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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
129話
しおりを挟む「失礼します」という高めの声と共に扉が開かれると、湊と背丈が変わらないシルバーアッシュの髪色をしたショートカットの少年が入ってきた。
口元にシルバーの特殊マスク、黒のロングコートに黒のレザーパンツ、スタッズ付きのロングブーツを身に纏い、腰には二刀の刀を装備している少年が近づいてくると、ベッドから1m程離れた所で足を止めて跪いた。
セリと初めて会った時と同じ光景に、湊はまじまじと少年を見つめてしまった。
確かに龍司の言う通り、湊と背格好や体型はほとんど変わらない。
この少年が護衛をやってくれるなんて…と少し驚いた。
「湊、紹介しよう。俺が信頼する部下の1人、ルカだ。主な業務内容は、依頼主の護衛や戦闘。ルカならしっかりとお前を護衛してくれるだろう」
「湊様、お初にお目にかかります。コードネームR2こと、ルカと申します。これから暫くの間、湊様を護衛させて頂きますのでよろしくお願い致します。」
「えっ…あ、はい!月嶋湊って言います!あの…、えっと…こちらこそ暫くの間お願いしますっ!」
地面に頭を付けながら丁寧に自己紹介をしてくるルカに、慌てて返事をするも釣られて敬語になってしまい同じように頭を下げれば、おかしそうに笑いを堪える龍司が視界に映った。
「そんな畏まらなくていい。多分だが俺の部下の中で湊と一番気が合うと思うし、護衛はもちろんだが…良い友達にもなれるだろう」
「えっ…友達…?」
龍司から出てきた友達と言うワードにきょとんとして首を傾げる。
友達と呼ばれる存在がいなかった湊にとって、すごく新鮮だった。
嬉しさで次第に笑顔が浮かんでくる。
「社長!湊様と友達など恐れ多いです!自分の仕事は、湊様をお守りする事ですから…!」
「お前は堅すぎるんだ、ルカ。護衛は一番大事な事ではあるが、湊と友達になってくれとも言っただろう?」
「っ…!しかし…!!」
目の前の2人のやり取りを呆然と見ていた湊が、クスクスと笑い始める。
湊の笑顔に釣られ、龍司も表情を緩ませるとルカの肩をぽんぽんと軽く叩いた。
「ルカ、頼んだぞ?」
「――かしこまりましたっ…。…最善を尽くします…」
なんとも言えない表情のルカが困った様に返事をする。
そこまで友達になるのが嫌なのかと、湊は少しだけ悲しくなってきてしまった。
「あの…、なんかすみません!初めて会った俺と友達になるのなんて…嫌ですよね…。」
「あっ、いや!そのような事はございません!誤解をさせてしまったようで申し訳ありません…!…自分はっ…友達と言うようなものがどのようなものなのか、よく分からないのです…っ。…それに、自分なんかが湊様と友達になっていいはずが―――…」
ルカは、物心がついた頃からすでに家族と呼べる存在がいなかった。
いつからいないのかも、何故いないのかも分からない。
気が付いた時には孤児院にいたのだ。
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