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第1章 無理やり転校編
第15話 遅ればせの本題、そして
しおりを挟む「で、今度こそ本題だけど。件の子の様子をちょっと見てきた」
気を取り直して本題に立ち戻る。
私の言葉に、幼馴染み組が納得したような表情になった。
「だから着いてくるなと言ったんですね」
「ぞろぞろ着いてきたら目立ってしょうがないし。うっかり見つかろうものなら様子見の意味がなくなる。……それで、あんたらの話と三笠さんからの情報と実際見た上での判断だけど――」
「…………」
ごくっ、と固唾を呑む幼馴染み組に、容赦なく現実を突きつけた。
「現時点で好意がまともに伝わってる確率自体低い。底辺。やたら溜息ついてた理由の八割あんたらの奇行が原因ってのが三笠さんの見解。いきなり猛勢かけたもんだから状況についていけてないっぽい。……三笠さんの見解の方は信じるも信じないも好きにすればいいけど、多少は信頼できると思ったから伝えとく。まあ人間観察が趣味とか公言してるし、意図的に間違いを言ってるんじゃなきゃ信憑性はあると思うけど」
「いやいや嬢さん、いくら俺でもワザと嘘は言わないって」
「絶対にそうだと言えるほどにあなたを知らないので。お気を悪くしたらすみません」
三笠さんの抗議は予想していたものだったので、流れるように謝罪まで済ましておく。
「それ、あんまり心籠もってないよな? ……まあ、さっき知り合ったばかりだししょうがないか」
肩を竦める三笠さんは、抗議を口にしたものの私の評あんまり気にしている様子はない。そういうところもあの人に似てるんだよな……。
関わり合いになる機会が少なければ少ないほどいいと思えてしまう、不本意ながら知り合いの人物に思いを馳せていると、固まってしまっていた幼馴染み組がやっと再起動した。
「……え、えっとー……?」
「思考を止めるな馬鹿ユズ。二度は言わないからな」
「つまり、私たちの行動は現状全くの無意味になっている、と?」
「全くとは言わない。ただ基本マイナスに働いてるだけで」
「……それ、いっそ無意味な方がマシだよね」
「だろうね、いろんな意味で。……正直、あんたらがここまで馬鹿というか子どもっぽいというかいろんな意味でダメダメだと思ってなかったから、予定が狂った」
「……予定……?」
首を傾げて問うてくるレンリと、レンリと同じく疑問を抱いているらしいその他の面々に向かって答える。
「さくっと現状把握、後にとりあえずの助言だけしてオサラバ」
再び幼馴染み組が固まった。
「……嬢さん、それつまりさっさと帰る気満々だったってことじゃ?」
「ええ、その通りです。そもそもなんで他人の恋路のために転校までしなきゃならないのかっていう……あ、思い出したらムカついてきた」
「薄々そうかなーと思ってたけど、嬢さんもしかしてそのためだけに転校してきた――させられたワケ?」
三笠さんがズバリ訊いてきた。うーん、そうやって言葉にされるとほんとふざけんなって感じだ。
「相談受けてアドバイスしたら投げやりだとか不満言われて勝手に転入手続きされてたんですよ」
「……ごめんその繋がりがよくわかんないんだけど。なんでアドバイスから転入に流れてったんだ?」
三笠さんが至極真っ当な疑問を向けてきたけど、その答えは私も持っていない。
「それは私も知りたいところですね。ということでキリキリ答えろ、はいミスミ」
「えっ、私ですか⁉ ……ええと、簡単に言えば『もっときちんとしたアドバイスを継続して貰えたら嬉しいし、ついでに長く一緒に居られるから一石二鳥』みたいな流れで」
「これまでことごとく断られてきてたし、いっそ実力行使してみてもいいんじゃないかな、とか」
「……えっと、そんな感じ?」
適当にミスミに水を向けたら、謎の幼馴染み連携でカンナとユズも補足してきた。仲いいなお前ら。
幼馴染みズ(レンリ除く)の回答を聞いた三笠さんは、しみじみと言った。
「――なんつーか、聞けば聞くほどあんたら嬢さんのこと好きすぎねぇ?」
そのストレートすぎる表現に――全員、押し黙った。
落ちた沈黙に、三笠さんがちょっと戸惑った声をあげる。
「え、ナニその反応」
それでも幼馴染み組は何も言えないでいる。仕方ないので助け船を出すことにした。
「いろいろあるので、深くつっこまないでやってください、三笠さん」
「は? ……。……まあ嬢さんがそう言うなら」
三笠さんの追及が止まったのはいいけど、私が言うならって、そんな関係性築いたっけ? と思わないでもない。まあ、深くつっこまないでおこう……。
「……で、話を戻しますが。思ってた以上にヒドイ現状だったから、ちょっと考えを改めることにした」
そう言うと、幼馴染み組が目をぱちくりとした。やっぱり長い間共に過ごした幼馴染みというのは息が合うのだろうか。タイミングが一緒だ。
ともあれ、言葉を続ける。
「放っとくにはちょっと不安すぎる。あんたらが暴走したりいろんな意味で取り返しのつかない事態に陥ったら――というか陥らせたら目も当てられないし。相手の子に申し訳なさすぎる。ってことで、仕方ないからしばらくアドバイザーやることにしようかと」
え、とか、へ、とか、言葉にならない声を漏らしてまたも固まった幼馴染み組の中で、最初に反応を返してきたのはユズだった。
「……それホント⁉」
「こんなことで嘘言ってどうする」
そんな嘘言ってもなんの利もない。それを言ってしまうと、アドバイザー続けることにも利はないわけだが。
「――つまり、このままこの学園に通ってくれるってことですか?」
「いやそれは未定」
「……!」
ミスミの問いに即答すると、レンリがあからさまにショックを受けた顔をした。そんな悲壮感漂わせるほどのことか?
その反応に動かされたわけではないけど、一応フォローを入れておく。
「そんな顔しなくても。別に積極的に拒否したいっていうわけじゃないから」
「じゃあなんで未定だなんて――、……もしかして」
言いかけたカンナは、私が煮え切らないスタンスになった理由に思い至ったようだった。頭が回らないわけじゃないんだよな……。
「多分あんたが想像してる通り。すっかり忘れ去ってたってわけじゃないみたいだな。――さっき連絡が来た。こっち向かってるって。……っていうかお前らがまさか何も言わずに転入手続きだのなんだのやったとは思わなかった」
正直な気持ちを口にすると、カンナはちょっとバツが悪そうな顔になった。
「……一応、ご両親と奏さんには了解を得たんだけど」
「いやそこは別物だから。そっちの了解が取れたからって関係ないから」
「……ですよね……」
その反応で、許可をとっていなかったのはわざとだとわかる。まあ、昨日の今日で許可を出しそうな相手でもないもんな。私の進退について裁量を持っている存在の上から順に数えるならば下の方なわけだし、親と奏兄さんの許可でゴリ押そうとしたんだろう。
「……どうする?」
「どうしましょうね」
「え、どうするの!? っていうかどうすればいいの⁈」
「無駄に騒がないでくれる? ユズ。鬱陶しい」
「なんか今日オレ暴言吐かれる率高くない!?」
「…………」
「レンリ、慰められると余計ショックなんだけど……! やっぱり気のせいじゃないってことだよね!? ショック……っ」
幼馴染み組が顔をつきあわせてわちゃわちゃやってるのを眺めていると、三笠さんがちょっと身をかがめて、ひそひそと訊ねてきた。どうやら混乱している幼馴染み組をはばかっているらしい。
「なんか場がカオスになってきたけど、何があるっての?」
「あいつらが意図的に連絡を怠った人物が来るってだけです。まあその人物が一筋縄でいかないというか色々と問題というか」
そう言うと、三笠さんは興味を惹かれた顔になる。これで興味を惹かれるところが、やっぱりあの人に似てるんだよな……。
「へぇ? 俺も会ってみたいんだけど、いい?」
「別にいいですよ。ただあんまり口を挟まないでくだされば。これ以上事態をこじれさせたら本当にめんどいことになるんで」
あんまり冗談が通じないタイプなので、本当に、本当にめんどくさいことになる。それは避けたい。円滑な話し合いのために。
「……嬢さんさぁ、俺を愉快犯かなんかだと思ってない?」
「すみません。よく似た人が事態を引っ掻き回してこじれさせる天才なので、つい」
度重なる私からの扱いにさすがに物申したくなったらしい三笠さんには申し訳ないのだけど、どうしてもあの人の影がちらついて仕方ないのだ。まあ、なんとなく、あの人ほどのめんどくささはない感じがするけれども。重ねた年齢――経験の違いだろうか。
「『みっちゃん』だっけか。知り合いでもなんでもねぇけど、恨み言の一つも言いたくなってきたな……」
「実際会っても言わないでくださいね。面白がられるだけなんで」
私の返しに、相手がどういう人間かをよくよく察したらしい三笠さんは、たっぷりとした沈黙の後に、「……了解」とだけ返してきたのだった。
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