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6 心情
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なぜ、こんな僕に気を使ってくれるのだろうか?
ただでさえ厄介な相手に追われていて、下手をすれば国際問題に発展するかもしれないのに。
僕はこの国にたどり着いたとき、僕はまた檻の中に入ることになるのだろうと覚悟をした。自分でも自分が迷惑な存在であることは理解していた。
隣国の国王から逃げ出し、不法に入国したうえでその王は自分を今も探しているという現状。
誰もが顔をしかめ存在を疎ましく思うのだと思っていた。
しかし、積み荷から出てみればどうだろうか。僕を見つけた人の友人だというカイルさんに引き取られ寝る場所も、服も、食べ物も与えてくれた。
これは僕の事情を説明していないからだと思い、話すたびに過去が思い起こされ苦しかったが話をした。これでひと時の温かい暮らしは終わりだと思っていたのに、話し終えてからも、次の日も何も変わらない。むしろもっと優しくなった気がする。
涙を流せば顔が崩れると鞭うたれ、自分から口を開けば自分の立場を自覚しろと鞭うたれ、お腹をすかせ食べ物を乞えば食べる姿など見たくないといわれ、そなたの容姿はこの世のものではないように美しいといわれ、愛していると何度も言われ、僕の感情などとうに死んでいた。
僕にもあたたかな言葉をくれる人がいるにかと眠れない夜を過ごしつつ涙が毎晩のようにあふれていた。涙など流してはならないといわれ続け枯れたものだと思っていたのに僕には止められなかった。
それは何もカイルさんだけではなかった。
この国の王子様に最初にあったとき自分は礼儀作法など知らず緊張で逃げ出してしまいたかった。そんな時に王子様から不法入国だといわれ自分よりもカイルさんがとがめられるのではないかと恐れ口を開こうにも、自分に目を向ける人間に対する恐怖に打ち勝てずただ震えていることしかできなかった。
そんな時とても、とてもやさしい声で僕に声をかける人がいた。
その方は王子様とも砕けた口調で話していた。位の高い人なのだろうと勝手に思っていた。きっとあの王のようにプライドも高くラウスという珍しい僕を手に入れようとしているのだろうと。
しかしかけられた言葉は僕を心配する一声だった。
ただただ僕のことを案じるものだった。かけられた言葉は本当に誰にでもいえるようなセリフ。しかし僕にとって声も柔らかな目元も抱いていた不安を消し去るのには十分なものだった。
彼らが帰ってしまった後あの方の柔らかな顔ばかりが鮮明に思い出され、なぜか心にぬくもりを感じた。
外に出ることもできず、カイルさんに借りたこの国の歴史が書かれている本を何冊も読んでいた。こんな幸せにあふれた国が存在していたのかと驚いた。
------
眠ってしまっていたのだろう。何かの物音に気付き目を開ける。
目の前には男の人の影。
「なぜ眠っている?この私が起きているというのに。」
忘れもしない低く怒りの感情が入り混じる声
「なぜ眠っていたかと聞いている。私はお前に自由を与えたつもりはない。私の前では眠ることは許さないと申したが?私の命はきけなかったか?」
視界に自分に向かって伸ばされる手。背中がずきずきと痛む。
どれだけ誤っても許してもらえない。まるで生き地獄だ。
震える体を必死に隠す。
「………………ス」
誰かの声が聞こえる。
「…………ニクス」
誰かが僕を呼んでいる。
「大丈夫だ。」
あの優しい声僕を包み込んでくれる柔らかな声
その声に体が反応したように視界がはっきりとしてくる。
「……ディフェウスさん」
やはり彼だ。僕はどこまで彼の声に助けられるのだろう。
何度かトラウマを繰り返したがそのたびに包み込んでくれる声。
いつしか僕は彼が来ることに幸せを感じていた。
------
そんな彼が提案してきた内容に驚いた。
騎士団に置かせてもらうなど僕にはそんな価値はない。確かに追われている身ではあるが生活を約束され守ってくれるというのは迷惑にしかならない。
それに騎士の方々にもなんと説明していいのかわからない。守ってくださいなどいえるわけがない。
やはり僕には檻の中でしか生きられないのかもしれない。
なのに彼はみくびらないでほしいと。
私が守るからと。
彼は僕の目だけをみつめ訴えてくる。
僕にも幸せになる価値はあるのだといわれているように。
不安だったはずなのにまたしても彼の言葉に流される。
あぁ、僕はこの人に頼ってもいいのだろうか。
自分も幸せになれるのだろうか。
愛されなくてもいい。ただただ普通の生活を送ってみたい。
ほんのちょっとの願いに代わり騎士団への決意を改める。
ただでさえ厄介な相手に追われていて、下手をすれば国際問題に発展するかもしれないのに。
僕はこの国にたどり着いたとき、僕はまた檻の中に入ることになるのだろうと覚悟をした。自分でも自分が迷惑な存在であることは理解していた。
隣国の国王から逃げ出し、不法に入国したうえでその王は自分を今も探しているという現状。
誰もが顔をしかめ存在を疎ましく思うのだと思っていた。
しかし、積み荷から出てみればどうだろうか。僕を見つけた人の友人だというカイルさんに引き取られ寝る場所も、服も、食べ物も与えてくれた。
これは僕の事情を説明していないからだと思い、話すたびに過去が思い起こされ苦しかったが話をした。これでひと時の温かい暮らしは終わりだと思っていたのに、話し終えてからも、次の日も何も変わらない。むしろもっと優しくなった気がする。
涙を流せば顔が崩れると鞭うたれ、自分から口を開けば自分の立場を自覚しろと鞭うたれ、お腹をすかせ食べ物を乞えば食べる姿など見たくないといわれ、そなたの容姿はこの世のものではないように美しいといわれ、愛していると何度も言われ、僕の感情などとうに死んでいた。
僕にもあたたかな言葉をくれる人がいるにかと眠れない夜を過ごしつつ涙が毎晩のようにあふれていた。涙など流してはならないといわれ続け枯れたものだと思っていたのに僕には止められなかった。
それは何もカイルさんだけではなかった。
この国の王子様に最初にあったとき自分は礼儀作法など知らず緊張で逃げ出してしまいたかった。そんな時に王子様から不法入国だといわれ自分よりもカイルさんがとがめられるのではないかと恐れ口を開こうにも、自分に目を向ける人間に対する恐怖に打ち勝てずただ震えていることしかできなかった。
そんな時とても、とてもやさしい声で僕に声をかける人がいた。
その方は王子様とも砕けた口調で話していた。位の高い人なのだろうと勝手に思っていた。きっとあの王のようにプライドも高くラウスという珍しい僕を手に入れようとしているのだろうと。
しかしかけられた言葉は僕を心配する一声だった。
ただただ僕のことを案じるものだった。かけられた言葉は本当に誰にでもいえるようなセリフ。しかし僕にとって声も柔らかな目元も抱いていた不安を消し去るのには十分なものだった。
彼らが帰ってしまった後あの方の柔らかな顔ばかりが鮮明に思い出され、なぜか心にぬくもりを感じた。
外に出ることもできず、カイルさんに借りたこの国の歴史が書かれている本を何冊も読んでいた。こんな幸せにあふれた国が存在していたのかと驚いた。
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眠ってしまっていたのだろう。何かの物音に気付き目を開ける。
目の前には男の人の影。
「なぜ眠っている?この私が起きているというのに。」
忘れもしない低く怒りの感情が入り混じる声
「なぜ眠っていたかと聞いている。私はお前に自由を与えたつもりはない。私の前では眠ることは許さないと申したが?私の命はきけなかったか?」
視界に自分に向かって伸ばされる手。背中がずきずきと痛む。
どれだけ誤っても許してもらえない。まるで生き地獄だ。
震える体を必死に隠す。
「………………ス」
誰かの声が聞こえる。
「…………ニクス」
誰かが僕を呼んでいる。
「大丈夫だ。」
あの優しい声僕を包み込んでくれる柔らかな声
その声に体が反応したように視界がはっきりとしてくる。
「……ディフェウスさん」
やはり彼だ。僕はどこまで彼の声に助けられるのだろう。
何度かトラウマを繰り返したがそのたびに包み込んでくれる声。
いつしか僕は彼が来ることに幸せを感じていた。
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そんな彼が提案してきた内容に驚いた。
騎士団に置かせてもらうなど僕にはそんな価値はない。確かに追われている身ではあるが生活を約束され守ってくれるというのは迷惑にしかならない。
それに騎士の方々にもなんと説明していいのかわからない。守ってくださいなどいえるわけがない。
やはり僕には檻の中でしか生きられないのかもしれない。
なのに彼はみくびらないでほしいと。
私が守るからと。
彼は僕の目だけをみつめ訴えてくる。
僕にも幸せになる価値はあるのだといわれているように。
不安だったはずなのにまたしても彼の言葉に流される。
あぁ、僕はこの人に頼ってもいいのだろうか。
自分も幸せになれるのだろうか。
愛されなくてもいい。ただただ普通の生活を送ってみたい。
ほんのちょっとの願いに代わり騎士団への決意を改める。
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