。

 課長に見つからないように、こっそりと部屋に戻り、こっそりと化粧をしよう。

 更衣室の扉を開けると、男女共通の休憩スペースがある。柱の周りが椅子になっていて、ドリンクが自由に飲めるようになっている他、ちょっとしたゲームセンターもあり、パチスロをしているおじさま達の姿がちらちらと見える。

 今日の宿泊客で溢れ、ざわめくその場所を通り抜けて、宿泊棟へと続く出口を出ようとしたら、知らない声に呼び止められた。

「タオル落としましたよ?」

「あ、すみません」

 拾ってくれたのは、金髪頭で浴衣を着た若い男性だ。大学生くらいか。

 伸ばした手の上腕を握られた。

「きみは、日帰り予定だったの? それとも元々宿泊客?」

 ……そりゃあね、あたしはベビーフェイスかもしれないけど、初めて会ったこんなチャラチャラした若造に、慣れ慣れしく手を掴まれて、ため口きかれたくないわ。

 この手は掴んで下さいと伸ばしたものじゃなく、タオルを下さいと伸ばした手だ。そっちがその気なら――。

「……ナンパはお断りです。離さないなら、そのタオルはいりません。どうせここのホテルのものですから」

「つれないなあ、ちょっとお喋りしようよ。きみ女子大生? 高校生ってことはないよね?」

 腕を引いて、そのままずるずると連れ出そうとするから、あたしの堪忍袋の緒が切れそうになる。

「いい加減にしろ!」

「いぃぃぃぃぃ!?」

 男が変な声を出したのは、あたしの怒声ではない。すっと現れた浴衣姿の長身の男性に反対の腕を逆手とられていたからで、悲鳴を上げるほどの痛みから逃れるために自ずから身体を捻り、あたしの腕から手は外された。

 あたしを助けてくれた、この男性――

「え、と……課長?」

 しっとりと濡れた黒髪をした、眼鏡姿の……、

「なんで疑問系なんだ」

 香月課長らしい。
 
 不愉快そうな表情を顔に浮かべる彼は、眼鏡の奥の目をさらに不機嫌そうに細めて男に言った。

「……彼女は俺の連れだ。痛い目に遭わされたくないなら、去れ」

「いぃぃぃぃぃ!? わかりました、わかり……ひぇぇぇぇ!」

 十分痛い思いをしたと思うけど、哀れ男がいなくなると、今度は女があたし達の元に寄ってくる。

「きゃあああ、すごぉぉぉい」

「格好いい!! ねぇねぇ名前教えて下さい」

「夕食一緒に食べませんかあ?」

 あたしと同じ浴衣を着ていながら、薄化粧をした彼女達は美人だ。しかもちょっとだけ襟を開けて、胸の谷間が深いことを見せている、あざとい集団だ。

 ……そりゃあモテるでしょうね、課長は。

 長身でほどよく肩幅があり、モデルのように手足は長い。

 細いようでいて、着やせするタイプだから、こうしたすらっと見える浴衣姿での立ち姿は、とてもサマになる。着物姿で、茶道や華道をしていても違和感はなさそうに思える。

 さらに言えば、お顔が極上で上品な顔立ちだ。

 その上に、このしっとりとした濡れ髪と、そこから見える涼やかな切れ長の目とは対照的に、首から襟元に続くうっすらと紅潮した肌が、なんと艶めかしいことか。

 食べて欲しいと言っているような極上イケメンが歩いていれば、食らい尽くしたいだろう肉食女子の気持ちもよくわかる。

 だが課長は、彼女達に愛想をすることなく、彼女達を壁のようにして、あたしの手を握って歩き出した。

「あ、妹さんですかあ?」

「妹さぁん、一緒に遊ばない?」

 まあ、そうだろうな。崩れた化粧も乗っていないあたしの素顔なら。だけどこうも早く課長に見つかるとは。

 課長は肯定も否定もせず、愛想笑いひとつなく黙々とあたしを連れて歩く。まるで彼女達の声など聞こえていないようだ。

 これが結城なら、困った顔をしながら女の子達も気分悪くならないようにと、話しかけられたら応対するのだけれど、課長はまるっきり無視の鉄仮面姿。

 やがて人の波を振り切るようにして進んできたのは、宿泊棟へと続く通路で、自販機と長椅子が置いてあるひっそりとした場所だ。
 
 課長はその椅子にあたしを座らせ、あたしになにか飲みたいか聞いてくる。そういえばあたしお金も忘れてきたんだ。

 部屋に戻れば部屋食かなにかで飲み物を飲もうと思い断ったら、課長は水を買ったようだ。

 課長はなにも言わずに、ペットボトルの蓋を開けて、ごくごくと水を飲んでいく。男らしい喉仏が上下に動く度、なんだかいやらしい気分になってしまうあたしは反対側を向いた。

「課長、髪の毛乾かしてこなかったんですか?」

「急いでいたもので」

「急ぐ? なんでですか?」

「……あなたより先に出ないと、あなたがナンパされるでしょうが!」

 あたしは驚いて、怒り口調の課長の方を向いた。

「またまた~。煽てたってなにも出て……」

「へぇ、だったら私が腕を捻った男はなんだったんでしょうね」

 目が合ったから慌てて、顔をそらす。

「……っ、な、なんだったんでしょうね?」

「こっち見る! なんでこっちを見ないんだ」

「……いや、その……すっぴんだし。お化粧を先に……」

「なんで?」

「いや、だからすっぴん……」

 あたしは指で髪を鷲づかみにして、顔を隠す。

「すっぴんだからなんなんですか?」

「恥ずかしいんですよ、幼くなるから……」

「幼くないですよ」

「幼いんだってば! この子供顔、コンプレックスなんだから!」

 言い終わるや否や、あたしの身体は課長の腕の中に包まれた。

 硫黄やシャンプーにも負けない、課長独特の匂いが強まる。

「ちょ……」

 顎を手でくいと上げられ、課長の顔が下がってきた。

 唇が重なり、角度を変えて何度も口づけられる。


「んん(課長)っ!!」
 

 舌が絡む前に課長の顔が離れた。

 濡れ髪を揺らして、課長は妖艶に微笑む。

「俺は、子供には欲情しないよ」

「――っ!!」

 そして、課長の唇があたしの顔中に注がれた。

「可愛くて、たまらない。俺だけが見ていたい」

 ひとつひとつ優しく、熱く。それだけで課長の匂いに混じり、頭がぼんやりしてくる。 

「前に言ったよね、可愛いって。化粧なんかしないで、そのままのあなたを見せてよ」

 課長にそうやって甘く囁かれると、本当にすっぴんでいてもいいような気がする。

 課長になら、素のあたしを見られても――。

「こんな可愛いあなたを見ていて、俺、おとなしくしないよ?」

 課長の舌があたしの開いた唇に差し込まれ、そのまま横に移動して、唇の裏側を舐められた。

 もどかしい。
 奥に来てくれないのが。

「俺、あんな男が真っ先にあなたを見つけて、腕を掴んでいたことに苛立ってるんだよ。待ってたのに、あなたが出てくるの、俺は待っていたのに。あなたは俺を牽制したのに、他の男ならいいのかと思って」

「……違っ、あたし……」

「あなたがその気がなくても、男はみんなあなたに惑う。それを自覚して」

 今まであたしが合せなかった視線が、まっすぐに合う。

「……」

「……」

 熱くて熱くて溶けてしまいそうなほどの視線。

 この距離がもどかしい。

 ねぇ、あたしを攻めたのならちゃんと攻めてよ。
 あたしのコンプレックスを慰めてくれるのなら、ちゃんと責任とってよ。

 身体が、熱いの。

 ……課長の瞳が揺れた。

「……課長……」

「……っ」

 課長の口から、悩ましい……喘ぎ息のような声が漏れて、さらに身体が熱くなって蕩けそうになってくる。

「……いけないひとだね。そんなに俺を暴走させたいの? ……ここがどこでも、止まらないよ?」

 ちゅっちゅっと唇にキスを落としてから、ぬるりと舌が入り込んできた。

 ああ、この重苦しいこの感覚!

 ぞくぞくして思わず課長の首筋に手を巻き付かせると、課長はあたしの後頭部を撫でながら、あたしの口の奥深くに忍び込んできて、激しく舌を絡み合わせてきた。
 
「ん……んぅ、んん……は…ぅんっ」

「……んっ、もっと…絡めて……ん……そう」

 静寂なホテルの中、くちゅくちゅと舌が絡み合う音と、ふたりの甘い声が漏れている。

 ああ、誰が来るかわからないこんなところで、こんなことをしているなんて。だけど知っているひとには見つからないからこそ、大胆な気分になる。

 気持ちいい。蕩けてしまいそうだ、課長とこうしたキスをするのは。

 課長の手があたしの浴衣の襟の中に入ってくる。

 ブラの上の方から内側に手が滑り込んできて、柔肉を強く弱く揉み込まれる。引き攣った息をしながらキスをしていると、胸の頂きを指で摘ままれ、あたしはびくびくしながら仰け反り、課長の胸に凭れかかる。

 唇を離した課長は、くったりとしたあたしを彼の膝の上で横抱きにするようにして、看病するのかと思いきや……はだけた襟の中に顔を落とし、上から胸の頂きに吸い付いてきた。

「かちょ、あっ、あっああっ」

 あたしは下から手を伸ばして、課長を抱きしめる。
 
 抱きしめれば抱きしめるほどに、課長はあたしの乳房を貪るように歯をたてると、じゅるじゅると音をたてて吸い込んだ。

「ああ、ああああっ」

 課長の匂いと熱に包まれながらの蜜事に、興奮が止まらない。

 胸の愛撫だけでイッてしまいそうなほどに、気持ちよくてたまらない。

 震える足。浴衣の裾を割るようにして、課長の手が下から上へ内股を撫で上げてくると、身体全体がぶるぶると震えた。

 舌で転がされる胸の尖りは、時折歯で噛まれて。ショーツの上からなぞられる指先が中央をぐっぐっと強く押し込んでくる。

「課長、かちょ、やぁぁああああっ」

 魅惑的な課長の匂いが、鼻腔に広がる。

 身体のすべてが、課長によって芽吹きたくて、きゅんきゅんと疼いて苦しい。もっともっと奥深く、強く触れて欲しい。

 その時――、人の声が聞こえて、警戒に背筋がざわっとした。

「ああ、誰か来てしまったようだ。俺は、別にこのまま……あなたの濡れたここを舌で舐めてもいいけど。あなたの蜜は、甘いから」

 あたしの唇と胸をなぶった濡れた唇が、悩ましく思える動きを見せ、ショーツの上を、課長の指が行ったり来たりする。

 想像してぞくぞくしてしまったけれど、人がいるなら無理だ。しかもこんなところでそんなことは……。
 
「人がいないところ行きたい……」

「やめてとは言わないんだ?」

 課長が艶めいた顔で笑う。

「今夜は……課長にいっぱい愛されたい……」

 口からぽろりと出た言葉。

 今夜が最後だと思ったら、余計課長の熱と匂いを感じたい。
 あたしの身体に、課長を刻みつけて欲しい。

 一度こうして課長の匂いを纏ってしまったら、離れたくない――。
 
「だめ?」

 見上げると、課長は眉間に皺を刻み、苦しげな顔をした。

「俺を拒んで先に牽制していたくせに、そんな可愛いこと言って、俺をどうしたいんだよ?」

 笑う課長は、人声を背にしてあたしをそのまま両腕で抱き上げた。

「な……」

「暴れないで。お姫様だっこと言うんだろう? この名前通り、あなたをこう抱き上げてみたかった」

「……っ」

 まるで、あたしがお姫様と言うかのようで、ドキドキが止まらない。

 課長のがあたしに耳打ちした。

「いいよ、愛してあげる。そんなに可愛いこと言うのなら、あなたが嫌って言ってもやめない。いつもとはなにか違うあなたに騙されたふりをして、しっかり煽られてあげる」

 少し黄色い電灯が照らし出す課長は、どこまでも艶めいていて。

 課長に触れたい。
 課長に触れられたい。

 課長の匂いと熱に、衝動がとまらない。

 ……たとえ課長の目に、いつもとは違う、おかしなあたしとして映っても、今のあたしは課長から離れたくないと切実だから。

 課長はそのまま歩き、エレベーターに乗った。押した階数は、部屋のものではない。

「この棟の上に、展望台があるらしい。部屋はご飯の支度をされている最中だろうから、すぐにあなたを愛せない。だから、展望台に行こう?」

「か、ちょ……」

「だけどその呼び方はやめてね」

「う……ん、朱羽……」

 恥ずかしいというのに、課長から離れたくない。 
 課長の首に手をかけ、課長の胸板に顔をつける。

 ドクドクと、早い鼓動は、ねぇ……課長のものなの?

「今日は嵐だから、ひともいない。音が怖く思えないくらい、たっぷり愛してあげる。可愛いお姫様の、お望み通り」

 甘く囁かれて、自然と唇が重なった。

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