『僕の恋人は僕の妹』

さきくさゆり

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『僕の恋人は僕の妹』

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 五年前、突然両親が離婚した。
 理由は母の不倫だ。
 それが父にバレて離婚である。
 俺が高校に行ってる間に母は離婚届に判を押してとっとと出ていってしまったのでどうも俺のことは連れて行く気はなかったようだ。
 まあ俺は両親からはほとんど空気みたいに扱われていたからしょうがないか。
 そして気づけば父も家に帰らなくなった。
 月に一度、俺の口座にお金が振り込まれてくるから生きているみたいではあった。

 そんな俺をいつも気にかけてくれていたのは近所のマンションに住んでいたAV女優さんだった。
 別にAV女優さんだからと言ってエロいことがあったわけではなく、よくご飯を奢ってくれたり遊びに連れて行ってくれたりと色々してくれたのだ。

 そして高三の時のこと。
 進路について悩んでいるとそのお姉さんに相談すると、社会見学だーと言って仕事現場に連れて行かれた。
 いやまあ最初は少し躊躇したんだけど、いざ現場を見たら興奮した。
 それはお姉さんにではなく相手の男優にだ。
 今までAVを見るときは男優なんて見向きもしなかった。
 だが撮影現場での男優さんの働きっぷりには最後には感動すら覚えた。

 俺はお姉さんに頼んで男優さんに紹介してもらった。
 弟子にしてもらうために。
 もちろん断られてしまったが、何度も頭を下げて、高校を卒業してからまずカバン持ちにしてもらえることになった。

 カバン持ちをしながら、現場で師匠のテクニックや振る舞いを徹底的に観察し、家でなんども復習した。
 そして、二十歳になったころ、ようやく弟子として技術を直接伝授してもらえるようになった。
 時には怒鳴られたり殴られたりもしたが死ぬ気で努力した。


 ***


 そんな生活をしながらこの世界に入って約五年たった真夏のある日。
 俺はついに今日、AV男優としてデビューすることになった。
 そしてなんと相手の女優さんもこのAVでデビューするそうだ。
 清楚系の綺麗な顔立ちの子なんだそうだ。
 実は俺はその子の顔を知らないので楽しみだ。


 まずは挨拶をしなくてはと思って楽屋に行った。

「こんにちは。今日のお相手をさせていただく、オーガズム斎藤です。ご挨拶に伺いました」

 そう言うと扉が空いた。

「はーい!わざわざありがとうございます!新人の種子先桃です!よろしくお願いします!」

 相手は俺の顔を見て、自身の顔を真っ赤にしながら挨拶してきた。
 だが俺は今、非常に混乱している。

 なんせ相手は七年前に、離婚した母に連れて行かれた俺の実の妹なのだから。

「どうしたのー?挨拶終わったー?」

 楽屋の奥からマネージャーと思しき声が聞こえると、妹は

「なんでもないです!それでは!」

 と言ってドアを閉めた。


 俺は自分の楽屋に戻ってから我に返ったように楽屋で叫んだ。

「生き別れの妹とAVの撮影現場で再開ってなんだよ!しかも今回のAVが俺とアイツのデビュー作でしかも近親相姦モノってどんな偶然だ!」

 そう、今回のAVのタイトルは『僕の恋人は僕の妹』。
 思いっきり近親相姦モノなのだ。

 これはどうするべきか……。
 いや、普通に言えばいいのか?
 相手がなんの偶然か実の妹なんで撮影中止にしてくれと。
 言えば中止だろうな。
 だが、俺はコレがデビュー作。
 必死に掴んだチャンス。
 これを逃したくはないが……。

 というか妹はなんでAV女優になったんだ?
 すごく疑問なんだが。
 この業界が好きになったーとか?
 たしかあいつは俺の持ってたエロ本をひっちゃぶいて庭で燃やすほどこういったジャンルに対しては敵意を持っていたはずだ。
 あ、俺のエロゲやAVも破壊して燃やしてたな。
 あとパソコンに保存していた画像とかも保存した次の日には全て消されてたし。

 というか、あいつ俺の顔を見たのに何も言わなかったな。
 俺と一緒で混乱していたとか?
 にしては普通だったな……。
 七年では顔が変わるほど成長したとは思えないし……。
 あ、アレか。
 離婚した時点で俺のことはスッパリ忘れてしまったのかな。
 つか、一緒に住んでたときもあんまし顔を合わせていたイメージないからな。
 俺は結構シスコン気味だったから忘れることはないけど向こうは嫌ってたみたいだしな。

 ……そうだよ俺シスコンだったよ。
 つか妹だっていうのはすぐにわかったけど最後に見たときよりも大人っぽくなってた気もするな。
 非常に可愛くなってた。
 うん可愛い妹とAV撮影なんて非常に興奮するシチュは二度と無いだろう。
 よし、黙ってよう。
 俺の中だけの素晴らしいシチュだ。
 それに本当の妹なんだから演技もよりリアルに近づけることができる。
 いいことじゃあないか。
 完璧だ。


「斎藤さんお願いします!」


 さて!
 頑張っちゃいますか!!


 ***


 最高だった……。
 超気持ちよかったし、俺の持つ技術を全て使うことができた。
 監督にも本当に兄妹のように見えて素晴らしいものができそうだと褒められた。
 そりゃ本当に兄妹ですから。
 後で師匠たちにも報告しなくてはならんな。
 あ、実の妹云々は話さないけど。

 楽屋に戻ると、一枚の紙が机に置いてあった。
 なんだ?
 紙は誰かの免許証のコピーでそこにメールアドレスが書いてあった。

 それを見て俺は慌ててメールアドレスにメールを送った。
 すぐに返信がきた。
 内容は明日の朝十時に俺が暮らしている地元の駅に来てほしいとのこと。
 勿論OKした。
 そして、妹は俺が実の兄であることをわかった上で撮影していたんだということに気づいた。


 ***


 十時に駅に行くと、妹はすでに待っていた。

「悪いな。待たせたようで」
「大丈夫。さっき来たばっか。それより私、家に行きたい。まだ住んでるんでしょ?」
「あ、ああ。住んでるよ。まあ落ち着くだろうし家に行くか」

 そう言って俺たちは歩きだした。
 兄妹としての会話はコレが七年ぶりである。
 それから家につくまでの道中はずっと無言だ。
 ただ、懐かしいのかキョロキョロと周りを見回しながら歩いていたので、退屈ではないみたいだ。


 家についたので、居間に通す。
 麦茶でいいかと聞くと、頷いたのでグラスに氷を入れて注いでやった。

「さてと……、まずは久しぶり…でいいかな桜」
「久しぶり……でいいよお兄ちゃん」

 とりあえず挨拶。

「色々聞きたいことが山ほどあるんだが……んーと……お母さんは…」

 そう聞くと桜は俯いた後、ポツポツと話し始めた。


 離婚した後、お母さんに連れられて不倫相手の家に行ったの。
 そこで、一年くらい暮らして、お母さん達は再婚した。

 でも再婚して更に二年くらいたった頃、お義父さんがリストラにあったの。
 そしてそれからは一気に家はメチャクチャになった。
 お義父さんは借金をしてるし、お母さんはまた浮気三昧。
 私は元々家に帰るのが好きじゃなかったけど、そのことがあって余計に帰りたくなくなったの。

 そんなときに思い出すのはいつもお兄ちゃんのことだった。
 なんかあったら必ず助けてくれるお兄ちゃん。
 もしかしたらまた助けてくれるんじゃないか。

 そう思ってこの家まで一度来たことがあるの。
 だけど、その時は留守だった。
 私は諦めて帰ろうとしたけど、あの家に帰りたくなくて近くの公園でボーッとしてたの。

 そんな時、たまたまある女性にあってね。
 その人につい話しちゃったの。
 一度話しだしたら止まらなくなっちゃって、お姉さんも黙って聞いてくれるもんだからそれが余計に心にきちゃって。
 流石に本名とかは話さなかったけどね。

 それで、お姉さんがAV女優をやってるから良かったら社会見学しにこない?って言うから興味本位でついていったの。
 そこでのお姉さんに私は感動しちゃってね。
 もうなんか悩みとかそういうのが、吹っ飛んだ。
 そこで私はお姉さんに弟子入りしたの。
 カバン持ちから始めて技術を教えてもらって頑張ったわ。

 そんな時、ある男優さんに会ってね。
 男優さんにも弟子がいるって言って写真見せてもらったの。
 そしたらお兄ちゃんじゃない。
 私はビックリしちゃったけど、それと同時にこれはチャンスなんじゃないかって思ったんだ。

 もう今さらだから言うけど、私は昔からお兄ちゃんが好きだったの。
 男としてね。
 お兄ちゃんが私のことを女としてみてないことはわかってたから想うだけで止めていたんだけどね。
 けど、AV撮影としてだったらお兄ちゃんとヤれるんじゃないかって思ったの。

 それからは大変だったよ。
 より技術を研鑽したし、お兄ちゃんとヤるためにあらゆる根回しをした。
 ちなみに私達が実の兄妹だってことを知っているのは私の師匠とお兄ちゃんの師匠だけだよ。
 二人共ノリノリだったし、大御所だったから色んなコネを持ってたからすごいバックアップしてもらっちゃったよ。

 楽屋挨拶に来られちゃったときはホントに心臓バクバクでヤバかったんだからね。
 お兄ちゃんは気づいてないみたいだったから良かったけどね。
 楽屋の紙見てビックリしたでしょ。
 まさか実の妹とAV撮影してたなんてって。
 まあ近親相姦モノだったことには私もびっくりしたけどね。
 結果的に興奮してヤバかったからいいんだけど。

「大まかに言うとこんな感じです。ちなみにお母さんは記入済み離婚届けをテーブルに置いてどこかに消えました。お義父さんは家で酒飲んでます。私は籍を抜いているのでお義父さんともお母さんとも関係なくなりました。現在天涯孤独の身の上です。なのでここに置いてください。お願いしますお兄ちゃん」


 なるほどなぁ。
 って言うと思うか!
 色々とヤバイだろっつか師匠なにしてんねん!

「えーとだな……。とりあえず一つ誤解しているところを訂正させてほしいんだけど……」
「なにかな?」
「お前が桜だってこと、楽屋挨拶の時点で気がついてた。その上で撮影に挑みました。ぶっちゃけ非常に興奮してました」
「………………」
「………………」
「…………え?」
「……だからその……えーと……気持ちよかった…です」

 そう言うと桜は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
 若干涙目だった。
 可愛いのお。

「あー……桜……」
「……なに?」
「……一緒に暮らすか」
「うん!」

 深いことは考えないことにした。


 それから俺たちはAV業界に名を轟かせながら幸せに暮らした。

 引退AVは近親相姦モノで俺ら二人の共演である。
 めっちゃ売れた。

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