転生しました。

さきくさゆり

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第三章

愛!

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 出てくる魔物という魔物を文字通り蹴散らしながら全力疾走。
 いやぁ余裕ですわ。
 階層ボスはやっぱりポップと同時に拳で粉砕。
 すれ違った奴らの顔をチラ見すると、まさに唖然と言った顔で俺を見ていた。

 そんなこんなで一気に五階層まで突っ切ってから止まる。

「ふいぃー。こっからは気をつけないとな」
「……パスト」

 あ、先生だ。
 やっぱり先生はついてきてたか。

「流石です先生!」
「お前は……ハァもういい。何を言っても無駄だな」
「ひっどーい先生。でも否定できないー」
「とにかくだ。二人は置いてきたから私と二人でだが文句はあるまいな?」
「ないでっす」

 あいつらがいない!
 先生はただの監視役だから無視しておけば実質ソロ活動だ。
 むしろ最高ですわ。

「んじゃ俺は勝手に行くんで。先生は後ろからついてきてくださいねー」
「わかった」


 *****


 いやぁ地味に強かったぜ一五階層ボス。
 戦闘中の魔法術は身体強化のみって縛りが無ければ余裕なんだがなぁ。

 今は飯休憩中だ。
 先生と二人で俺特製ドラゴンサンドを食ってる。

 今の一五階層は草原ステージで、どういう仕組みか、上には青い空が広がっていた。
 迷路の壁は生け垣でできていて、どうも破壊不能らしく、殴っても蹴ってもびくともしなかった。
 そして、他の階層と違って、生け垣が天井にくっついていないので、上がガラ空きじゃーんと思ってジャンプして生け垣の上に飛び乗ろうとした。
 が、足がつく瞬間にそこに穴ができて落ちた。
 その後、蔓だとかでもとの場所に引きずり出された。
 空が飛べれば迷路なんぞ無視して突っ切れるかもしれないな。

 もう一度言おうか。
 ホントどういう仕組みなんだこの迷宮。


「なぁパスト」
「はいなんでしょう」
「折角だから聞きたいんだが、お前はなんでチェニック達を嫌うんだ?」
「ハーレム鈍感男ってイライラしません?」

 覚えてねえけど前世の影響らしいが、そんなことは言えないので黙っておく。
 間違っちゃいねぇしな。

「まあ気持ちはわかるが……」

 わかるんかい。

「そういえば夏休みは実家には帰ったか?確か妹さんも中等学園にいるんだろ?」

 唐突だな。

「あれ?妹のこと言いましたっけ」
「中等と高等で分かれてはいるが、目立つ者は高等の方でも話題になるんだ。教師は中等でも教えてる者がいるからな」
「へぇー」
「特にオリガなんて姓は珍しいからな。かなり有名だぞ」

 うわ、なんか恥ずかしい!
 身内が目立つの恥ずかしい!
 ほとんど身内じゃないけど恥ずかしい!

「それで、妹さんとは帰らなかったのか?」
「いや帰るとか以前に、生まれてから一度も会話したことないですから」
「…………は?」
「いや俺、妹とは会話したことないです」
「そ、そんなことは、ないだ…ろう?」
「あるんですって。親から関わるなって言われてたんですもん。あ、親とももう何年も話してないです。ぶっちゃけ顔もほとんど忘れてます」

 そう言うと、まさに絶句と言った顔をしていた。
 こう、口は半開きで目を見開いて焦点が合ってない感じで顔色は真っ青。

「大丈夫ですか?」
「な、なんで……」
「はい?」
「なんでそんな平気な顔でいられるんだ?」

 ……前世の記憶があるんですなんて言ったらどうなるんだろ。

「いやいや。平気な訳がないでしょ。幼少期、親の愛情どころか村八分状態で過ごしたんですよ?もう、人間不信通り越してますよ」

 まあ、俺の子供が成人男性と同じ行動していたら……。
 いや、流石に幼少期にほっぽり出すことはしないな、うん。

「……そうか。それでこんな風に。ならば教師としてここは……」

 なんかブツブツ言ってるな。
 なんだ?

「パスト!」
「は、はい!」
「お前は愛と言うものを知らなすぎている」

 ……なんでいきなりそんな話に?

「先生、理解が追いつきません」
「だから!わ、私がお前に愛情と言うものを教えてやろう!」
 んー?この教師は今なんつったー?

「先生!もう一度お願いします!」
「お前に愛を教えてやろうと言ったのだ!」

 うん、聞き間違えではないな。

「なんでそんな話になってるんですか?」

 俺はできるだけ冷静になって話を進めることにした。

「お前は他人の愛情を知らなすぎている!」

 それは聞いた。

「だからこんな風に育ってしまったのだ!今ならまだ間に合う!」

 だからってなんだ、だからって。

「先生、別に知らないわけじゃないんですよ」

 いや、忘れてるから知らないっちゃあ知らないのか。

「安心しろ。これでも料理以外の家事全般は得意だからな」
「なんで家事の話?!つか料理以外なの?!」
「いや、愛情を伝えるならやはり同じ屋根の下で暮らすのが一番ではないか。幸い私は一人暮らしだから、問題ない!」

 なんでだ?!
 なんで、先生と暮らすことになるんだ?!

「あ、ほら教師と生徒が一緒に暮らすのはどうかなーと思うんですが……」
「安心しろ。私が学長に掛け合うから問題はない!」
「いや、俺はもう家があるんで、引っ越しとか面倒だなぁなんて」
「ならば私がパストの家に行こう。それなら問題ない!」
「アオが……」
「問題ない!」

 ついに解決策すら言わなくなった。

 つか、俺が周りと馴染めないのは、年齢のせいもあるからな。
 俺の精神年齢は生まれた時点で成人済みだ。
 そして、それから十五年経ってるわけだ。
 三十路のおっさんと男子高校生が、仲良くできてたら、それはなかなかに珍しいことだと思うんですわ。
 三十路のおっさんと女子高生が、仲良くできてたら、おそらく桜マークが追っかけてくるだろうな。

 しかも、精神年齢が微妙に肉体年齢に引っ張られてるらしく、考え方はガキ臭いことばっかり。
 もう、チグハグなことこの上ない。

 ……俺、結構ぶっ壊れてるんじゃないか?
 理解できるだけマシか……。

 と、とにかく!
 なんでこんな考えに至ったのかわからんが先生と同棲なんてありえねえ。

「お断りします!」

 うげっ。
 断ると、先生はものすごく悲しそうな顔をしてしまった。
 若干涙目である。

「も、もしかして……や、やっぱりその……私なんかと暮らすのは……嫌か?家族ではないし、変わりにはなれんが……その……ちゃんと愛情を教えてやれるぞ?」

 うん、あのさ。
 もう一度言おうか。
 俺の精神年齢は三十路のおっさんなんだわ。
 先生の年齢は……あー……もうすぐアラサーと言われる部類に入る。
 そして、美人。

 わかるか?
 美人で同い年くらいの女性が、顔を真っ赤にし、涙目で、愛情を教えてやるなんて言ってるわけだ。

「お願いします」

 断れないっす。

 先生は物凄く嬉しそうな顔で俺の手を握ってきた。
 俺の両手を先生の両手が包み込んでいる。
 そして、俺の目をまっすぐ見て、

「任せてくれ!私がお前を愛してやるぞ!」

 なんて言うもんだから、なんかこう、気分はいいよね。
 家族としてっていうのは分かってるが。

★★★★★

先生の名前が出てきてませんが、理由はパストが知らないというか覚えてないからです。
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