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第一章
4:再会
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数字やアルファベットや記号やらが揺れ、瞬間翻訳の文字だけが辛うじて、バグステータスの海の中を漂っている。
「これ……どう思います?」
「いやどうもこうも……こんなの初めて見たんだけど……。今すぐ学者共にお前のこと売りたいくらいなんだけど……」
「やめてよね。人体実験とかされたくないから」
ちなみにこの国の学者は悪い意味でぶっ飛んでいる者が多いため、結構洒落にならないことをしている学者ばかりだ。
恐らくこのステータスが学者にバレたら、本当に人体実験になり兼ねない。
「…………弱いとか以前に読めないとかありえない。ありえてるけどありえない。なんなのよあんた……」
「人間ですね。種族無いけど」
無いというか読めないのだが。
「これつまりステータスはあるけど読めないだけ?それともステータスっていう概念自体がうまく作用されていないってこと?」
「まあ後者じゃないですか?瞬間翻訳は漂っているわけですし」
「そうよね……。ってことは時間が経てば治るか……」
サフランは黙る。二分ほど思考するとパンッと手を叩いた。
「よし決めた。とにかく日比谷はステが安定してから改めて話をしよう」
こうして真琴のこの世界での過ごし方が決まっていった。
*****
「真琴君!」
真琴が元の廊下まで帰ると、またなつみが飛びついてきた。
「先生、苦しいから」
「ああ、ごめんなさい……」
すぐになつみが離れると、真琴はミストルに話しかけた。
「あの、ヘルバトイ大佐ですね。王女様から伝言です。俺を部屋に案内するようにとのことです。後、俺は戦争に参加しませんが、ある程度訓練は受けておいたほうがいいとのことなので、その辺は二人で話し合うようにと」
サフランに言われたことをそのままミストルに伝えた。
「つまり君は魔王討伐に参加しないと?」
「しません」
「な、な、な、なんだとおおおおお!!!」
ミストルはその場で演技がかったように悶え始めた。
頭を抱えて身体を振りだす。非常に気持ち悪い。
周りの兵士もミストルの動きに少し引いている雰囲気だが、一部は真琴に対し、信じられないといった顔を向けている。
ひとしきり悶えると、真琴の肩を掴んで凄んだ。
「それでも男か?!」
「戸籍上は男ですね。こちらに戸籍があればですが」
かなり強面のミストルに顔を近づけられ、怒鳴られているが、真琴は表情一つ変えずに言ってのけた。
「それで、王女様の伝言は受け取ってもらえましたか?なら部屋まで案内してくださいよ。伝言無視するなら不敬罪でしたっけ?それに当たるんじゃないんですか?わかりませんけど」
「グヌヌヌヌ……わ、わかった……。すぐに案内しよう……」
歯ぎしりしながらミストルは告げ、大股で真琴の横を通り過ぎる。真琴はその後ろについて歩きだした。
神聖国リューネの王城は少し高い山に建てられていて、かなり大きい。
その中の居館の四階の一室が真琴の部屋だ。
「ここが日比谷様の部屋だ。一人少し離れているが許してくれ。部屋数の問題でな。あと訓練に関しては明日話し合おう。今日はもう遅いからな。ここでの暮らし方については瀬川様に聞いたほうがわかりやすいと思う。瀬川様、お手数おかけするがよろしく頼む」
ミストルは一方的に言い切って頭を下げ、帰っていった。
「遠すぎ……なんだけど……ゼェ……ゼェ……」
部屋のベッドに身体を投げた真琴は仰向けになって息を整えた。
「それであの……真琴君」
「なん……ですか……てか先生はなんで息が上がってないんですか……ってアレか。召喚された異世界人には特別な能力があるって王女様が言ってたやつ」
「あ、それもありますけど……まず真琴君。あなたは戦争には参加しないんですよね?」
「しません」
するとなつみは良かったぁと息を吐いて床にへたり込んだ。
「どうしたんですか?」
「うん……あのね……」
そして真琴は、自分がここに転移してくるまでの間のことを、なつみから聞いた。
*****
真琴が転移してくる一週間前に、クラスメート達は転移していた。
その時はあの石畳の教会に、聖女他数十名のこちらの人間がおり、現れた瞬間、大喝采で歓迎された。
そこで聖女に神託のことなど、真琴がサフランに聞いたことと同じことを聞き、何人かは勝手にステータスを開いたりしていたそうだ。
そして戦争に参加するか否かのところで、クラスの人気者である菅原有志だとかが助けるべきだと主張、舞と竜介がそれに乗っかり、奈緒も舞がやるならと参戦を決め、それに釣られて俺も僕も私もとあれよあれよと皆が参戦を決めてしまったのだ。
勿論なつみは大反対したのだが、有志が俺達には力があると言い出し、皆も同調、抑えきれなくなったなつみは一旦諦め、一人一人がステータスを確認し、神からの本読み、改めて参戦するか否かを決めることにするというとこにまで落ち着かせたのだ。
だが、それが間違いだった。
クラスメートの能力は凄まじく、しかも宰相が参戦するとしても、まだまだ先の話。まずは訓練だけでも受けてもらえればいいぞと言い出した。
さらに宰相は、訓練を受けるならそれなりの待遇をと、希望者には身の回りの世話をする者、要はバトラーやメイドを付けたのだ。
そしてたった一日で、クラスメート達は参戦を表明してしまったのだ。
なつみは担任として一人一人を諭した。
中にはもう少し考えてみると言ってくれた人もいたが、ほぼ全滅。挙句の果てに、異世界に学校なんざ関係ないんだから、やる気ないなら引っ込んでろよとまで言う奴まで現れた。
結局なつみは、生徒達の担任であるということすらも否定され、彼らを諭すことを諦めたのだった。
*****
「なるほどね」
真琴は少しだけ考える。
恐らく宰相とやらは、はしゃぐ子供達を高待遇によって懐柔したのだろう。バトラーやメイド達も宰相の息のかかっているものばかりだろうし、何人かは身体で釣ったのだろう。訓練だけ受けて終わりなんて虫のいい話は無いだろうし、イザとなったら脅しつけてでも参戦させようとするだろう。ド三流詐欺師も呆れてしまう酷い話だ。
「それで先生は毎日あそこにいたんですか?」
「そりゃそうだよ!私はお父さんから頼まれているからね。神様が私が担任しているクラスの生徒は全員同じところに召喚されるって聞いたから毎日待ってたんだから」
「ありがとうございます。ところで床だと冷えません?」
と言って真琴は自分の右側をポンポンと叩いた。
いいの?と言うようになつみが視線を上げると、またポンポンと叩く。
立ち上がって真琴の右側に座ると、靴を脱いで足を抱えた。
「大丈夫ですか?」
「正直いっぱいいっぱい」
真琴は、足に顔を埋めるのを横目に見ると、少し考えてから、
「…………お疲れ様です」
と言った。
「うん……あ、そうだ。私の能力ね。瞬間翻訳と鑑定と守護、召喚の加護だったの。真琴君は?」
「…………瞬間翻訳」
「だから他のだってば」
真琴は無言でステータスをなつみに見せた。
「……………………」
なつみは笑顔のまま、真琴のステータスを指で触れようとしたが、通り抜ける。
「な、なに……これ……」
「バグっちゃってるんですよねー。瞬間翻訳しか使えないみたいです。あのおじさんがくれた本も出てこないし。…………ふあぁ」
「あ、眠い?」
「はい。少し疲れました」
転移してから短い時間に色々あったからか、精神的にも肉体的にもまいっているらしい。
なつみがベッドから降りると、すぐにパタッと横になった。
「ああ……おやすみ先生」
「おやすみなさい真琴君」
なつみは、目を閉じですぐに寝息を立て始めた真琴にベッドの隅の布団をかけてやった。
*****
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