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エピローグ
しおりを挟む大きな木がそびえ立っている丘の上、二人の幼い男女が並んでいた。
少年の方は少女の前に立ち、手を差し出した。
「ねぇ、初めて会ったばかりで、何言ってるのか分からないかも知れないんだけど……もしよかったら、俺たち……友達になれないか?」
「友達…?ふふ、それは素敵な響きね!」
そう言って少女は駆け出し、丘の一番高い場所、木に登り始めた。少女は慣れているのか、あっという間に木の枝の上に立った。
そして少女は少年を見下ろし、こう言った。
「ねぇ!もし、友達になりたいのなら、ここまで来て。そして私の手を取って!そうしたら、私の名前、教えてあげる!」
その言葉を皮切りに少年は木に駆け寄り、木に足を掛けた。少年は木を初めて登っている様子で、奮闘しながら、少女が座っている枝の下までやって来た。
もう少し、というところで少年は足を滑らせ、落ちそうになった。そんな少年の手を、少女は既すんでのところで掴まえた。
「大丈夫!?」
「っ、……あぁ、大丈夫だ。」
少年は少女の助けを借りながら、なんとか少女と同じ木の枝までやって来た。
しかし、その手はいまだに握られたまま。
「……?」
少女は、掴まれたままの手と少年の顔を交互に見ながら、不思議そうな顔をする。
少年はニカッと笑い、握った手をさらに強く握り、上に上げる。
「ふふ、捕まえた。もう友達だね!」
「…!……そういうことね…!負けちゃったわ。」
「それで、君の名前は?」
「…人の名前を聞く前に、自分の名前を教えた方がいいわよ?」
「あっ、そうだったね……俺は、レオンハルト。」
「…私は、リリアーナ。よろしくね!」
「なんだか……俺たち、始めて会った気がしないな。こうやって自己紹介するのも。」
「!…奇遇ね、私もそう思ってた所。」
そう言って二人は静かに、沈み行く太陽を眺めた。
ふと、レオンと呼ばれた少年が呟く。
「ねぇ、リリアーナ。俺たちさ、今度こそ、一緒にいられると思う?」
「え?……よく、わからないけど……でもきっと、いられるよ。…だって……」
「だって…?」
「私たち、もう、お友達でしょ?」
「!…そう、だよな。」
「……ねぇ、レオンハルトのこと、レオンって呼んでいい?」
「もちろん。じゃあリリアーナは……リア…か、リリー?」
「……リリーが、いいな。なんだか、そう呼ばれる方が心地いいから。」
「…リリー。」
「なぁに?レオン。」
「…呼んでみただけ。」
「もう!からかわないでよ!」
そう言ってリリーは口を尖らせる。
「ごめん。……でも、こういうのが、幸せってことなんだよな。」
「レオン…?」
「……何でもないよ、リリー。」
──分からない。この少女、リリーを見た瞬間から、こんな切なくて、でもどこか懐かしい焦燥感に駆られる。
──昔から心の奥深くで、誰かが叫んでいた。それが何なのかわからなかったけど、リリーと出逢ってからはよりいっそう叫びが強くなった。
──絶対に、この少女を離すな。今度こそ、一緒に居るために。
──それは多分、俺の意思ではなくて、俺の意思。
─今度こそ、一緒にいられるかな─。
そう言ったのは、前の俺はリリーと一緒に居られなかったからだろう。
──だから、俺は絶対にリリーを離さない。
──今度こそ。愛してるを、伝えるよ。
──この気持ちは、何だろう。
──貴方と出逢ったときから……いや、ずっと前から気になっていました。
──でも、今なら分かります。
──前の私はきっと、貴方と一緒に居られなかった。
──一緒に居ることを、許されなかった。
──愛してるを、伝えられなかったから。
──だからきっと今、出逢ったんですよね。
──ねぇ、レオン様。 今度こそ、一緒に居てくださいね。
──そして今度こそ、貴方に。愛してるを、伝えます。
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