転生しました。

さきくさゆり

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第三章

舐め腐りおって……(クーテ先生視点)

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「あのバカはなんてことをしでかしてくれたんだ……」


 長期休暇になり、学内での仕事を終え、実家でのんびり休暇を楽しみ、また学内での仕事をして、長期休暇を終えた。

 そして新学期が始まった初日の放課後。
 私は部屋で頭を抱えていた。
 その私の前にはとある生徒の長期休暇中の宿題が並んでいる。

 とある生徒の名はパスト=オリガ。

 確かに成績自体はいい。
 授業態度も確かにいい。
 だが……。

 奴はあろうことか、すべての宿題に名前だけを書いて提出してきたのだ。
 全て白紙という、舐め腐った宿題を見た先生方は激怒した。
 だが、それだけならパストに全員で宿題を倍にして提出させればいいのだが、まさか全く同じことをしてくる生徒がもう一人、さらに宿題自体を出すことすらしなかった生徒まで出てくるとは思わなかった。
 しかも全員が私のクラスから出てきた。

 その結果、先生方の怒りの矛先は私にまで向くことになったのだ。

「私か?私が全て悪いのか?そんな……そんなことは……ないだろう……そうだ……私は悪くないはずだ……」

 次の日の教員会議で、今回のことを全て私に一任という名の丸投げをしたあのハゲやデブはどうでもいいがこの私に迷惑をかけたんだ。
 少しキツいお仕置きがに合ってもらおう……。


 まず私は学園長に書類を提出し、判を押させた。
 次に学園長に書類を提出し、判を押させた。
 最後に学園長に書類を提出し、判を押させた。

 チェニック達は適当に言いくるめれば問題無いだろうが……パストはどうせろくな事を言わないだろう。
 無理矢理連れていけばいい。

「フフフフフフフフ」


 予想通り、奴は適当なことを言い放ちやがった。
 難しくて答えられなかった?
 精一杯の誠意?

 一応反省しているようなら、宿題を一週間以内に提出すれば、許してやらんことも無かったが……。
 やはり痛い目にあってもらおうか。
 勿論一人ではなくチェニック達も同様にな。

 トイレ掃除?何を甘いことを。
 貴様がそういった作業は得意だということを私が知らぬとでも思ったか。

 次の日。

「先生、遠征に同居人連れて行ってもいいですか?」
「同居人?そういえば長期休暇の間に寮を抜けたようだが、その同居人とやらのためか?」
「まあ、弟子ってやつです。あと俺は保護者でもあるんで、一人で置いておくの不安なんですよ」

 なん……だと……!
 こいつに……この男に……!

「お前にもそんな奴がいたんだな」

 私は感激だよ……。
 弟子を持てる器があっただなんて……。
 保護者としての責任感を持っているなんて……。

 私は怪訝な顔で去っていくパストの後ろ姿を見て、思わず涙ぐんでしまった。


 *****


 やはりこいつは少々、いやかなり頭がおかしいのではないかと思わざるをえない。
 転移魔法陣の部屋に皆を連れて入った……と思ったらパストは床に這いつくばってブツブツ言いながら紙に何やら書き始めたのだ。
 どうもアオちゃんと言うパストの弟子とやらは、この状況に慣れているのか特に気にせずに、リーシャと何やら仲良く話している。

 とりあえず頭を叩いてやめさせておく。

 転移したあと、学園長から渡されている書類を持って、ラルクエンの転移魔法陣受付センターに行く。
 帰ってくると丁度パストがチェニックを蹴り飛ばしたところだった。
 何をしとるか……。


 とりあえず宿に荷物を置いてからは自由行動にしたが、チェニックとリーシャが私の部屋に来た。
 知らないところなので私に案内してほしいと思ったらしい。
 可愛い生徒の頼みとあらば、断る訳にはいかないな。
 パストのやつはすでに宿からいなくなっていた。

 三人で歩きながら街の話をしていると、前からパストが歩いてきた。
 がどうもコソコソと動いている。
 あ、今私のことを見たが目を逸らしたな。
 ふむ……。

「おいパスト、どこに行く」
「図書館です。あとなんで襟首掴んでるんですか?首しまっちゃいますというか若干しまってます」
「そりゃあ貴様が無視して逃げようとするからだろう?今も動かずにいればしまることはない」
「無視してませんけど?!」

 確かに頭はペコッと下げたかもしれん。
 だが教師に対し、この状況でそれだけというのはいささか礼を欠いているとは思わんのか。

「大体貴様は一人で何処に行く。怪しすぎるぞ」
「図書館に行くってさっき言いましたよね。アオは露店巡り、俺は明日の迷宮のこととか自由都市のこととか調べものがあるんです」
「え、迷宮のことなんか先生に聞けばいいじゃないか」

 チェニックが私の後ろからパストに話しかけた。

「聞けば教えてくれるだろうけど、聞くより調べたほうが覚えるだろうが。それに先生が知らんことだってあるかも知れねえだろ。黙ってろハーレム馬鹿」

 ……言ってることはなかなか立派なんだが……。

「お前口悪すぎないか?」

 同じクラスの仲間だろうに……。

「先生、生徒に向かって貴様と言う言葉を使う先生も相当口が悪いと思いますけど」

 それは知らんな。

「まあそういうわけで、俺は自分のための調べものがあるのでそろそろ行かせてもらえないでしょうか」
「…………逃げるなよ?」
「逃げませんよ!信用なさすぎだろ!」
「もともと夏休みの宿題をやらなかった貴様だ。信用なんてあるわけがないだろ」

 全く……。

 おや、あそこにいるのはアオちゃんか?
 あれは……パベックか。

 せっかくなので、声をかけ、皆にパベックを奢ってあげることにした。
 私も好きなのだ。

 パベックとはモチモチのパンでブマルと野菜を挟んでタレをかけた食べ物だ。
 ラルクエンの露天では色々なパベックを売っていて、私はここのパベックがお気に入りなのだ。
 三人は大喜びで食べていた。

 その後、しばらく四人で色々回っていると、チェニックとリーシャは先に宿に帰った。
 アオちゃんは私が少し飲むと言うと、付き合うと言うので、せっかくなのでパストのことを少し聞くことにした。


 アオちゃんは相当パストのことが、というかパストの作る料理が好きなようだ。
 私はあまり料理が得意ではないので、羨ましい。
 アオちゃん曰く、毎日が外食、だそうだ。
 そして日も完全に落ちてあまりガラのいいとは言えない輩が出始めてきたので、私はアオちゃん宿に帰った。


 私が宿のベッドを整えながら明日のことを考えていると、部屋のドアが乱暴にノックされた。
 こんな夜更けに誰だ……。

「はい、どちら様?」
「リーシャとアオちゃんです!!」

 ドア越しにリーシャの叫び声が響く。
 慌ててドアを開けると、二人は手を繋ぎながらリーシャは大号泣、アオちゃんも少し泣きそうな顔で立っていた。

「ど、どうした?!何があった?!」
「し、師匠が……」

 アオちゃんはなんとか言葉を続けようとするが、うまく声が出せないようだ。
 リーシャの方を見て促すと、片手で涙を拭って予想外の事を言った。

「パストが酔っ払ったままゼロの塔に一人で突っ込んで行っちゃったあ!先生どうしよおお!!パスト死んじゃうううう!!!」

 …………。

「…………ハアアアアアアアアアア????!!!!」
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