愛におびえた少年は騎士に愛され己を知る

ハクシタ

文字の大きさ
4 / 7

4 気持ち

しおりを挟む
「彼を飼っていたのは……国王だ」












「……それはずいぶんと厄介な」
フィンティアは眉間に皺をよせ考え込んでしまった。

そもそも王族は昔から神の末裔として国をまとめる役目を担ってきた。彼らは国民をまとめあげ、豊かな暮らしを保証しているのであり、国民を自分たちの所有物として扱うことは神の誓いに反するものとして許されていないのだ。
反して貴族はというと神の子孫というわけではなく、彼らは大きな功績をあげたことにより称えられる存在として名を与えられたまでで国民に過ぎない。そのため奴隷制度もそれに沿った規定となっているのだ。






------






「ネフウス王の噂をしっているか?」
「噂?」
「あぁ、彼は珍しいものが好きで様々な国から珍しい楽器や書物、動物や装飾品などを買い集めている。だから君がガレヴァーユの奴隷制度について聞きたいといってきたとき少しだけ疑ったんだ。だがまさか本当に人間も買っていたとは。」

フィンティアの話を聞いてディフェウスは怒りを覚えた。








「つまりニクスは彼の趣味のせいで長年苦しめられてきたということか」


その時普段は感情をあまり表に出さないディフェウスは誰が見てもわかるぐらい腹を立てていた。


「君がそこまで怒るとは、初めてなんじゃないか?」
「なぜか彼のことになると感情が抑えられなくてな」
「ほぉ。ディーよ、それは君が彼を気になっているということだな」







ここでディフェウスは己の感情に気づかされる。
私は彼のことが気になるのか。


最初にあったときはラウスであることに驚いたが彼の華奢で今にも倒れてしまいそうな体、男にしては少し高い声、白い肌、あの泣き顔。なぜか無性に守りたくなる。

もっと彼のそばにいたい。もっと彼を知りたい。彼を守ってやりたい。
ディフェウスは自分にこんなにも執着心があったのかと自分の思いを自覚する。








「ネフウス王は今頃彼を探し回っているのだろう。一度手にしたものを手放したという話は聞いたことがない。このままでは見つかるのも時間の問題だろう。」





フィンティアの一言で現実に引き戻される。



「ならば、私が預かろう。騎士団寮は私の隣が一つ空いている。騎士団にいれば襲われることもなくこの国のどこよりも安全だろう。」
「私もそれがいいと考えていたところだ。だがまずは彼に聞いてみないといけないな」
「あぁ、それなら明日私が聞いてこよう。」
「君、そんなに積極的な人間だったかい?」

フィンティアは少しあきれたように言った。

何と言われようと自分が彼に近づきたいと思っていることは本当なのでにやけている王子は置いといて残りの仕事に取り掛かるため執務室を後にした。













------


翌日、お昼を過ぎたころ何か持っていこうとラックという甘い焼き菓子をかって宝石店を訪れた。店先では花壇を手入れするカイルがいた。


「おや、ディフェウスさんいらっしゃい。」
「ニクスは?」
「店の中におりますよ。掃除を手伝ってもらっていたところです。」

目的は彼であるとわかっていたようだ。



扉を開ければ、店内に鈴の音が響き渡る。




「いらっしゃいませ。」


慣れていないのか少したどたどしいあいさつで出迎えてくれたのはニクスだった。


「あっ……ディフェウスさん。」
「やぁ、昨日ぶりだ。やはり少し目が赤くなっているな。」
「……昨日はご迷惑をおかけしました。」

彼は少し恥ずかしそうに顔を下に向けながら言った。
「そんなことはない。大丈夫か?」
と右手で彼の頬に触れようとしたとき


「パンッ……!」


その右手は彼に手によってかわされてしまう。すると彼は顔面蒼白になり震えながら




「あっ……、もっ申し訳ございません!」



頭を床につけ謝るのにはいきすぎた態勢で謝罪をしてきた。
彼は何度も何度も繰り返し、震えは止まらなかった。


それに慌てたのはディフェウスのほうだった。




「そんなに謝らなくていい!私が不躾に触ろうとしたのがいけなかったのだ。どうか頭を上げてくれ。」
それでもなかなか体を起こしてくれない彼に焦りを感じた。
腰を折り、頭を下げるだけの態勢ならまだいい、しかし頭を地面に擦り付け何度も許しをこう態勢は罪人が許しをこう場面でしか見たことがなかった。






怖がらせないようできるだけ優しい声で言う





「大丈夫、大丈夫だ。私は怒ってなどいない。私はネフウスではない。」







最後の言葉にニクスの頭がわずかに揺れる。







「……ディフェウスさん?」
「あぁ、私だ。大丈夫か?」
「あっ……僕、すみません。また…取り乱してしまって。」

そういうと彼はすぐに立ち上がり触るのに慣れていないものでとくちにした。
わずかに唇を震わせ無理やり作ったであろう笑顔で。









なれていないわけではないのだろう。おそらく触られるということに対して恐怖を抱いているのだろうと思ったがいま聞くのはよくないと、心の中にとどめておいた。


「それならいいのだが。」
「すみませんでした。ディフェウスさん、なにかお探しだったのですか?」


そこで自分は騎士団の件で来ていたのだと思い出す。



「いや、宝石を買いに来たわけではないのだ。」
「では……どういった…」







「ニクス、騎士団で働く気はないか?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

泥酔している間に愛人契約されていたんだが

暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。 黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。 かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。 だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。 元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。 交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

呪いで猫にされた騎士は屈強な傭兵に拾われる

結衣可
BL
呪いで猫にされた騎士は屈強な傭兵に拾われる

異世界転移をした俺は文通相手の家にお世話になることになりました

陽花紫
BL
異世界転移をしたハルトには、週に一度の楽しみがあった。 それは、文通であった。ハルトの身を受け入れてくれた老人ハンスが、文字の練習のためにと勧めたのだ。 文通相手は、年上のセラ。 手紙の上では”ハル”と名乗り、多くのやりとりを重ねていた。 ある日、ハンスが亡くなってしまう。見知らぬ世界で一人となったハルトの唯一の心の支えは、セラだけであった。 シリアスほのぼの、最終的にはハッピーエンドになる予定です。 ハルトとセラ、視点が交互に変わって話が進んでいきます。 小説家になろうにも掲載中です。

天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

処理中です...