転生しました。

さきくさゆり

文字の大きさ
84 / 103
第六章

ゴスっ

しおりを挟む
「んー……」

 戻ってきたらしい。とりあえず起きるか。

 …………目を開けたが真っ暗で何も見えない。

 とりあえず異空間から電池式のランプを取り出した。
 これ便利なのよ。

 明るくなって分かったことは、俺がいる場所が、どこかの豪華な部屋だってことだ。
 部屋は広く、なんか絵とか飾ってある。

 つかこのランプすげえな。俺は部屋の真ん中辺りにいるらしいけど、室内が普通にわかるわ。
 さすが国内産である。

 そして俺が寝ているのはなんかでかいベッドだった。
 トリプルベッドくらいある。

 ベッドから降りると、足の裏にフカフカのカーペットの感触。なんだこの部屋……。

 窓まで歩いて外を覗こうと思ったが、窓に反射して俺の顔が見えた。
 目つき悪……。

 ついでに少し離れて見ると、俺の姿は着流しのような服を着ていた。
 中は素っ裸だ。下着すら着ていない。

 うーん……。

 どこだここ。

 それに俺一回目が覚めたよな。
 そんとき……そうだ首。

 首の後ろに手を回してみたが特に何もなかった。

 とりあえず気配察知魔法術を使ってみることにした。
 んー……なんだここ。めちゃくちゃ広いな。しかも部屋数多すぎないか?俺がいるのはどうも……わかる限りで二階?の真ん中辺りの部屋らしい。
 でももっと下にありそうな気がする。
 両隣も同じくらいの部屋があるが誰もいないようだ。
 そんで天井に二人誰かいるな。見張りか?

 気配察知には気づかれてないらしいな。とりあえず先生よりは弱いことだけは分かった。
 いや先生に気配察知魔法術やったら速攻バレてボッコボコにされたことがあるんだわ。
 隠れ鬼やった時の話なんだがそれは置いておこう。

 つか見張りなら、俺が起きてなんかしてるのに何も言わねぇのか?何者?

 すると気配察知に誰かが引っかかった。
 下から誰かが上がってくる。
 こっちに向かってるらしい。

 俺は布団に戻っておいた。
 気配察知は発動したままだ。
 案の定、俺のいる部屋の前に誰かは止まった。
 部屋の扉が開く音がすると、誰かが入ってきた。
 カーペットを踏む音がする。
 俺は目を瞑ったまま寝返りをうってみた。
 そいつはベッドの横で止まった。

 少し経つとそいつはホッとため息を一つついたようだ。

 そしてベッドがきしんで俺は少しベッドに沈む感触があった。
 そのままぎしっぎしっとソイツが近づいてくる。

「……ハァッ……ハァッ……ハァッ……ハァッ……」

 女か?なんかハァハァ言ってんだけど。
 耳元でハァハァすんなよ……。
 こしょばいんだよ……。

「い、いただきます」
「は?」

 思わず目を開けてしまった。

 すると目の前に真っ赤なナニかが二つ浮いていた。
 これって……最初に目覚めた時の!

 慌てて赤いナニカかから離れると同時に、持っていたランプのスイッチを押した。

「ぎゃっ?!何っ?!」
「姫様っ?!」
「貴様っ!何をした!」

 パッと明かりが付くと、ちょっとよくわからない光景が広がっていた。

 ベッドの上で目を抑えて悶ている髪の長い女の子と、その子を守るように立って剣と槍を突きつけてくる男二人がこちらを睨みつけてきていた。

「いやそっちこそ誰よ。俺は目が覚めたら真っ暗闇の中真っ赤なナニカが見えたと思ったらいただきますなんて言われたから、ビックリしただけだ。これは明かりを灯す道具。殺傷能力は無い」

 とりあえず早口で捲し立てながら様子を見る。
 男二人は鎧というほどでは無いが頑丈そうな銀色の装備に包まれている。お揃いだな。
 後ろに転がっているのはゴス服を着ているようだ。

「めがっ!めがあああっ!!」

 直視したらしい。LEDライトは殺傷能力は無いけど失明する可能性はあるなそういえば。

「姫様っ?!」
「貴様っ!何をしたっ!」

 どうしよう……。
 なんか可哀想な気がしてきた。
 失明してないよな。

「あー……悪かった。そっちの子はこの明かりを直視したから目がやられてるんだと思う。少し経てば治るはずだ」

 多分。

「……本当だろうな?」

 剣を持った方が俺を睨んでくる。

「嘘はついていない。それでここはどこでお前らは誰だ。なんで俺はここにいる。そしていただきますとはなんだ」

 すると後ろにいたゴス服が起き上がった。

「あー……眩しかった……。なによそれ。雷魔法?」

 魔法ではないが系統は似たようなもんだな。

「ゴメンナサイね、パスト君。ついガマンできなくて」
「姫様っ?!」
「ご無事でしたか!」

 我慢ってなんだ。
 つかなんで俺の名前知ってんの。
 誰なの。
 つか俺は家で寝てたんじゃないの?
 いつの間にこんなとこにいるの?

「いくつか聞きたいことがあるんだが、まずここはどこで、三人は誰だ?」
「貴様っ!姫様に向かってぅぎゃひっ!!」

 槍の人が俺に槍を突きつけた瞬間、天井に突き刺さった。

「いつまで客人に武器を向けてる貴様達」

 ゴス服の女の子が何かしたらしい。

「えーと……ど、どちら様でしょうか。あ、私はパストと申します」

 俺は姫様って言われていたからへりくだることにした。
 いや怖いし。

「あらいいのよ。娘の師匠さんなんだから。もっとフレンドリーにいきましょっ!」

 フレンドリーって英語なんじゃ……いや深くは考えまい。
 って娘の師匠?ってことは……。

「アオの母さん?」

 正解とばかりにニッコリと笑う。
 嘘だろ?!

「こんな小さ……」

 俺が辛うじて覚えているのはここまでだった。

しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【長編版】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

処理中です...