Last Smile

神坂ろん

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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔

137話

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――――・・・


暫くして、ルカが料理を乗せたフードワゴンを引きながら部屋に戻ってきた。


蓋を閉められていても、部屋に入った瞬間に香るチキンライスとケチャップの良い香りが何とも食欲をそそる。

「どうぞお召し上がりください」

笑顔のルカに、空腹で限界を迎えつつあった湊は、香りにつられるように料理を覆っている蓋を開ける。

「わぁ…!美味しそう!」

真っ白い円形の皿には、見た事のない程美しいアーモンド型のオムライスが盛り付けられていた。
高級店で出てくるような見事に美しいアーモンド型と、どこで買った卵を使えばそんなに綺麗な金色になるのか不思議に思う程美しいご飯を包むフワフワの卵。
星が付くレストランで働く、プロのシェフが作ったかのような見た目のオムライスに、自然と生唾をのんでしまった。

オムライスと共に添えられたスプーンを手に取り、一口サイズのオムライスを口に入れれば、フワフワのい卵の食感と程よい味付けをしたチキンライスのコクが口の中に香りと共に一気に広がり、とろけて消えていった。

「お、美味しい~!!」

あまりのオムライスの美味しさに、湊は目を輝かせた。頬が落ちそうになるとはこういう事なのかもしれない。
今まで食べたオムライスの中で2番目に美味しい。
もちろん1番美味しいオムライスは、龍司が作ったオムライスだ。

「それは良かった。あとでナナに言っておこう。きっと喜ぶ…本当はナナにも湊を紹介したかったんだが、ナナはこれから用事で出掛けることになっていて、今は来る事が出来ないんだ…。また別の機会に改めて紹介する」

「ううん!全然気にしなくていいよ!とても美味しかったですって伝えてもらえる?俺も今度会った時に改めてお礼が言いたい!だって…こんなに美味しいオムライスを作れる人なんだ…すごく繊細で優しい人に違いない…。」

「―――…!」


続けるように一口、もう一口とオムライスを口に運びながら、湊がぽつりと呟く。その言葉はしっかりと龍司の耳に届いていて、龍司が目を見開く。

何度食べても、飽きるどころかもっと食べたくなる。
そんな風に感じさせてくるオムライスを食べながら、湊の表情は自然と笑顔になっていた。

洋食のオムライスは、基本的に味付けは濃い目だ。
だが、今湊が食べているオムライスは決して薄味ではないのに、とても繊細で優しい味だった。
濃すぎず薄すぎず、ちょうどいい。それでいて、調味料と食材の旨味が上手く合わさり、口の中でいっぱいに広がる。


こんな味を出せる人は、今まで会った事がない。
ナナはきっと優しい心の持ち主で、食材の事を良く分かっている。
そして、食べる相手の事を想いながら作っている。――だから作れる味なのだと湊は思った。


「湊様…」


湊の言葉に、ルカが瞳を揺らがせた。



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