愛におびえた少年は騎士に愛され己を知る

ハクシタ

文字の大きさ
5 / 7

5 提案

しおりを挟む
「騎士団ではたらかないか?」












その言葉にニクスは虚を突かれたように固まる。

「……騎士団ですか?」
「あぁ、そこで入団したばかりの者たちと書類整理といった雑用にはなるが働かないか?寮に一部屋余っているからそこに住めばいい。もちろん賃金も出そう。」






ニクスにとっては都合がよすぎる条件だった。ニクスにとってここは異国。単身わたってきた身として、住む場所も
なければお金も、服も食べ物も何もかもないのだ。このままカイルのお世話になっているのも気が引けてしまう。こんな状況であれば誰しもが食いつくだろう。しかし、ニクスにはそれはできなかった。








「それでは…騎士団の皆様に迷惑になります。」




「どういうことだ?」









「私は何の知識も技術もなければ戦うすべもなく、異国から不法に入国してきた者なのです。日々努力を積み重ね騎士団にお入りになられた皆様のお顔が立ちません。」








ディフェウスは騎士団のことを何よりも大切にしていた。彼らのことも考えたうえでの理由に好感を抱く。






「何も迷惑なことはない。事情を知った彼らなら受け入れてくれる。」
ディフェウスから見ても彼らは情け深く、仲間思いだ。





しかしニクスの表情はいっこうに晴れない。
おそらく一番の理由であろう言葉を口にする。
















「僕はネフウス王の奴隷でした。こんなけがれた身を受け入れてくれるはずはありません。それに彼は僕のことを探しています。もしも居場所がばれて…騎士団の皆様に手が加えられるようなことがあれば……僕は耐えられません。」














「君は私たちをみくびっているのか?」



わずかにニクスの肩が上がる。


「私たちは日々の訓練を怠らずいつでも戦えるように準備している。国もまとめられていない王の手下など相手ではない。もしばれるようなことがあっても必ず守り抜こう。」









これは慰めではない、真実なのだ。



「彼らでなくとも私が守ってやる。」



少しだけ重い沈黙が流れる。


そこへ、カイルが戻ってきた。






「一息ついたらどうですか?」
そういって気づけばカイルがディフェウスが持ってきていたラックと紅茶をお盆にのせてきていた。


「ニクスはラックを食べたことはあるか?」


「…………いえ……。」
「食べてみるといい。町でも人気の焼き菓子だ。」




しかしニクスの手は膝から降りようとせず固まったままだ。











「私もディフェウスさまのご提案に賛成ですよ。ニクスのことを考えればこの国で一番安全なのは騎士団でしょう。こんなちっぽけな宝石店などもろくてしょうがない。襲われたらひとたまりもありませんよ。」



聞き方によってはここにいては困るという風に聞こえるかもしれないが、これはカイルの優しさなのだろう。
ニクスは前者ととったのかもしれない。顔をあげカイルのほうを見る。



「今すぐにきめなくてもいい。そうだな、また三日後にくる。その時返事を聞かせてもらえるか?」




まだ迷いがあるであろうニクスはわずかだがうなずいてくれた。


そういってディフェウスは席を立つ
「では、私はここで戻ろう。」


そう言い残し騎士団への帰途につく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

泥酔している間に愛人契約されていたんだが

暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。 黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。 かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。 だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。 元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。 交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

異世界転移をした俺は文通相手の家にお世話になることになりました

陽花紫
BL
異世界転移をしたハルトには、週に一度の楽しみがあった。 それは、文通であった。ハルトの身を受け入れてくれた老人ハンスが、文字の練習のためにと勧めたのだ。 文通相手は、年上のセラ。 手紙の上では”ハル”と名乗り、多くのやりとりを重ねていた。 ある日、ハンスが亡くなってしまう。見知らぬ世界で一人となったハルトの唯一の心の支えは、セラだけであった。 シリアスほのぼの、最終的にはハッピーエンドになる予定です。 ハルトとセラ、視点が交互に変わって話が進んでいきます。 小説家になろうにも掲載中です。

天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

呪いで猫にされた騎士は屈強な傭兵に拾われる

結衣可
BL
呪いで猫にされた騎士は屈強な傭兵に拾われる

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

処理中です...