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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
190話
しおりを挟む湊は友達であると同時に護る立場でもある。
ルカにとって湊は汚れなき存在だ。
誰にでも優しく接し、太陽のような温かさと美しい心を持った
そう…百合亜と同じように。
一度だけ、朋也と一緒にいる時に百合亜と会ったことがある。
朋也とルカ達4人がどんな関係なのかも知らないはずなのに、百合亜は優しく声を掛けてくれた。
百合亜にルカ達を近づけたくなかった朋也は、4人に近づく百合亜を何とか遠ざけようとしたが朋也の言葉を無視し、笑顔で話しかけてくる百合亜に何も言えない様だった。
あからさまな拒絶をすれば、百合亜に怪しまれる。そう思ったのだろう。
その後、百合亜は手作りの料理まで食べさせてくれた。
それだけじゃなく、ルカ達4人が孤児だと知ると涙を流し、引き取りたいとまで言ってきた時はさすがに朋也ですら驚いていた。
龍司と出会うまでにルカが涙を流したのは、育ての親と会えなくなってしまった時だけだった。
涙などとっくに枯れたと思っていたのに、人間のごく普通の感情を一瞬にして百合亜は思い出させてくれたのだ。
何故、百合亜が朋也と一緒になる事を決めたのか、その理由はわからない。
きっと百合亜は、朋也のしていることに気づいていたと思う。
だから、百合亜の最期を見た時は信じられなかった。
嘘であると。
嘘であってくれと。
百合亜とはたったの一度しか会った事はなかったが、それでもその存在はルカ達にとって大きいものだった。
家族というものの温かさを思い出させてくれた人だったから。
初めて“意識のある成長した湊”と会った時は驚いた。
雰囲気や優しさが、百合亜そのものだったからだ。
でも、決して全てが同じではない。
百合亜とは違うなにかを湊には感じた。
それが、湊の屈託のない天使のような笑顔だ。
その笑顔をまた“あの時の様に”失ってはいけない。
無くしてはいけない。
あんな事は二度とあってはいけない。
それでも、なにがきっかけで記憶を思い出してしまうか分からなかった。
龍司とセリの開発した、記憶を強制的に消去する薬“Me:mory”は完璧なものだった。
湊が壊れてから2週間後には薬の開発に向けて動き始め、約3か月で早急に作られた薬はすぐに湊に使用された。
それでも初の試みだったために使用の前例などなく、仮実験もする時間がなかったため、ぶっつけ本番の使用となった。
自信があった龍司とセリだったが、それでもその効果が得られるまでは時間がかかった。
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