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第四章
ついに……この時が……
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新学期……というか新学年。
いやあ無事進級できましたよ。
別に成績が悪かったとかはないけど、なんかこう、ちょっとだけ不安にはなるんだよね。
あれは新入生かな。
希望に満ち溢れているねぇ。
そして約三名の見覚えのある奴らがこっちを向いているねぇ。
しかも一名はめっちゃ手を振ってるねぇ。
更に後ろの集団……まあ多分護衛もこっちを見てるねぇ。
「おーい!パスト!」
無視したい!
すっごく無視したい!
でも無理だろうなぁ……。
だってこっちに走ってきてるもの。
「パスト、手を振ってるんだからこっちに来てよ」
「あー王子様。そんなにお……私達は仲が良かったでしょうか」
うん、ニーグン王子様でござんした。
「えー俺達友達だろー?」
うわ胡散臭え笑い。
「つかもしかして新入生なんですか?」
「そうだよー。っていうかなんで敬語?」
それはね。
後ろの赤青コンビがすっごい形相で睨んでるからだよ?
「まあいいや。とりあえずよろしく先輩」
「あーはいはいよろしくよろしく」
もう面倒くせぇので適当に返事して俺はさっさと逃げた。
チラッと振り返ると、護衛に囲まれながら去って行った。
ちなみに王女様も最初はあんな感じで護衛とかが大量だったけど、今は少し遠巻きからだったり、ぱっと見分からないように生徒に化けていたりしている。
まあ王女様が嫌がったとかなんとか。
そんなんでいいのか王族よ。
*****
進級して約一ヶ月。
新しい教室に慣れ始めた頃、家に一通の手紙が届いた。
「つ……ついに……完成したというのか……」
「何がですか?」
「ヴァ……グロリアだ。というわけで早速取ってくる」
「え?今からですか?今日学園じゃ……」
「んなもん後じゃ。俺は早く弾きたいの」
「はあ。まあその辺は師匠の勝手にすればいいですけど、大師匠にはどう言うつもりですか?」
ぐっ……。
そういえば先生って先生だったわ。
進級して担任から外れたとはいえ、学園をサボればバレるか……。
「仕方ねぇ……。明日にするか……」
翌日、休暇届を出した俺はダガンバ村へと出発した。
アオはいない。
誘いはしたけど、「あ、私仕事あるんで。お一人でどうぞ。あ、なんか美味しいものあったら買ってきてくださいね」とけんもほろろに断られた。
ちなみにアオは定食屋で働いていて、結構頑張っている。
なので久しぶりの一人。
そう思っていました。
「……なんでいるんですか?」
「心配だからに決まっているだろう」
ハハハ。
先生が来たよ……。
心配ってなんだよ……。
「また去年のように酔いつぶれて何かあったら事だからな」
「もう担任じゃないんですから大じ……なんでもないです」
そんな睨まんでくださいよ……。
まあさ。
先生が暮らし始めてから、外で馬鹿飲みとか出来なくなったし?
せっかく久しぶりのお一人様だし?
飲みまくったろうとか考えてたわけだが、先読みされていたようだ。
「そら行くぞ。道案内は頼んだからな」
「いや面倒なんでこれ乗りますよ」
よいしょっ。
「……なんだこれは」
「バイクです」
車は酔うんだ。
マジで揺れをなんとかしたいな。
「先生は俺の後ろでしっかり捕まっててくださいねー」
「あ、ああ……」
二人で跨る。
先生は俺の腰に手を回し、肩口から顔を出してきた。
「これが走るのか?まあなんとなくどんな風に走るのかはわかるが」
ほぉ?
そうかそうか。
ならばこの速さに耐えらるかな?と言いたいところだが、俺は先生のりアクションはしょぼいと思っている。
前にアオを乗せたとき、ぶっちゃけ全力で走った方が速いし、なら馬でもよくね?と言っていた。
実際アオは大した感動もなく、ふーん……で?って目でバイクを見ていた。
ああそうそう。
車にアオを乗せたらゲーゲー吐いていたよ。
「どうしたパスト。行かないのか?」
「……あ、ああすいません。ちょいと考え事をね。んじゃ行きますよー。もう一度言いますがしっかり捕まっていてくださいねー」
まあ落ちても死ぬことは無いだろうし、先生なら怪我一つ無く着地しそうだが。
「やはりパストの髪はいい肌触りだ」
なんか落ち着かねー。
まいーや。
しゅっぱーつ。
俺はアクセル全開にして、ダガンバ村へと向かっ
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
発進して数秒後、先生はなんと両足を地面につけて、無理やりバイクを止めた。
もう少しでほっぽり出されるところだった……。
「……先生?」
「お、おいパスト!なんなんだ?!速いぞ!揺れるぞ!ここここ怖すぎるじゃないか!!」
「なっ?!」
首だけで後ろを振り返るとありえないことが起きていた。
あ、あの先生が……涙目になってるだと?!
「先生落ち着いてください」
「いやだから風が当たっていきなりすごい速さで足が浮いてガーーーーって!一体どうなっているんだ!!」
どうなっているんだはこっちのセリフだよ!
語彙力低下しすぎだろ!!
「と、ととととにかく私はどうすれば!地に足が足が!」
「落ち着けえ!」
俺は振り返って先生の顔を両手で挟んでみた。
「先生。深呼吸してください」
目をキョロキョロと不自然に動かした後、言われた通り深呼吸をする先生。
顔を挟んでいるから少しやり辛そうだ。
「落ち着きました?」
コクコクと目を見開いたまま首を縦に振る。
「はぁ……。すいませんでした先生。降りれますか?」
今度はブンブンと首を横に振る。
俺は先生の顔から手を離し、今度は先生の脇に手を入れて持ち上げる。
どうも足がすくんで動けないらしいのでな。
バイクから下ろすと、先生は逆正座で地面にへたり込んだ。
「……大丈夫ですか先生」
「少しだけ……待ってくれ……」
少し涙目になりながら、蹲る先生はなんというか……。
「速かった……」
こんな先生初めて見た。
いやあ無事進級できましたよ。
別に成績が悪かったとかはないけど、なんかこう、ちょっとだけ不安にはなるんだよね。
あれは新入生かな。
希望に満ち溢れているねぇ。
そして約三名の見覚えのある奴らがこっちを向いているねぇ。
しかも一名はめっちゃ手を振ってるねぇ。
更に後ろの集団……まあ多分護衛もこっちを見てるねぇ。
「おーい!パスト!」
無視したい!
すっごく無視したい!
でも無理だろうなぁ……。
だってこっちに走ってきてるもの。
「パスト、手を振ってるんだからこっちに来てよ」
「あー王子様。そんなにお……私達は仲が良かったでしょうか」
うん、ニーグン王子様でござんした。
「えー俺達友達だろー?」
うわ胡散臭え笑い。
「つかもしかして新入生なんですか?」
「そうだよー。っていうかなんで敬語?」
それはね。
後ろの赤青コンビがすっごい形相で睨んでるからだよ?
「まあいいや。とりあえずよろしく先輩」
「あーはいはいよろしくよろしく」
もう面倒くせぇので適当に返事して俺はさっさと逃げた。
チラッと振り返ると、護衛に囲まれながら去って行った。
ちなみに王女様も最初はあんな感じで護衛とかが大量だったけど、今は少し遠巻きからだったり、ぱっと見分からないように生徒に化けていたりしている。
まあ王女様が嫌がったとかなんとか。
そんなんでいいのか王族よ。
*****
進級して約一ヶ月。
新しい教室に慣れ始めた頃、家に一通の手紙が届いた。
「つ……ついに……完成したというのか……」
「何がですか?」
「ヴァ……グロリアだ。というわけで早速取ってくる」
「え?今からですか?今日学園じゃ……」
「んなもん後じゃ。俺は早く弾きたいの」
「はあ。まあその辺は師匠の勝手にすればいいですけど、大師匠にはどう言うつもりですか?」
ぐっ……。
そういえば先生って先生だったわ。
進級して担任から外れたとはいえ、学園をサボればバレるか……。
「仕方ねぇ……。明日にするか……」
翌日、休暇届を出した俺はダガンバ村へと出発した。
アオはいない。
誘いはしたけど、「あ、私仕事あるんで。お一人でどうぞ。あ、なんか美味しいものあったら買ってきてくださいね」とけんもほろろに断られた。
ちなみにアオは定食屋で働いていて、結構頑張っている。
なので久しぶりの一人。
そう思っていました。
「……なんでいるんですか?」
「心配だからに決まっているだろう」
ハハハ。
先生が来たよ……。
心配ってなんだよ……。
「また去年のように酔いつぶれて何かあったら事だからな」
「もう担任じゃないんですから大じ……なんでもないです」
そんな睨まんでくださいよ……。
まあさ。
先生が暮らし始めてから、外で馬鹿飲みとか出来なくなったし?
せっかく久しぶりのお一人様だし?
飲みまくったろうとか考えてたわけだが、先読みされていたようだ。
「そら行くぞ。道案内は頼んだからな」
「いや面倒なんでこれ乗りますよ」
よいしょっ。
「……なんだこれは」
「バイクです」
車は酔うんだ。
マジで揺れをなんとかしたいな。
「先生は俺の後ろでしっかり捕まっててくださいねー」
「あ、ああ……」
二人で跨る。
先生は俺の腰に手を回し、肩口から顔を出してきた。
「これが走るのか?まあなんとなくどんな風に走るのかはわかるが」
ほぉ?
そうかそうか。
ならばこの速さに耐えらるかな?と言いたいところだが、俺は先生のりアクションはしょぼいと思っている。
前にアオを乗せたとき、ぶっちゃけ全力で走った方が速いし、なら馬でもよくね?と言っていた。
実際アオは大した感動もなく、ふーん……で?って目でバイクを見ていた。
ああそうそう。
車にアオを乗せたらゲーゲー吐いていたよ。
「どうしたパスト。行かないのか?」
「……あ、ああすいません。ちょいと考え事をね。んじゃ行きますよー。もう一度言いますがしっかり捕まっていてくださいねー」
まあ落ちても死ぬことは無いだろうし、先生なら怪我一つ無く着地しそうだが。
「やはりパストの髪はいい肌触りだ」
なんか落ち着かねー。
まいーや。
しゅっぱーつ。
俺はアクセル全開にして、ダガンバ村へと向かっ
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
発進して数秒後、先生はなんと両足を地面につけて、無理やりバイクを止めた。
もう少しでほっぽり出されるところだった……。
「……先生?」
「お、おいパスト!なんなんだ?!速いぞ!揺れるぞ!ここここ怖すぎるじゃないか!!」
「なっ?!」
首だけで後ろを振り返るとありえないことが起きていた。
あ、あの先生が……涙目になってるだと?!
「先生落ち着いてください」
「いやだから風が当たっていきなりすごい速さで足が浮いてガーーーーって!一体どうなっているんだ!!」
どうなっているんだはこっちのセリフだよ!
語彙力低下しすぎだろ!!
「と、ととととにかく私はどうすれば!地に足が足が!」
「落ち着けえ!」
俺は振り返って先生の顔を両手で挟んでみた。
「先生。深呼吸してください」
目をキョロキョロと不自然に動かした後、言われた通り深呼吸をする先生。
顔を挟んでいるから少しやり辛そうだ。
「落ち着きました?」
コクコクと目を見開いたまま首を縦に振る。
「はぁ……。すいませんでした先生。降りれますか?」
今度はブンブンと首を横に振る。
俺は先生の顔から手を離し、今度は先生の脇に手を入れて持ち上げる。
どうも足がすくんで動けないらしいのでな。
バイクから下ろすと、先生は逆正座で地面にへたり込んだ。
「……大丈夫ですか先生」
「少しだけ……待ってくれ……」
少し涙目になりながら、蹲る先生はなんというか……。
「速かった……」
こんな先生初めて見た。
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