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8章:新しい一歩と将来への不安…
17話
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蒼空との件が片付いてから、ずっと穏やかなお付き合いが続いている。
アルバイトも変わらずに続いている。蒼空も引き続き、カフェで働いている。
変に避けられることもなく、同僚として上手くやっている。
きっと間に小林さんがいるから、変な空気にならずに済んでいるというのもある。
今のところ色々上手くいっているため、何事もなく平穏に過ごしているわけだが。
こんなにも平穏な日々が続くと、逆に不安が過ってしまう。
贅沢な悩みだ。自分がこんなことで悩む日がくるなんて、一年前の私には想像できなかったと思う。
それぐらい、幸せな日々を過ごしている。私はこの幸せが続けば、他に何も要らなかった。
*
そんな中で新たな出来事が突然、起きた。
「ねぇ、幸奈」
いつも通り、愁とまったりお家で過ごしていた時のことだった。
何気ない会話だと思い、呑気に何も考えずに返事をした。
「ん?何?」
「そろそろ俺達、同棲しないか?」
全く考えていなかった。愁と付き合えただけで充分、幸せで。満足していた。
愁はちゃんと先のことまで考えてくれていると知り、自分が何も考えていなかったことを反省した。
その上で自分がどうしたいか考えた。考えてもいきなりすぐに答えは出せない。二人にとって大事なことだからこそ、ちゃんと考えてから答えを出したい。
「…今すぐに答えを出せないから、考える時間をもらってもいい?」
私達はまだ大学生だ。親の力も借りて、なんとか生活している。
そんな状態で同棲をすることなんて、私には到底、考えられなかった。
自分達の気持ちだけでは決められない。考えなくてはならない問題が山積みなわけで。誰かとお付き合いするのって、ただ楽しいことだけじゃないことを知った。
「もちろん、そんなすぐに答えを出せないと思うから、幸奈なりにゆっくり時間をかけて、答えを決めてほしい」
ゆっくりではあるが、どうやら知らない間に恋人として関係値を上げていたみたいだ。
ずっと同じままではいられない。いつかもっと色んな問題に直面するかもしれない。
私達にもようやくその時期が訪れたのだと思うと、私もちゃんと愁みたいに自分の想いが伝えられたらいいなと思う。
「分かった。ちゃんと私なりに考えて、答えを決めるね」
「おう。気長に待ってる」
まだ上手く考えは纏まっていないけど、前向きな答えが出せたらいいなと思う。
なるべく早く答えが出せるように、真剣に私は考えた。
*
…とはいっても、一人では抱えきれないので、お昼休みに友達に相談した。
「試しに同棲してみるのもアリじゃない?」
友達の回答は案外、軽い返答だった。
友達の返答を聞いて、私が考えすぎなのかな?と思った。
「お互いに大学生同士だから、結婚はさすがに難しいし、相手もそこまでの覚悟は持てないと思う。
でも、お互いにアルバイトをしているわけだし、ちゃんと稼ぎはある。逆に今、学生だからこそ、結婚の真似事というか、まだ結婚を前提としない同棲は、今しかできないと思うよ」
友達の言葉を聞き、今の自分達に合う恋人としての付き合い方は、これしかないと思った。
いつどんな時でも、友達は私の悩みを消し飛ぶくらい、的確なことを言ってくれる。
今の私に大事なのは、愁と同棲したいかしたくないか…。
それ以外のことは、愁と二人でゆっくり考えることにした。
「そっか。そういう考えもあるのか。私、難しく考え過ぎてたかも」
「そう?私は幸奈の気持ち、分かるな」
一人の友達が、遅れて話に入ってきた。
私はその友達の言葉に、胸がドキッとした。
「だって私達、学生だもん。将来のことはまだ未知すぎて、色々考えられないし。今を生き抜くことに必死だからね。これから就活もしなきゃだし」
就活…。その言葉は今の私達に重くのしかかる。
今は二年生だけど、来年は三年生。そうなると、本格的に就活を始めなくてはならない。
その時のことを想像するだけで怖い。就活が上手くいくかも分からないし、その中で同棲する不安も大きい。
本当に私達、この先上手くやっていけるのかな。今の私達にとって、何が大事なのだろうか。
友達に相談したら、益々分からなくなってしまった。自分のことなのに、人の言葉に左右されっぱなしだ。
「確かに。それもあるよね。就活か。考えるだけで胃が痛い…」
「それな。もう嫌だ。ずっとこのままがいい…」
友達は就活のことで頭がいっぱいみたいだ。いつの間にか話の方向性が変わっていた。
私は一人、色んな不安に襲われていた。結局、振り出しに戻ってしまった。
「今からどんな仕事がしたいか、考えないとだね」
「だね。気が重いけど、時間がないから、ちゃんと考えないと」
私も今から就活についても考えなくては…という焦りもありつつ、同棲という新たな課題についても考えなくてはならないという不安で、頭がゴチャゴチャしている。
このゴチャゴチャを、また別の人達に相談することにした。
*
「…ってことがありまして。お二人はどう思いますか?」
つい最近、フった相手に相談してみた。大学の友達と話した内容も一緒に…。
「俺は今までの彼女と同棲したことないから分からねーけど、幸奈の彼氏が幸奈と同棲したいって思う気持ちは分かる」
蒼空はきっと同じ人を好きになった者同士、どこか愁と共感できるところがあるのだろう。
「私は一回だけ彼氏と同棲したことあるよ。はっきり言わせてもらうけど、良いところもダメなところもあるけど、お互いのことを更に知るためには良いきっかけになると思うよ」
小林さんはどうやら、同棲経験があるみたいだ。
そのことに私は驚きを隠せなかった。
「小林さん、同棲してたんだね…」
「うん。一年前にね。マンネリ化して、レスになっちゃったから、私から別れを告げて、別れたのと同時に同棲を解消しちゃったけど」
小林さんは昔を懐かしみ、一瞬、悲しい顔をした。
でも、すぐに私の目をまっすぐに見つめてきた。
「私は大平さんが彼氏さんとどうしたいかって気持ちの方が大事だと思う。私も同じ立場だから、先々のことで不安に思う気持ちも分かる。そういうのも含めて、彼氏さんと話してみたらどう?」
小林さんの言葉が、胸の奥に突き刺さった。小林さんが経験者だからというのもあるが、今の自分自身について的確に欲しい言葉をもらったから、深く胸に響いたんだと思う。
ちゃんと自分のことを見てくれる人はいて。そういう人の言葉だからこそ、自分のためを思って言ってくれていることが伝わり、胸に深く突き刺さる。
「そうだね。愁とちゃんと話し合おうと思う」
私の気持ちはまだ固まっていない。どうしたいのかなんてよく分からない。
でもその気持ちさえもちゃんと伝えないと、愁はずっと私の気持ちが分からないままだ。
そのすれ違いが今、小さいものだとしても、そのうち積み重ねていくうちに、どんどん大きいものへと変わっていく。
それは嫌だ。この先もずっと愁と一緒に居たいから。一緒に居るために、どんな小さなことでも二人で一緒に向き合っていきたい。
「よし。休憩終了。残りの時間も頑張って働こう」
小林さんが喝を入れてくれた。私はその喝に勇気をもらった。
「うん。頑張るぞ」
バイトが終わったら、愁に連絡しよう。そして、できるだけ早く話をしよう。
その話し合いが二人にとって良い方向に進むことを願った。
アルバイトも変わらずに続いている。蒼空も引き続き、カフェで働いている。
変に避けられることもなく、同僚として上手くやっている。
きっと間に小林さんがいるから、変な空気にならずに済んでいるというのもある。
今のところ色々上手くいっているため、何事もなく平穏に過ごしているわけだが。
こんなにも平穏な日々が続くと、逆に不安が過ってしまう。
贅沢な悩みだ。自分がこんなことで悩む日がくるなんて、一年前の私には想像できなかったと思う。
それぐらい、幸せな日々を過ごしている。私はこの幸せが続けば、他に何も要らなかった。
*
そんな中で新たな出来事が突然、起きた。
「ねぇ、幸奈」
いつも通り、愁とまったりお家で過ごしていた時のことだった。
何気ない会話だと思い、呑気に何も考えずに返事をした。
「ん?何?」
「そろそろ俺達、同棲しないか?」
全く考えていなかった。愁と付き合えただけで充分、幸せで。満足していた。
愁はちゃんと先のことまで考えてくれていると知り、自分が何も考えていなかったことを反省した。
その上で自分がどうしたいか考えた。考えてもいきなりすぐに答えは出せない。二人にとって大事なことだからこそ、ちゃんと考えてから答えを出したい。
「…今すぐに答えを出せないから、考える時間をもらってもいい?」
私達はまだ大学生だ。親の力も借りて、なんとか生活している。
そんな状態で同棲をすることなんて、私には到底、考えられなかった。
自分達の気持ちだけでは決められない。考えなくてはならない問題が山積みなわけで。誰かとお付き合いするのって、ただ楽しいことだけじゃないことを知った。
「もちろん、そんなすぐに答えを出せないと思うから、幸奈なりにゆっくり時間をかけて、答えを決めてほしい」
ゆっくりではあるが、どうやら知らない間に恋人として関係値を上げていたみたいだ。
ずっと同じままではいられない。いつかもっと色んな問題に直面するかもしれない。
私達にもようやくその時期が訪れたのだと思うと、私もちゃんと愁みたいに自分の想いが伝えられたらいいなと思う。
「分かった。ちゃんと私なりに考えて、答えを決めるね」
「おう。気長に待ってる」
まだ上手く考えは纏まっていないけど、前向きな答えが出せたらいいなと思う。
なるべく早く答えが出せるように、真剣に私は考えた。
*
…とはいっても、一人では抱えきれないので、お昼休みに友達に相談した。
「試しに同棲してみるのもアリじゃない?」
友達の回答は案外、軽い返答だった。
友達の返答を聞いて、私が考えすぎなのかな?と思った。
「お互いに大学生同士だから、結婚はさすがに難しいし、相手もそこまでの覚悟は持てないと思う。
でも、お互いにアルバイトをしているわけだし、ちゃんと稼ぎはある。逆に今、学生だからこそ、結婚の真似事というか、まだ結婚を前提としない同棲は、今しかできないと思うよ」
友達の言葉を聞き、今の自分達に合う恋人としての付き合い方は、これしかないと思った。
いつどんな時でも、友達は私の悩みを消し飛ぶくらい、的確なことを言ってくれる。
今の私に大事なのは、愁と同棲したいかしたくないか…。
それ以外のことは、愁と二人でゆっくり考えることにした。
「そっか。そういう考えもあるのか。私、難しく考え過ぎてたかも」
「そう?私は幸奈の気持ち、分かるな」
一人の友達が、遅れて話に入ってきた。
私はその友達の言葉に、胸がドキッとした。
「だって私達、学生だもん。将来のことはまだ未知すぎて、色々考えられないし。今を生き抜くことに必死だからね。これから就活もしなきゃだし」
就活…。その言葉は今の私達に重くのしかかる。
今は二年生だけど、来年は三年生。そうなると、本格的に就活を始めなくてはならない。
その時のことを想像するだけで怖い。就活が上手くいくかも分からないし、その中で同棲する不安も大きい。
本当に私達、この先上手くやっていけるのかな。今の私達にとって、何が大事なのだろうか。
友達に相談したら、益々分からなくなってしまった。自分のことなのに、人の言葉に左右されっぱなしだ。
「確かに。それもあるよね。就活か。考えるだけで胃が痛い…」
「それな。もう嫌だ。ずっとこのままがいい…」
友達は就活のことで頭がいっぱいみたいだ。いつの間にか話の方向性が変わっていた。
私は一人、色んな不安に襲われていた。結局、振り出しに戻ってしまった。
「今からどんな仕事がしたいか、考えないとだね」
「だね。気が重いけど、時間がないから、ちゃんと考えないと」
私も今から就活についても考えなくては…という焦りもありつつ、同棲という新たな課題についても考えなくてはならないという不安で、頭がゴチャゴチャしている。
このゴチャゴチャを、また別の人達に相談することにした。
*
「…ってことがありまして。お二人はどう思いますか?」
つい最近、フった相手に相談してみた。大学の友達と話した内容も一緒に…。
「俺は今までの彼女と同棲したことないから分からねーけど、幸奈の彼氏が幸奈と同棲したいって思う気持ちは分かる」
蒼空はきっと同じ人を好きになった者同士、どこか愁と共感できるところがあるのだろう。
「私は一回だけ彼氏と同棲したことあるよ。はっきり言わせてもらうけど、良いところもダメなところもあるけど、お互いのことを更に知るためには良いきっかけになると思うよ」
小林さんはどうやら、同棲経験があるみたいだ。
そのことに私は驚きを隠せなかった。
「小林さん、同棲してたんだね…」
「うん。一年前にね。マンネリ化して、レスになっちゃったから、私から別れを告げて、別れたのと同時に同棲を解消しちゃったけど」
小林さんは昔を懐かしみ、一瞬、悲しい顔をした。
でも、すぐに私の目をまっすぐに見つめてきた。
「私は大平さんが彼氏さんとどうしたいかって気持ちの方が大事だと思う。私も同じ立場だから、先々のことで不安に思う気持ちも分かる。そういうのも含めて、彼氏さんと話してみたらどう?」
小林さんの言葉が、胸の奥に突き刺さった。小林さんが経験者だからというのもあるが、今の自分自身について的確に欲しい言葉をもらったから、深く胸に響いたんだと思う。
ちゃんと自分のことを見てくれる人はいて。そういう人の言葉だからこそ、自分のためを思って言ってくれていることが伝わり、胸に深く突き刺さる。
「そうだね。愁とちゃんと話し合おうと思う」
私の気持ちはまだ固まっていない。どうしたいのかなんてよく分からない。
でもその気持ちさえもちゃんと伝えないと、愁はずっと私の気持ちが分からないままだ。
そのすれ違いが今、小さいものだとしても、そのうち積み重ねていくうちに、どんどん大きいものへと変わっていく。
それは嫌だ。この先もずっと愁と一緒に居たいから。一緒に居るために、どんな小さなことでも二人で一緒に向き合っていきたい。
「よし。休憩終了。残りの時間も頑張って働こう」
小林さんが喝を入れてくれた。私はその喝に勇気をもらった。
「うん。頑張るぞ」
バイトが終わったら、愁に連絡しよう。そして、できるだけ早く話をしよう。
その話し合いが二人にとって良い方向に進むことを願った。
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