±Days 四馬鹿な幼馴染みと巻き込まれ相談役の平凡ではない日常

空月

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第1章 無理やり転校編

第13話 親愛表現は相手を選びましょう

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 でもまあ、協力的なのはいいことだ。というわけで、幼馴染みズから色々聞き出したわけだけど。

「……うん成程大体わかった。とりあえずカンナ」
「うん? 何かな」
「おまえはいい加減個人情報保護法とかプライバシーとかを足蹴にするのをやめろ。犯罪だから」

 頭が……頭が痛い……。
 他の奴らも大概だが、カンナの、相手に知られないようにやっているやらかしがすごい。金と権力を駆使した立派なストーカーが爆誕していた。幼馴染みとして胃が痛い。

「別に足蹴にしているつもりはないんだけど」
「自覚がないなら尚更悪い。他の奴らも大概だが、おまえが一番性質悪いよな」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「どうしてそうなる……」

 暖簾に腕押し、糠に釘。そんなことわざが頭に浮かぶ。

「……まああんたらのやらかしは一旦置いておく。ひとまず情報としては十分だし――次のステップに行くとしよう」

 やらかしの数々を置いておいていいものか迷ったけれど、今のところそうするしかない。

「次のステップって、何をするつもりですか?」
「黙秘権を施行する」

 訊ねてきたミスミに即答すると、今度はユズがびっくりとちんぷんかんぷんをないまぜにしたような顔で声をあげた。

「え、なんでそこで黙秘権?」
「事前にあんたらに言うとロクなことにならない予感がするから。いや大抵のことはそうだけど今回は特に」
「今さりげなく酷いこと言わなかった?」
「別にさりげなく言ったつもりはなかったんだけど」

 むしろめちゃめちゃハッキリ言った。それがまともに伝わったらしい三笠さんが、感心したように口を開く。

「嬢さんハッキリ言うね」
「これくらい直球じゃないとこいつらには伝わらないんで」
「そこで容赦しないのが女神のいいところだよねっ」
「そんなキラキラした目で見られても困ります浅見さん。というかあなたに言われると色々複雑な気分に」

 浅見さんの言い方はこう……なんか……ダメな感じの含みを感じる。本人は含んでいるつもりはないんだろうけど、そこはかとなく。

「複雑な気分? なんで?」
「わからないならそれでいいので気にしないでください。ってことでちょっと行ってくる」

 さくさく行こう、さくさく。と思って場を離れようとしたのだけど、まあそううまく行くはずもなく。
 いつの間にか、けれどしっかりと握られた袖がくい、と腕をひいて、私は立ち止まらざるを得なくなった。
 その原因たるレンリが、見下ろしているのに上目遣いに感じるという、浅見さんもよくやる謎テクニックで見つめてくる。

「……行ってくるって……どこに……?」
「さっき黙秘権を施行するって言ったの聞いてなかったのかレンリ」
「聞いてた、けど……」
「その手は引き留めるつもりか着いてくるつもりかどっちだ。どっちにしろ却下だけど」

 ぎゅ、と握られた袖に目を遣りながら言うと、レンリは不服そうな顔をした。……いや、幼馴染みだからわかる程度の雰囲気の違いだけど。

「…………」
「そんな目しても駄目なもんは駄目だっての。一応あんたらのためを思って行動してやるんだから大人しく待ってろ」

 宥めるために言うと、レンリは珍しくわかりやすく表情を動かして――。

「なんでそこで嬉しそうに頬を染める……?」

 私は心なしか目もキラキラしているレンリに首を傾げることになった。

「……なあ、嬢さんのあれってマジでわかってないの?」
「何普通に話しかけてきてるのキミ。耳障りなんだけど」
「別にいいじゃないですか、カンナ。……あれは本気で言ってると思いますよ。どうにもあの辺りの認識に齟齬があるようで」
「嬢さんって実は鈍い? むしろ天然?」
「それとはちょっと違うと思いますが……うまく言い表せませんね」

 なんか性質悪い組がごにょごにょやってるけど仲良くなったんだろうか、と思いつつ、レンリに促す。

「とりあえず離せレンリ。……ユズはユズで何うずうずしてるわけ?」
「……抱きついて良いっ?」

 ……何故に? 脈絡がなさすぎる。

「何頭沸いたようなこと言ってるんだお前」
「だってだって、今のすっごく嬉しかったから!」
「嬉しかったから抱き着くっていうその繋がりがわからん。そもそも何が嬉しかったのかもだけど。あと好きな子いるのにそういうことするのはどうかと思う」

 ユズは感情表現オーバーだからまあ……今までなかったとは言わないけど、初恋の君(仮)が現れたからにはそういうところちゃんとしないとダメだろう。

「女神女神、でもハグはわかりやすい親愛の表現だよ? 僕にはいつもさせてくれるよね?」

 真っ当に窘めていたのに、浅見さんが空気読んだようで全然読んでない爆弾発言を放り込んできた。

「……‼」
「ええっ⁉ 何それずるい‼」
「……その話ちょっと詳しく聞かせてもらえるかな?」
「聞き捨てなりませんね。『いつも』ってどういうことです?」

にわかに幼馴染みズが詰め寄ってくる。うわ、めんどくさい……。

「……誤解を招くような発言は慎んでください浅見さん。いつもっていうほど無いでしょう。というかアレはあなたが勝手にしてくるだけですし」
「でも女神、口で言うほどスキンシップ嫌がらないよね?」
「何さらっと誤解を招きそうな発言を重ねてるんですか。確かに嫌いとは言いませんが、単に慣れただけです」
「奏ちゃんもスキンシップ激しいもんね!」
「そうですね、我が兄ながらアレはどうかと思いますが」

 本当に常々どうかと思っている。一般的な現代日本の兄妹としてちょっとおかしいのではくらいは思っている。まあでも外国かぶれしてるから……という言い訳が立つのは奏兄さんだけだけど……。
 と、ちょっと遠い目になっていると。

「……えいっ!」
「――っ!」

 背中に衝撃、首回りに腕の感触、頭のてっぺんには顎が載せられている気配。
 わかりやすく言うと、ユズに背後から抱きつかれた。

「ユズ何してる」
「抱きついてる?」
「だから好きな子がいるのに、他の人に簡単にそういうことするのは――」

 ユズを再度窘めていると、今度は腕に衝撃が。

「こら、レンリ。あんたまで抱きつくな」
「…………」
「そんな不服そうな顔されても。っていうか手加減しろお前全力で腕にしがみついてないか」
「…………」

 渋々、といった体で、腕を拘束する力が緩む。……緩むだけ。

「いや緩めるだけじゃなくて離そうよそこは。あとユズも離れろ暑苦しい」

 言うものの、二人とも離れる様子がない。なにこの状況。

「女神、僕も抱きついて良い?」

 だというのにさらに混沌とさせようとしてくる人がここにはいるんだよな……。

「この流れでなんでそんな発言が飛び出してきちゃうんですか。空気読んでくださいホント。あとそこの二人、不穏な空気を感じるんだがお前らまでやるなよ?」
「駄目ですか?」
「いやこの流れに便乗するくらいしか機会ないかなーって」
「駄目に決まってるだろうがこの馬鹿。便乗する流れなんてどこにもないっての」

 あと物理的に無理では? 押しくらまんじゅうでもするのか?

「あはは、嬢さんモテモテだなー」

 三笠さんは少し離れたところから謎状況を見てからから笑っている。誰も味方がいない。

「呑気に笑ってないで助けるくらいはしてくださってもいいと思うんですが」
「いやなんか馬に蹴られそうだから止めとく」
「意味不明な発言するくらいなら素直に面白がってるって言ってくれた方がいくらかマシです」
「今のも率直に言っただけなんだけどな。まあ面白がってるのも否定はしない」
「ああもうなんで私の周りはこんなんばっかりなんだよ誰か助けろ……!」

 心の底から嘆いたけれど、もちろんそれで助けが現れるはずもなく。
 結局抱きついてきた浅見さんにより身動きとれなくなりながら、私は遠い目になるしかなかった。
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