69 / 103
第四章
朝チュン
しおりを挟む
結局歩いて三日後の夕方、俺達は村に辿り着いた。
村はまあ……何も変わってないな。
普通だわ。
「私は少し村長に挨拶してくる。宿はさっき行っていたところでいいんだな?」
「ですね。俺は宿の下の飯屋にいるんで終わったら来てください」
「了解した」
これは道中聞いたことだ。
去年俺達がやらされた遠征試験。
実はほぼヤラセなんだそうだ。
例えば俺達のとこの場合。
ます先生方が下見をする。
理由は危険生物がいないかどうか調べるためだ。
ヤバイのがいたらそこは止めになる。
一応先生方が討伐したり追い払ったりはするけど、その生物のテリトリーだとしたら、どうしたって戻ってくるから、危険に変わりはない。
そして村長達と結託して、俺達を騙すというわけだ。
討伐予定の魔物に関しては、基本的には先生方がテイムした魔物を討伐することになるようにできている。
討伐予定の魔物が強力な魔物に設定されている場合は、実は見間違いだったとかそういった感じで無理矢理お茶を濁すんだとさ。
今思うと、村長は引いてたというよりも、かなり嘘だろ?って顔だった気もする。
そりゃそうだな。
いるはずのないオーガの生首持ってきたんだから。
ちなみにこのことは、二年や三年になれば結構な人数の生徒が知ることになるが、決して後輩にこのことをバラしてはならないという決まりがある。
もしバレたら連帯責任で全学年留年させられるという謎の重さの罰がくだされることになっている。
まあというわけで、先生と村長は顔見知りということで、せっかくだから挨拶しに行くそうだ。
宿屋でおばちゃんに二部屋取ってもらい、レデンに会う&夕飯のため階下に降りた。
扉を開けながら声を出す。
「おーっす。やってるー?」
「おーパストか!」
「おお!久しぶりではないか!」
「おおお?ヤクーさん?お久しぶりです」
『お』のオンパレードの再開である。
レデンの店に行くと、まさかのヤクーさん。
「丁度いいところに来たな。ジョッキサービスするからお前もヤクーさんの話聞いてやってくれよ」
「は?」
どゆこと?
「何かあったんですか?女絡み?」
まあ冗談だけ
「……正解だ」
…………。
「え?」
「実は一週間前、六年ぶりに姉たちが帰ってきてしまったんだ……」
「ヤクーさん、お姉さんがいたんですか」
「私の姉たちは本当に怖いんだ……。今回も帰ってきたと思ったら、私を無理矢理狩りに連れ出したり、久しぶりに特訓するぞとか……。昔からそうなんだ……。いつもいつも私を特訓と称して痛めつけてくる……」
うわぁ、あのヤクーさんが震えてるよ。
半泣きだよ。
漢泣きだよ。
理由は凄まじく似合わないけど。
「ヤクーさん、姉とはそういうものですよ。諦めるしかないんです。それにお姉さん達は里帰りなんでしょ?ならもう少ししたらまた平穏な毎日が戻ってきますよ。月並みな言い方で悪いですけど、止まない雨は無いって言います。それまではこうやってレデンに愚痴ったりして耐えましょうよ」
「……パストも姉を見ればわかるはずだ。姉をは耐える耐えないの次元じゃないんだ。でもこうやって愚痴の一つでも零さないと、本当にやっていけなくなるような気がして……。すまないな。ただ同情して欲しいために愚痴を零してしまって」
こんな沈んだヤクーさん初めて見た。
初めてってほど何度も見てたわけじゃないけど。
それからしばらく、ヤクーさんによる幼少期から現在までに至る姉達による特訓やら試練やらと称した虐め話を聞くことになった。
中でも度胸訓練である、崖からバンジージャンプは、聞くだけでタマヒュンものだった。
バンジージャンプって下にクッションとか池とか川とか普通あるだろ?
無いんだぜ?
ただの崖から、ただの紐でジャンプさせられるという度胸訓練。
殺人事件だと思うんですけどね。
ホントよくヤクーさん生きていてくれたよ。
「それで?お前なにしにきたの?」
ヤクーさんはほろ酔い気分で気落ちしながら家に帰った。
帰りたくはなさそうだったけど。
「グロリアが出来たっていう手紙が来てな。速攻で歩いてきた」
「グロリア?ああグロリアか。そういえばそんなこと言ってたな」
「明日取りに行くんだよねえ。楽しみ楽しみ。そうそう、ミリーさんに会ったぜ」
「そういえば年始の手紙に書いてあったな。あ、おかわりいる?」
「いるいる」
グラスにウイスキーを注いでもらう。
「んで?戦争には参加するのか?確かかち合うのは来年だろ?」
「するわけねぇじゃん。大体戦争って言っても、どっかの荒野でなんかトーナメント的なのに変わったんだろ?ゲームか何かみてぇで気持ちわりいことこの上ないよ」
あれからもちょくちょくミリーさんに会って聞いたことだが、魔界と人界で魔普獣魔武闘大会を行うことになったんだと。
元々の名前が魔人武闘大会だったが、これだと魔人族の武闘大会と間違えるとかいう素晴らしい理由により、この名前になった。
魔界の王と会談?した結果、戦争がこれに変わったんだとさ。
「だぁよなぁー。ああそういえば一ヶ月くらい前に例のハーレム作るとか抜かしていた転移者が来たんだよ」
「お?まじ?」
「ああ。なんか『色々あって目が覚めた。俺は魔王を倒して世界を救うんだ』とか言ってた。眼帯つけてたり、髪が半分白髪になってたり、まあなんか色々あったんだろうな本当に」
「大変なんだなあ転移者って」
厨二乙と言いたいところだが、この世界じゃ笑えねぇからなぁ。
「ま、ガチ戦争にならんのならそれにこしたことはないさ」
「負けたらどうなるんだろうか」
「さーねー。魔界に占領されて、ヒャッハーな世界にでもなるんじゃねーの?」
「かーもねー」
なんて話をしていると、後ろで扉の開く音がした。
「お、いらっしゃー……い……」
「どしたーレデン。妖怪でも見たかー」
振り向けば。
「貴様……今日はどれだけ飲んだ?」
「あー……えー……ボ、ボトルでニ、三本くらい……です……」
般若?
いいえ、先生です。
「道中でさんざん言ったはずだな?私の前以外では飲むなと」
……あ。
忘れてた。
「とりあえず、酔い覚ましに軽い運動でもしようか」
「い、いやあ、べ別に運動はいいかなあって。ほらまだ記憶なくなるほどじゃないです、し、ね?」
というか酔いが覚めましたよ。
「そうかそれはよかった。ならしっかり運動の記憶が残るわけだな」
……。
…………。
……………………。
「……………………はれ?」
どうもまた飲みすぎたらしい。
記憶がねぇや。
窓から入ってくる日の光が眩しい。
「頭いてぇ……」
ただ、二日酔いにしてはちょっとズキンズキンしすぎるな。
具体的には後頭部の一部のみが痛い……って瘤できてるし。
治しとこ。
「つか記憶が無くなるほど飲んだら今度こそ先生に殺さ……れ……」
ベッドで上半身だけ起こすと、布団が捲れた。
すると俺の横には……。
アハハハ。
俺はまだ夢を見ているんだよ。
だってそうだろ?
「なんで……え?待って?マジで?嘘でしょ?」
半裸の女性がいたんだ。
しかも……、
「んん……ん?ああ、パスト起きたのか。悪いがもう少しだけ眠らせてくれないか?まだ少し眠い……」
先生なんだぜ?
村はまあ……何も変わってないな。
普通だわ。
「私は少し村長に挨拶してくる。宿はさっき行っていたところでいいんだな?」
「ですね。俺は宿の下の飯屋にいるんで終わったら来てください」
「了解した」
これは道中聞いたことだ。
去年俺達がやらされた遠征試験。
実はほぼヤラセなんだそうだ。
例えば俺達のとこの場合。
ます先生方が下見をする。
理由は危険生物がいないかどうか調べるためだ。
ヤバイのがいたらそこは止めになる。
一応先生方が討伐したり追い払ったりはするけど、その生物のテリトリーだとしたら、どうしたって戻ってくるから、危険に変わりはない。
そして村長達と結託して、俺達を騙すというわけだ。
討伐予定の魔物に関しては、基本的には先生方がテイムした魔物を討伐することになるようにできている。
討伐予定の魔物が強力な魔物に設定されている場合は、実は見間違いだったとかそういった感じで無理矢理お茶を濁すんだとさ。
今思うと、村長は引いてたというよりも、かなり嘘だろ?って顔だった気もする。
そりゃそうだな。
いるはずのないオーガの生首持ってきたんだから。
ちなみにこのことは、二年や三年になれば結構な人数の生徒が知ることになるが、決して後輩にこのことをバラしてはならないという決まりがある。
もしバレたら連帯責任で全学年留年させられるという謎の重さの罰がくだされることになっている。
まあというわけで、先生と村長は顔見知りということで、せっかくだから挨拶しに行くそうだ。
宿屋でおばちゃんに二部屋取ってもらい、レデンに会う&夕飯のため階下に降りた。
扉を開けながら声を出す。
「おーっす。やってるー?」
「おーパストか!」
「おお!久しぶりではないか!」
「おおお?ヤクーさん?お久しぶりです」
『お』のオンパレードの再開である。
レデンの店に行くと、まさかのヤクーさん。
「丁度いいところに来たな。ジョッキサービスするからお前もヤクーさんの話聞いてやってくれよ」
「は?」
どゆこと?
「何かあったんですか?女絡み?」
まあ冗談だけ
「……正解だ」
…………。
「え?」
「実は一週間前、六年ぶりに姉たちが帰ってきてしまったんだ……」
「ヤクーさん、お姉さんがいたんですか」
「私の姉たちは本当に怖いんだ……。今回も帰ってきたと思ったら、私を無理矢理狩りに連れ出したり、久しぶりに特訓するぞとか……。昔からそうなんだ……。いつもいつも私を特訓と称して痛めつけてくる……」
うわぁ、あのヤクーさんが震えてるよ。
半泣きだよ。
漢泣きだよ。
理由は凄まじく似合わないけど。
「ヤクーさん、姉とはそういうものですよ。諦めるしかないんです。それにお姉さん達は里帰りなんでしょ?ならもう少ししたらまた平穏な毎日が戻ってきますよ。月並みな言い方で悪いですけど、止まない雨は無いって言います。それまではこうやってレデンに愚痴ったりして耐えましょうよ」
「……パストも姉を見ればわかるはずだ。姉をは耐える耐えないの次元じゃないんだ。でもこうやって愚痴の一つでも零さないと、本当にやっていけなくなるような気がして……。すまないな。ただ同情して欲しいために愚痴を零してしまって」
こんな沈んだヤクーさん初めて見た。
初めてってほど何度も見てたわけじゃないけど。
それからしばらく、ヤクーさんによる幼少期から現在までに至る姉達による特訓やら試練やらと称した虐め話を聞くことになった。
中でも度胸訓練である、崖からバンジージャンプは、聞くだけでタマヒュンものだった。
バンジージャンプって下にクッションとか池とか川とか普通あるだろ?
無いんだぜ?
ただの崖から、ただの紐でジャンプさせられるという度胸訓練。
殺人事件だと思うんですけどね。
ホントよくヤクーさん生きていてくれたよ。
「それで?お前なにしにきたの?」
ヤクーさんはほろ酔い気分で気落ちしながら家に帰った。
帰りたくはなさそうだったけど。
「グロリアが出来たっていう手紙が来てな。速攻で歩いてきた」
「グロリア?ああグロリアか。そういえばそんなこと言ってたな」
「明日取りに行くんだよねえ。楽しみ楽しみ。そうそう、ミリーさんに会ったぜ」
「そういえば年始の手紙に書いてあったな。あ、おかわりいる?」
「いるいる」
グラスにウイスキーを注いでもらう。
「んで?戦争には参加するのか?確かかち合うのは来年だろ?」
「するわけねぇじゃん。大体戦争って言っても、どっかの荒野でなんかトーナメント的なのに変わったんだろ?ゲームか何かみてぇで気持ちわりいことこの上ないよ」
あれからもちょくちょくミリーさんに会って聞いたことだが、魔界と人界で魔普獣魔武闘大会を行うことになったんだと。
元々の名前が魔人武闘大会だったが、これだと魔人族の武闘大会と間違えるとかいう素晴らしい理由により、この名前になった。
魔界の王と会談?した結果、戦争がこれに変わったんだとさ。
「だぁよなぁー。ああそういえば一ヶ月くらい前に例のハーレム作るとか抜かしていた転移者が来たんだよ」
「お?まじ?」
「ああ。なんか『色々あって目が覚めた。俺は魔王を倒して世界を救うんだ』とか言ってた。眼帯つけてたり、髪が半分白髪になってたり、まあなんか色々あったんだろうな本当に」
「大変なんだなあ転移者って」
厨二乙と言いたいところだが、この世界じゃ笑えねぇからなぁ。
「ま、ガチ戦争にならんのならそれにこしたことはないさ」
「負けたらどうなるんだろうか」
「さーねー。魔界に占領されて、ヒャッハーな世界にでもなるんじゃねーの?」
「かーもねー」
なんて話をしていると、後ろで扉の開く音がした。
「お、いらっしゃー……い……」
「どしたーレデン。妖怪でも見たかー」
振り向けば。
「貴様……今日はどれだけ飲んだ?」
「あー……えー……ボ、ボトルでニ、三本くらい……です……」
般若?
いいえ、先生です。
「道中でさんざん言ったはずだな?私の前以外では飲むなと」
……あ。
忘れてた。
「とりあえず、酔い覚ましに軽い運動でもしようか」
「い、いやあ、べ別に運動はいいかなあって。ほらまだ記憶なくなるほどじゃないです、し、ね?」
というか酔いが覚めましたよ。
「そうかそれはよかった。ならしっかり運動の記憶が残るわけだな」
……。
…………。
……………………。
「……………………はれ?」
どうもまた飲みすぎたらしい。
記憶がねぇや。
窓から入ってくる日の光が眩しい。
「頭いてぇ……」
ただ、二日酔いにしてはちょっとズキンズキンしすぎるな。
具体的には後頭部の一部のみが痛い……って瘤できてるし。
治しとこ。
「つか記憶が無くなるほど飲んだら今度こそ先生に殺さ……れ……」
ベッドで上半身だけ起こすと、布団が捲れた。
すると俺の横には……。
アハハハ。
俺はまだ夢を見ているんだよ。
だってそうだろ?
「なんで……え?待って?マジで?嘘でしょ?」
半裸の女性がいたんだ。
しかも……、
「んん……ん?ああ、パスト起きたのか。悪いがもう少しだけ眠らせてくれないか?まだ少し眠い……」
先生なんだぜ?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,174
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる