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豊穣の姫と憎しみの王子《運命の子供達の誕生編》

星の神に愛された王妃の希望の雫《霧に包まれた光》

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王宮の奥…始まりの女王の庭を伴う城のこの部屋の主人である 王妃ムーン・R・フローライトが見事な金細工のベルを鳴らすと1人の侍女が音もなく部屋へ入って来た。

キャス「ムーン様、おはようございます」
深々と頭を下げる。
ムーンは侍女のキャスト・R・ジェンカイトに微笑むと
『おはようキャス。カーテンを開けてちょうだい』
「かしこまりました」と部屋中のカーテンを開け始める。
窓からは眩い光が差し込み、青々とした見事な庭園が姿を現す。

ムーン王妃が『サルファー』と名前を呼ぶと…

チリンっと鈴の音と共に何も無い場所から金色の艶のある毛並に、鮮やかなレモンイエローのこぼれ落ちそうな大きな目、見事な金細工の鈴が付いた大きな白いリボンを着けた小さな猿が突如現れ、ムーンの掌へ舞い降りた。

『おはようごさいます姫』
ムーンの掌の上でファーは礼儀正しく挨拶をする。
『おはようファー』
ムーンは穏やかに微笑む。

「おはようございます。キャス様」
キャスの方へ向き、ムーンの掌の上で礼儀正しく挨拶をする。
キャス「おはようございますファー様」と微笑み返すと同時に「ファー様!何度も申しておりますが、王妃ムーン様の神獣であるファー様が侍女の私に敬称をつけてはなりません!」と一蹴する。
ファーはしょんぼりしながら小さな声で『…ごめんなさい…』とレモンイエローの大きな目を潤ませている。
ムーンはクスクス笑いながら『キャス怒らないであげて。ファーは貴方に憧れてるのよ』
キャス「ムーン様、ファー様失礼致しました」

話し終えるとムーンの顔が険しくなり『ファー、この宮の結界に迷宮の結界を重ねて張ってちょうだい。そして、リンとアスにリチオとグラを伴ってこの部屋に来るよう伝えて』と命じる。
ファーは『わかりましたわ』と言うと、首白い大きなリボンに下げた金細工の鈴が宮中に鳴り響くと、瞬く間に始まりの女王の庭と城が濃い霧に包まれた。
ファーは結界を張り終えるとムーンの顔を見て『では、行って参りますわ』と言い残し、チリンと鈴の音を鳴らして虚空へ消えた。

ムーンはファーの消えた虚空を見据え頷くと、キャスへ視線を戻す。
ムーン『キャス。神殿参拝用の正装の支度を…』
キャスはムーンの指示で一瞬動揺するも、すぐに立ち直り「かしこまりました」とクロークへと向かった。

ベッドから降りた王妃のお腹ははち切れんばかりに大きく膨らんでいる。
待望の世継ぎが産まれると言うのに、王妃ムーンの顔には憂いの影が落ちていた…
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