恋の微熱に溺れて…

和泉 花奈

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11度:初めて記念日(慧目線)

41話

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「京香さんは何か趣味とかあるんですか?」

またいきなり唐突すぎる質問かもしれないが、俺は案外、京香さんについて知らないことが多いなということに気づかされた。
気づいた瞬間、俺が知らない京香さんについて、もっと知りたいと思った。
そう思った瞬間、気がついたら何も考えずに質問していた。今、自分が知りたいと思うことを…。

「趣味はね、ドラマや映画を見たり、読書かな。慧くんは?」

自分が質問したら、質問返しをされるのは当然だ。お互いに想い合っているのだから、相手のことに興味があるからこそ、知りたいと思うもの。ここで質問返しされない方がショックである。

「俺もドラマや映画を見たり…ですかね。俺も本が好きなので、本も読みます。あとはサッカーが好きなので、たまにテレビでサッカーを見たりする感じですかね」

特にこれといって特質するような趣味はない。大多数の人はそうであろう。
もっと面白い趣味や特技を持っていたら良かったが、俺にはそんなものないので、これが自分の趣味みたいなものになりつつある。

「そうなんだ。サッカー以外は一緒だね。今度、一緒にドラマ見たいね」

お互いにおすすめのドラマを教え合って、一緒に見たい。好きなものを好きな人と共有できるってとても幸せなことだと思う。

「そうですね。一緒にドラマを見たいですね」

京香さんがどんなドラマが好きなのか気になる。好きな作品が被っていると嬉しいな。違ってもお互いに好きな作品を共有し合えるので、それはそれでアリだ。

「お揃いのパジャマを着て、一緒にドラマを見たいね」

そんな姿を想像してみた。可愛い過ぎる京香さんに、理性が保てるか分からない。不安が過ぎった。

「ドラマを見た後、色々と覚悟しておいてくださいね」

俺の言葉の意味を察した京香さんは、一気に顔を真っ赤にさせた。
どうやら想像してしまったみたいだ。今、運転中じゃなければ、キスして襲いかかっていたかもしれない。

「…大丈夫な日なら、いいですよ」

大丈夫な日なら…か。基本、京香さんとは会えばほぼ毎回している。
身体だけの関係ではないので、もちろんしない時もある。
京香さんとなら、一緒に居られるだけで幸せだ。その気持ちに嘘偽りはない。
だからこそ、男として無責任な行動は取らない。今の俺にはまだ責任を取れる立場ではないから。
もしいつか責任を取れる覚悟を持ち、その立場に立てたら、一緒に人生を背負いたい。
でも今はまだ難しいので、お揃いのパジャマを着る日は、京香さんが大丈夫な日で、京香さんと愛し合えたらいいなと密かに願った。

「大丈夫な日か確認しておいてくださいね。大丈夫な日なら、朝までたくさん抱いちゃうかもしれませんが」

今までの俺は、ここまで欲深い人間ではなかった。寧ろ淡白で。常に冷静に判断ができて。穏やかな人間だった。
でも京香さんと出会って、こんなにも自分が欲深い人間だということを知った。
今は欲深い自分を受け入れてもらえることが嬉しくて。もっと京香さんが欲しいとさえ願ってしまう。
京香さんも同じ気持ちだろうか。同じ気持ちだと嬉しい。

「そんなにたくさんしたら、おかしくなっちゃう…」

彼女にこんなことを言われて、男として舞い上がらない男はいない。
今日、サプライズを計画していなかったら、一日中京香さんを抱いていたと思う。なんとかサプライズが、俺の理性を保たせてくれているが…。
京香さんは無自覚に男を煽っていることを知らない。それが京香さんの良さでもあり、ずるいところもでもある。そんなところが大好きなので、俺としては愛おしく思っている。

「俺としてはおかしくなっちゃう京香さんが拝めたら幸せですけどね」

そんなの彼氏としては願ったり叶ったりだ。これからも自分の手により、甘い熱に溺れていく京香さんをたくさん拝みたいと思っている。

「そうなの…?私としては恥ずかしいけどね」

京香さんの立場からしたら恥ずかしいに決まってる。俺だって恥ずかしい。京香さんに見られていると思うと。
それ以上に京香さんと一つに繋がっている幸せの方が大きくて。恥ずかしさを忘れてしまう。
京香さんも最中は忘れてしまっているのかもしれないが、こうして冷静な時に想像してしまうと、恥ずかしさが込み上げてくるのであろう。

「それはそれで可愛いですけどね」

京香さんなら、どんな姿でも可愛い。恋は盲目という言葉がある通り、俺は今、盲目状態だ。
盲目状態じゃなくても、京香さんは可愛い。女神様といった方が正しい。
京香さんは優しくて。美人で。性格も良くて。理想の彼女だ。そんな人と付き合えているだけで幸せだ。

「…もう。慧くんったら」

照れて恥ずかしくなり、顔を真っ赤にさせている。俺はそんな京香さんの姿を見て、思わず笑みが零れた。

「そろそろ目的地に着きます」

唐突にこの場の空気を変えた。もうすぐ目的地に着くのも本当だが、話題を変えずにこのままずっと話を続けていたら、目的を忘れてホテルへ直行してしまいそうだから。
それでは今まで準備してきた意味がないので、ここは準備通りに事を進めようと思う。その代わり、盛大に成功させてみせる。京香さんに喜んでもらうために。

「そうなの?一体、どんな所に連れてかれるんだろう?うわぁ…、緊張してきた。でも同時に楽しみだな…」

隣でワクワクしている京香さんが可愛い。何をするにもこうやって喜んでもらえるので、俺としては嬉しいし、色々計画しがいがある。

「もうすぐ答えが分かりますので。もう着きますよ」

俺は目的地の近くの駐車場に車を停めた。お店が都会のどん真ん中にあるため、さすがに店の前に車を停められないし、そもそもお店専用の駐車場がない。
都会ではよくある光景なので、近場の駐車場を探すのも大切な事前準備だ。相手を不安に思わせないエスコート力として。

「さて。目的地まで歩いて向かいましょう」

手を繋いで目的地まで向かった。本当は目的地まで目隠しして連れて行き、着いた途端、目隠しを外す…というのを考えたが、その方が逆に京香さんに不信感を抱かれてしまいそうなので、普通に目的地まで連れていくことにした。

「ここが目的地です」

駐車場から歩いて数分後、あっという間に目的地まで着いた。
迷わないように、駐車場から目的地まで歩く練習を事前にしておいた。なんでも事前に練習しておかないと不安だ。初めて行く場所だから。

「ここって…」

見るからに高級店の雰囲気が外装から伝わってくる。そんな様子が京香さんの表情を見て伝わってきた。

「行きましょう。付いてきてください」

京香さんの手を引いて、お店の中へと入った。すると、すぐに店員さんが、「いらっしゃいませ」と声をかけてきた。

「すみません。予約した羽月ですけど…」

「羽月様ですね。お待ちしておりました。お席へご案内致します…」

事前に予約していたことに、驚いているみたいだ。それもそうだ。京香さんからしたら、今日は何も特別な日でもないのだから。
それなのにどうして高級ランチに?!っていう反応を示すのは当然だ。俺も逆の立場だったら、同じ反応を示している。

「こちらのお席でよろしいでしょうか?」

一応、事前に予約しておいたので、どんな席がいいか指定できたので指定しておいた。
部屋は個室で。テーブルがあって、椅子の席。広くて伸び伸びできる部屋がいいなと思い、そういう部屋を選んだ。

「大丈夫です。ありがとうございます」

「畏まりました。何かございましたら、お声かけください。どうぞごゆっくりおくつろぎ下さいませ。失礼致します」

注文も事前にコース料理を予約しておいたので、あとは飲み物を注文するだけだ。
但し京香さんに苦手な食べ物があった場合、食べられないので、今日のコース料理のメニュー表を事前に用意しておいてもらった。
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