すいませんが、この人は自分のものです

アカシア

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第20話弱すぎる

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「こいこい」
「っえ」
「こいこい」
「むぅ」
「澪、弱すぎ」
「花札はやめましょう、花札ではなく、別のゲーム……これでどうですか?」

澪は花札ではおれに敵わないと思ったのか、別のゲームを探し、音ゲーに指をさした

「音ゲーでいいの?」
「はい、今度こそ蒼君を負かしてみせます」

自分で言うのも変だけど、おれは音ゲーが上手い部類
花札は運要素があるから手加減の仕方がわからなかったけど、音ゲーだったら手加減できる

しかし、おれの考えを邪魔したのはたった1つの感情
——プライドだった

初心者に負けても良いのか?そんなのおれ自身が許すわけないよな

そして、おれは澪が選んだ曲を演奏したんだが
もちろんボコボコにしてやった

「……」

澪は、音ゲーのカセットを静かに抜き、レースゲームのカセットを入れ込んだ

しかし、家にあるってことはおれがしたくて買ったゲームなので、経験値も操作の精密さも持ち主が初心者に負けることなんてなかった
なおかつ、おれは初心者が絶対に気づかなそうなショートカットを全レース使い、圧倒的な差で勝った

澪は、花札でも全敗し、何故か知らないけど、闘志を燃やしてしまったらしく、たくさんの対戦ゲームをしたが、ご覧の通り、澪はどんなゲームでもおれに負けた

「蒼君って、手加減知らないんですね」

澪は目尻に涙を浮かべていた
正直な所、かわいそうだとは思わず、もっとボコしてやろう、そう思ってしまった

「もう一戦する?」
「誰がするんですか!蒼君とはもうしません」

澪はプイっと顔を横に逸らし、頬を少し膨らませていた
申し訳ないけど、可愛い、そしてもっといじめたい
けど、これ以上したら明日の朝昼晩ご飯が無くなりそうなので、感情を押し殺し、澪に謝った

「ごめんな、手加減しなかったおれが悪かったよ」
「じゃあ、夏休み中絶対に寝る時は添い寝にしましょう」
「今更?さっき言ってたじゃんずっとひっつくって?」

この時、おれの考えは浅さかな考えに変わった
澪の考えの方が一段階上だった

「昼寝の時も良いって事ですね、流石にダメかなーって思ったんですが」
「まてまて」
「ん?」
「ん?じゃねーよ、普通に考えておかしいのは、澪の方だぞ」
「せっかくの夏休みなんですよ?、ずっと私は蒼君に甘えたいんです」

上目遣いで言ってきたが、流石におれだってプライバシーぐらい欲しい

「甘えるのはいいけど、少しぐらいは自由をくれ」
「……自由ですか……わかりました、ずっとはやめます、ですが、夜の寝るときは一緒、ね?」
「ありがとう、夜の寝るときは一緒って約束するよ」
「わかりました。指切りですげんまんです」

澪は微笑みながら、小指を立ておれに向かってきた。
おれも、笑みを浮かべながら、小指を立て、合図とともに、指を絡めて、上下に動かした

「では、私は宿題をします、一緒にどうですか?」
「おれも今からするところだったよ」
「でしたら、数学を教えてくれませんか?」
「いいよ」

おれは、自分の部屋に戻り、数学の宿題を手に取り、リビングに戻ってきた。

「とりあえず、宿題の確認からだな」
「はい」
「宿題は、ワークと、模試の過去問……異常だな、もう少し減らして欲しい」
「わかります、数弱の私にとって、模試の数学なんて見たくないですもん」
「まぁ、10月の模試までにはなんとかしようか、おれもわかりやすく説明するから」
「お願いします」

澪が数学の宿題を広げて机に向かっている隣で、俺も自分の問題集を解いていた。
こうやって同じ時間を共有するのは、どこか心地いい。澪が集中しているときは特に静かで、たまに聞こえるペンの走る音が妙に落ち着く。

しばらくすると、澪が小さな声

「蒼君…」

俺を呼んだ。顔を上げると、澪が少し困った顔をしながらノートを指差している。

「ここの問題、どうしても答えが合わなくて…。蒼君、ちょっと見てもらってもいいですか?」

俺は彼女のノートを覗き込み、問題を確認する。2次関数の問題だった。どうやら、途中の計算でミスがあるみたいだ。
おれは澪のノートを見た。平方完成とかかな、何となく間違えそうな場所を思い浮かべながら見ていた。そして一つの簡単なミスに気づいた

「ここ、このマイナスが抜けてるから、次の計算からずれちゃってる」

指でノートの計算式を軽くなぞりながら説明すると、澪は

「あ…本当ですね」

恥ずかしそうに小さく笑った。

「気付かなかったです…。ありがとうございます」

「まあ、こういうのはよくあることだよ。特に途中式が長くなると、見落としやすいしな」

俺も中学の時模試を何回か受けたけど、符号ミスでの減点はブチギレそうになる、まぁ計算する道筋自体は合っているから良いんだけど

おれはそんな事を思いながら彼女のノートに正しい式を書き足した。

「これで進めてみて。たぶん、次はスムーズにいくはずだから」
「はい」

澪は素直に頷いて、また問題に取りかかった。その横顔は真剣で、少し前髪をかき上げる仕草がなんだか印象的だった。

「蒼君は、いつもスラスラ解けてすごいですね」

澪がふとそう言いながら俺をちらりと見た。

「別にすごくないよ。ただ、これも慣れだと思う。回数重ねてると、自然とやり方が分かるようになるからさ」

俺がそう答えると、澪は小さく

「そうなんですね…」

そう呟いて、またノートに向かった。その横顔を見ながら、俺は彼女が真剣に頑張る姿を少しだけ見とれてしまった





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