転生しました。

さきくさゆり

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第三章

おっかねぇ……

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 広場に足を踏み入れて真ん中に向かって歩く。
 先生は俺の右後ろから黙ってついてきた。
 歩くこと数秒。
 立ち止まって少し先に視線を向けると、赤白く光るエフェクト。

 赤白く?

「あれ?なんかエフェクトが……」

 いままでのヨンの迷宮内のエフェクトは青白い光だった。
 それが赤白い光。
 なんか……やばい?
 そして光が収まる。

「え?なんもいねえ?」
「のよ……後ろだ!」

 先生の声にパッと後ろを振り返ると、そこにいたのは人型のモンスター。
 仮面をつけていて、俺より少し大きいくらい。
 だが、両手で身の丈ほどのデッカイカマを振りかぶっていた。

 咄嗟にその場でカマ野郎の右側に飛んだが、少し遅かったらしい。
 回避が間に合わず、左腕を切られた。
 二の腕の真ん中から下がどっか飛んでった。

「いってぇ…なっ!」

 俺は飛びながら異空間魔法術を発動……しない?!。
 んん?!
 なんで?!
 もう一度やったがダメだ。
 感覚としては……。

「先生!こいつ魔法を無効化するっぽいです!」

 俺と反対の方向に飛んだ先生に向かって叫ぶ。

「なんだと?!っというかパスト!その腕は切られたのか?!」
「すいやせん!回避間に合わなかっです!とりあえず大丈夫なんで物理的にボコりますか?!」

 距離を取りつつ、先生に指示を仰ぐが、先生は何も言ってこない。
 どうした?
 ってうわ?!

 カマ野郎は俺に向かって、またカマを振り上げながら走ってきた。

「先生?!聞いてます?!」

 おや?
 先生の様子が……なんか先生の周りだけ少しゆらぎが。
 あれだ、前世で見た陽炎。
 陽炎……陽炎?!

「人の生徒に……何をしてくれる!!」

 気がつけば、カマ野郎の背後から先生が現れ、カマ野郎が左側に吹っ飛んでいった。
 現れた先生は左足を振り切った状態で空中に浮いていた。
 体制を見るに飛び回し蹴りを撃ち込んだらしい。
 着地と同時に俺に走り寄ってきた。

「パスト!腕は?!」
「え?あー腕は大丈夫です。治りますから。それよりアイツ」

 そう言って、カマ野郎を指差す。
 ダメージが通ってるんだか分からんが、すでに起き上がって臨戦態勢と言わんばかりに前傾姿勢だ。

「……くっ……すぐ終わらせるから待ってろ!」
「イヤだから大丈夫……」

 目眩がする……。
 血を止めるの忘れてたわ……。
 パッとスラックスのベルトを取って左腕に巻く。

「おし。先生、少しだけ時間稼いでください」
「何を言ってる?!そこで待っていろ!」
「あ、いや時間かければ治るんで。治したら俺もやります」
「あーー!もう黙れ!とにかく座っていろ!いいな!」

 むりやり俺を座らせて、先生はカマ野郎に突っ込んで行った。
 同時にカマ野郎も動き出し、激突音。
 カマ野郎の振りかぶっていたカマの柄を左腕で受け止めながら、右足で下段回し蹴りを放った音である。

「うわぁ……」

 左足を潰した先生は、カマを受け止めていた左腕を回して脇でカマの柄を挟み、左足で腹を横蹴り。
 カマ野郎はまた吹っ飛んていく。
 カマは先生が脇に挟んだままだ。

「強え……」

 っと見惚れてる場合じゃなかった。
 遡行魔法術で腕を治しはじめた。
 その間も先生の攻撃は続く。

 脇に挟んだままだったカマを後ろに放り投げ、起き上がろうとしたカマ野郎の顔面に飛び膝蹴り。
 しかも、両手でカマ野郎の後頭部を抱えての飛び膝蹴り。
 まあその……仮面と共に顔面がグチャグチャである。
 もとの顔がわからない。

 あ、腕治った。
 ふいー痛かったぁー。

 腕を回して確認しながら、先生の方を見ると、マウントポジションでタコ殴りにしてた。
 三十秒くらいたつと先生が止まる。
 と、カマ野郎は光った後消えた。

 立ち上がる先生に近づいて話しかけた。

「お疲れ様でーす。にしても先生強すぎというか容赦が無いというか……うん、怖いですね」
「ああ、ついな。ん?おまえ腕が!」

 俺の治った左腕を見た先生が驚愕する。

「ああ、だから大丈夫なんですって。治りますから」
「…………」
「先生?」

 なぜ黙る。
 まいーや……ん?
 さっきのエフェクトが出てたところに……箱?

「先生、なんか出てますよ?」
「……あ、ああ」

 二人で近づくと、それは宝箱だった。
 高さは俺の脛くらい、幅は縦横が俺の肩幅くらい。
 まあ割りと一般的なダンボールサイズの宝箱だな。
 一応罠らしきものは無さそうだ。

「先生開けてくださいね」

 俺は五歩ほど後ろに離れながら、そう言った。

「おい、なぜ私が開けると決めつける。というかなぜ離れる?」
「そりゃ先生があのボスモンスター倒したからです。離れてるのは、罠らしきものは無さそうですが、万が一を考えてのことです」
「……まあそれもそうだな」

 おし、納得したな。

「開けるぞ」

 そう言って先生が宝箱を開けると中から……別に何も出ることはなく、普通に開いた。

「なんか入ってますかー?」
「ああ。……なんだこれ?」

 そう言って先生が箱から出したのは……眼鏡?
 まあ何もないみたいなので、俺も近づく。

「お前わかるか?」
「まあ眼鏡ですかね。貸してもらえます?」

 先生から眼鏡を受け取ってかけようとすると、宝箱に紙束が入ってることに気づいた。
 取り出して読んでみる。
 なになに?

『この手紙を読んでいるということは、ナイトメアを倒したということだろう。実はあのモンスターは非常に強力な魔……

 読み飛ばそ。
 だってこの紙束十枚くらいあるんだぜ。
 えーと……えーと……あ、ここだな。

『この隠しステージでドロップしたこのアイテムは、私が作った素晴らしいアイテムの一つです。もし近くに人がいるなら、ぜひ眼鏡を通して見てください。』

 ふむ。
 スカウター的なやつかね。

「先生、ちょっとそこに立ってもらえますか?」

 掛けて、先生の方を見る。

「……」
「どうした?」

『どうですか?最高でしょ?』

 俺は眼鏡を取って地面に叩きつけながら叫んだ。

「くだらねえもん作んな!!!」
「お、おいパスト!なんてことをしてるんだ!貴重な物なんだぞ!」

 そう言って転がった眼鏡を先生が拾う。

「ならかけて俺の方見てくださいよ」

 先生は眼鏡をかけて俺を見た瞬間、眼鏡を俺に向かって投げてきた。

 まあ端的に言うと、透ける眼鏡でした。
 なお、貴重な物ではあるそうなので一応回収はしておいた。
 つか、結構な勢いで叩きつけたのに壊れないって、それだけで相当な物だよな。


 お、帰還陣出ましたよ!早く帰りましょう!」
「…………」

 無言怖えよ……。
 無言ながらもついてくるからいいけど。
 俺達は帰還陣に乗った。


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