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青い鳥②
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《LETTERSに通知があります》
自室にいた佑の携帯が鳴った。表示された送り主の名前を確認した佑はおそるおそるLETTERSアプリを開き、そこに書かれた文章に目を通す。
《メッセージ確かに受け取りました、Alice.と一緒に今日の午後、家に帰る予定です》
《追記:週末、どこか行きたいところはありますか。よければ考えておいてください》
(……よかった、父さん直ったんだ)
佑はこわばらせた表情を少し和らげて返信メッセージを打ちこむ。あの後飛ばしたAlice.が全然戻って来ないので心配していたが、無事にたどり着けたらしい。
(僕が今、行きたいところ……)
佑はここ数日のテレビ、ラジオ、新聞、インターネットなどのニュースを頭の中で思い返してみる。自分たちが暮らす白い大都会(ホワイト・メトロポリス)は地上層と地下層に分かれて成り立っている。地下層には未だ解明されていない部分も多く、地上層にはない施設や娯楽などがあるという噂だ。
(そうだ……あそこにしよう)
佑の脳裏に昨夜テレビの夜のニュース番組で見た地下層にあるという今より昔の時代のものを保存している博物館の様子が浮かぶ。あの場所なら静かで話しやすいはずだ。離れていた時間はほんの少しだというのに話したいことは山ほどあった。
*
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」
真木の部屋に戻ってきた透からコーヒーの入ったステンレス製のマグカップを手渡された真木と瀬名は礼を言って受け取る。目覚めたばかりの彼を心配して物陰からこっそり見守っていたが取り越し苦労だったらしい。
真木が修理の時に機体の新調のついでに各種システムの更新もしたらしく、その動作や振る舞いはごく自然で一目で彼の体が機械だとは見抜けないはずだ。
「ち……ちょっと待ってください小松博士、さすがにその体では飲食は無理なんじゃないですか⁈」
瀬名が透がいつの間にか自分用にコーヒーを淹れ、マグカップに口をつけようとしていたのを発見し大声で止める。その様子を見た真木がくすりと笑った。
「そんなにあわてなくても大丈夫だよ瀬名くん。彼が食べたり飲んだりしたものはそのまま、体内で疑似血液に変換されるようになってるから」
『まあ、ひと昔前のRUJの製品なら少しの水でも確実に機体内部がショートして故障するだろうな。うん……美味い』
真木の助け舟に透がマグカップの中のコーヒーをひと口飲んでからにやっと笑う。瀬名は安心して胸をなでおろしたが、緊張で体中に変な汗をかいていた。
「よかった……もう、知ってるなら先に教えてくださいよ真木博士。心臓に悪いです」
「いや、すまない。知ってると思ってたんだ、今後は気をつけるよ」
瀬名に睨まれた真木は申し訳なさそうに謝る。
『そうだ真木。君、地下層にある博物館の場所を知ってるか』
「地下層の博物館?なんでまたあんな場所に行きたいんだい」
『佑から今朝送ったメッセージの返信が来ててね、今週末に出かけようかと思ってるんだ』
真木が問うと透は自分のスーツのポケットから携帯を取り出して操作し、LETTERSアプリを開いてトーク画面を見せる。
「なるほど……いいんじゃないか、久しぶりの家族サービスも」
真木が同意すると横から瀬名が小さく挙手し、口をはさむ。
「……あの、僕場所知ってます。前々から気になっていたので一緒に行ってもいいですか小松博士」
「瀬名くん、ダメだ。君には小松博士のモニタリングの作業があるだろう」
『私は別に構わないが……。ついでに道案内をしてくれると大変助かる』
瀬名は真木にたしなめられて落ちこんだが、透が同行の許可を出したので表情が一気に明るくなった。
「ありがとうございます……!」
瀬名はひかえめにガッツポーズをし、透に何度も礼を言う。
「まあ……いいか。その代わり、彼の様子の観察と何か異変があったらすぐに僕に連絡するようにしてくれよ」
「はい!了解です」
真木は透とはしゃぐ瀬名を見てうなずく。
『……決まりだな。なんなら君も一緒にどうだい真木』
「悪いけど僕は遠慮するよ。君の様子をモニタリングする人間がいなくなる」
真木は透の提案に片手をふってやんわりと断った。
『そうか。じゃあ瀬名くん、行く日が決まったら連絡するから頼むよ』
「はい。ええと……今日の午後にご自宅に戻られる予定でしたよね?ゆっくりなさってくださいね」
瀬名が嬉しそうな表情で言うと透は無言のまま微笑み返した。
「帰る前に一応、もう一度点検だけしようか。機体とシステムを新しくアップデートしたから後から不具合が出ても大変だ」
『ああ、そうだな。そっちは君に任せるよ』
真木が透に再び台の上に横になるようにうながす。瀬名が透の肩に止まっていたAlice.を自分の両手で抱きかかえるようにして遠ざける。
「瀬名くん、別室で作業中のモニタリングを頼むよ」
透が台の上に横になったのを確認した真木から指示された瀬名はうなずき、自分の肩にAlice.を乗せたまま真木の部屋の外へと出ていった。
「じゃあ始めようか。すぐ終わるから目を閉じてリラックスしててくれ」
自室にいた佑の携帯が鳴った。表示された送り主の名前を確認した佑はおそるおそるLETTERSアプリを開き、そこに書かれた文章に目を通す。
《メッセージ確かに受け取りました、Alice.と一緒に今日の午後、家に帰る予定です》
《追記:週末、どこか行きたいところはありますか。よければ考えておいてください》
(……よかった、父さん直ったんだ)
佑はこわばらせた表情を少し和らげて返信メッセージを打ちこむ。あの後飛ばしたAlice.が全然戻って来ないので心配していたが、無事にたどり着けたらしい。
(僕が今、行きたいところ……)
佑はここ数日のテレビ、ラジオ、新聞、インターネットなどのニュースを頭の中で思い返してみる。自分たちが暮らす白い大都会(ホワイト・メトロポリス)は地上層と地下層に分かれて成り立っている。地下層には未だ解明されていない部分も多く、地上層にはない施設や娯楽などがあるという噂だ。
(そうだ……あそこにしよう)
佑の脳裏に昨夜テレビの夜のニュース番組で見た地下層にあるという今より昔の時代のものを保存している博物館の様子が浮かぶ。あの場所なら静かで話しやすいはずだ。離れていた時間はほんの少しだというのに話したいことは山ほどあった。
*
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」
真木の部屋に戻ってきた透からコーヒーの入ったステンレス製のマグカップを手渡された真木と瀬名は礼を言って受け取る。目覚めたばかりの彼を心配して物陰からこっそり見守っていたが取り越し苦労だったらしい。
真木が修理の時に機体の新調のついでに各種システムの更新もしたらしく、その動作や振る舞いはごく自然で一目で彼の体が機械だとは見抜けないはずだ。
「ち……ちょっと待ってください小松博士、さすがにその体では飲食は無理なんじゃないですか⁈」
瀬名が透がいつの間にか自分用にコーヒーを淹れ、マグカップに口をつけようとしていたのを発見し大声で止める。その様子を見た真木がくすりと笑った。
「そんなにあわてなくても大丈夫だよ瀬名くん。彼が食べたり飲んだりしたものはそのまま、体内で疑似血液に変換されるようになってるから」
『まあ、ひと昔前のRUJの製品なら少しの水でも確実に機体内部がショートして故障するだろうな。うん……美味い』
真木の助け舟に透がマグカップの中のコーヒーをひと口飲んでからにやっと笑う。瀬名は安心して胸をなでおろしたが、緊張で体中に変な汗をかいていた。
「よかった……もう、知ってるなら先に教えてくださいよ真木博士。心臓に悪いです」
「いや、すまない。知ってると思ってたんだ、今後は気をつけるよ」
瀬名に睨まれた真木は申し訳なさそうに謝る。
『そうだ真木。君、地下層にある博物館の場所を知ってるか』
「地下層の博物館?なんでまたあんな場所に行きたいんだい」
『佑から今朝送ったメッセージの返信が来ててね、今週末に出かけようかと思ってるんだ』
真木が問うと透は自分のスーツのポケットから携帯を取り出して操作し、LETTERSアプリを開いてトーク画面を見せる。
「なるほど……いいんじゃないか、久しぶりの家族サービスも」
真木が同意すると横から瀬名が小さく挙手し、口をはさむ。
「……あの、僕場所知ってます。前々から気になっていたので一緒に行ってもいいですか小松博士」
「瀬名くん、ダメだ。君には小松博士のモニタリングの作業があるだろう」
『私は別に構わないが……。ついでに道案内をしてくれると大変助かる』
瀬名は真木にたしなめられて落ちこんだが、透が同行の許可を出したので表情が一気に明るくなった。
「ありがとうございます……!」
瀬名はひかえめにガッツポーズをし、透に何度も礼を言う。
「まあ……いいか。その代わり、彼の様子の観察と何か異変があったらすぐに僕に連絡するようにしてくれよ」
「はい!了解です」
真木は透とはしゃぐ瀬名を見てうなずく。
『……決まりだな。なんなら君も一緒にどうだい真木』
「悪いけど僕は遠慮するよ。君の様子をモニタリングする人間がいなくなる」
真木は透の提案に片手をふってやんわりと断った。
『そうか。じゃあ瀬名くん、行く日が決まったら連絡するから頼むよ』
「はい。ええと……今日の午後にご自宅に戻られる予定でしたよね?ゆっくりなさってくださいね」
瀬名が嬉しそうな表情で言うと透は無言のまま微笑み返した。
「帰る前に一応、もう一度点検だけしようか。機体とシステムを新しくアップデートしたから後から不具合が出ても大変だ」
『ああ、そうだな。そっちは君に任せるよ』
真木が透に再び台の上に横になるようにうながす。瀬名が透の肩に止まっていたAlice.を自分の両手で抱きかかえるようにして遠ざける。
「瀬名くん、別室で作業中のモニタリングを頼むよ」
透が台の上に横になったのを確認した真木から指示された瀬名はうなずき、自分の肩にAlice.を乗せたまま真木の部屋の外へと出ていった。
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