エロゲ世界に転生したが、俺は平凡な青春を過ごしたい。

蜜りんご

文字の大きさ
1 / 60
1部:1年生

第1話

しおりを挟む
「遅刻するっ!!」

ガバッと起き上がるが、そこは見慣れた自分の部屋ではなかった。ベッドサイドにあるスマホも自分のものではない。勝手に見るのは忍びないと思いつつ電源をつけた。

「3月27日、日曜日、17時11分…?」

なんで3月なんだ。今日はクリスマスでリア充爆発しろ、と心の中で願っていたはずだ。そう世の中に鬱憤を向けつつ、電車で疲れて眠ってしまったところまでは覚えている。

「夢か…?にしてはリアルすぎだろ」

思わず苦笑いしてしまうほど現実感のある夢だ。それに夢の中だからなのか、社畜の証拠である腰の痛みも肩の痛みもなく、体がとっても軽い。まるで若返ったみたいだ。目だって掠れたりしていないし。

(ていうか、ここどこなんだ)

考え込んでいたらピンポーンと呼び鈴がなり、思わずインターホンを取ってしまった。

「あのー隣に住む斉藤ですけど、洗濯物が田中さん家のベランダに飛んでいってしまって、取りに入ってもいいでしょうか」

俺は田中というらしい。そしてやたら巨乳な大学生くらいの女の子がインターホンに写っていた。

「洗濯物ですか?よければ僕が取りますけど」

「えーっと、下着なのでそれはちょっと困ります…」

下着か。それなら仕方ないか。すこし俯いてしまった彼女を見て俺は家にあげることにした。俺のあとをついてくる斉藤さんは清楚系ビッチていう感じのタイプだなー、なんて失礼なことを考えてベランダまでいくとたしかに白い布のかたまりが落ちていた。窓を開けて下着を取りに行く彼女をぼーっと見ていたら、こんなことを言われてしまった。

「田中さん…いや和樹くん。このベビードールを着た私と遊ばない?」

「え。何言ってるんですか。自分の体はもっと大事にしてください!俺だったからまだ斉藤さんは襲われてないだけで、他の男だったら襲われてたかもしれないんですよ?わかってます?」

なんで俺を誘ったのかも意味不明だし、自分よりも10は年下である子にそんな風に誘われるなんて思ってもみなかったからつい、説教じみたことを言ってしまった。

「和樹くん、私そんなに魅力無い?」

「そういうことではなくて、斉藤さ」

「由奈。斉藤さんじゃなくて由奈って呼んで」

すごい剣幕で遮ってくるもんだから思わず、苗字で呼ぶのを諦め彼女にとりあえず名前で呼び帰宅するよう促す。

「…由奈さん。とりあえず今日は帰ってください。」

「冷たいなあ。まぁそんなとこも可愛いから許してあげる。またね、和樹くん」

バタン。静かになった廊下と閉まったドアを見て俺は大きなため息を吐いた。

(ほんとうに夢か?これ。てかさっきの斉藤由奈って子どっかで名前きいたことあんな)

同僚があるエロゲにハマったと言ってたが、そのエロゲに出てくるキャラクターじゃないか?たしか…
『由奈たんマジエロ可愛いー。見てこのぷるんぷるんのおっぱい!やっぱ由奈たんしか勝たんわ』
とかなんとか言ってなかったか。

「俺…エロゲの世界に転生した?…嘘だろ、俺は平凡な暮らしがしたいんだ!」

とりあえずスマホのチェックをしてみると、俺は4月から高校生になるようだ。カレンダーアプリに入学式の文字があった。それから、家の中を探すと保険証、履歴書などが出てきて、名前の欄には”田中 和樹”そう書いてあった。

「いや、落ち着くんだ俺。もう一回寝ればきっとあの社畜生活に戻りたくは無いが戻れるはず…!」

翌朝。

ピチチチ…と鳴いている鳥の声と共に目を覚ました俺の目の前に広がった風景は、社畜時代の俺の家の間取りではなく、田中和樹の家だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...