Last Smile

神坂ろん

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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔

152話

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「…東山組に頼もう。そう思いました。父と東山政近はとても仲が良かったみたいで、父に頼むとすぐに政近さんに会わせて頂けました。私は泣きながら、龍司様の事を本気で愛しているから協力をしてくれと何度も…何度も政近さんにお願いをしたんです」


「……なるほど。バックにお前がいるという事がばれないように…さも東山組が依頼をしたかのように見せかけて、今回うちの会社に依頼をしてきたと…そういう訳か」


龍司は添えられた手を掴むと、近すぎた七瀬の体を引きはがし、再びオフィスチェアに座った。
腕を組みながら七瀬を睨めば、拒絶されたのにも関わらず嬉しそうに微笑んだままの七瀬の不気味な笑顔が視界に映る。


「えぇ。…だって、そうでもしないと龍司様は絶対に私と会って下さらないですもの」

「七瀬。初めて会った時に、お前と約束をしたはずだ。俺が20歳になってもあなたの事を好きにならなければ、俺を諦めてくださいと」

「しましたわ。でも、そんなに簡単に諦めきれる訳がないでしょう?忘れる事なんて出来ません!それだけ私は、貴方の事が好きなんです。愛しているんです!この気持ちは、貴方にだって分かるはず…。私じゃなく、お兄様の子供で、しかも男である湊に夢中の龍司様なら―――」

「……」

まるで、龍司の心の中は全てお見通しだと言わんばかりに不気味な笑みを浮かべる七瀬を、龍司は再び睨みつける。
今にも人を殺しそうな鋭い瞳で睨む龍司の形相は、普通の人間であれば動けなくなるほどに恐ろしいものなのだが、七瀬には全く効いていないらしい。


笑顔の七瀬の表情が朋也の笑顔と重なった。

やっぱりこの二人は兄妹だと嫌でも認識させられる。


「……それで?お前の目的はなんだ?まさか俺に会うためだけに、ここまで計画をしてここに来た訳ではないんだろう?」


抑揚のない冷たい声で問いかければ、七瀬は持っていた鞄の中からA4サイズの茶封筒を取り出すと、龍司に差し出した。

見る限り、文字も模様も入ってない一般的に売っている無地タイプの茶封筒だ。


「…これはなんだ?」


差し出された茶封筒を受け取らずに一瞥すると、七瀬に訊ねる。


「中をご覧ください。…中を見れば、私が今日ここに来た目的がお分かりいただけますわ」

「……」

「…社長…」

これまで黙って話を聞いていたアキが、心配そうに龍司の名前を呼んだ。
いつになく不安そうに発せられた言葉に、アキの方を向けば微かに首を横に振っていた。
もしかすると、中に入っている何かは龍司にとっていい物ではないのかもしれない。

再び視線をアキから茶封筒へと移せば、意を決したように茶封筒を受け取る。

中には、一枚の紙が入っているようだった。


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