贖罪ーヒートレイプを仕掛けてしまった男Ωの悔恨の物語。

認認家族

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 幼いころからの俺の夢。
 だから、俺は男の手を取ったのに。
「陸にとって必要なものであって私に必要なモノではない。そして、陸がソレを捨てて行くなら廃棄するだけだ」
「棄てるつもりは無い!数年で数年で戻って来るつもりだった!」
 ヒート中に噛まれなければ番契約は成立しない。そして俺達はあと数年で50になる。ヒートもこない年齢だ。
 数年経っても架向が猪瀬を諦めきれなかったとしても、それで仮に、仮にビッチングが行われてしまったとしても猪瀬が発情期を過ごすことはない。番にされる事も無い。フェロモンでαを誘惑してしまう事もない。妊娠が不可能な年齢なっていれば体に大きな変化は訪れないだろう。血液検査でもしない限り、Ωへの性転換が人に知れる事はない。ビッチングされても、猪瀬はそこまで傷つかないですむ。だから…!
 男がくすりと嗤った。空気が冷える
「そうだね、陸にとってはそれはたった数年かもね。でも、私は数十年に感じるだろう。想いの差をこうやって見せつけるのだから、残酷だよね。……陸らしいけど」

「………」
「でも、ね、陸。私は物分かりが良い方ではない」
 そんな事は知ってる。この男は俺を手に入れる為ならなんでもした。αだった俺をΩに書き換え、拒絶した俺を無理矢理ヒートにして番契約のために大学内でレイプした。今、離れていこうとする俺をこの男は……恐怖に支配されそうになる自分を何とか鼓舞する。押し負けたら架向も猪瀬も無事ではすまない。
 この男に優っている所など俺にはない。この男には弱点もほぼ無くて……俺だけ。ああ、暗い嗤いがこみ上げる。あれから二十年以上経つのに俺の武器はまだこれしかない。安寧にまどろんでいた。俺がいたのは砂上の楼閣だったのに。牙は砥がねば丸まるだけなのに、愚かだった。

「……お前を頼りにしていた。猪瀬を見失った架向がどうなるか不安だった。小学校時代の初恋の様に冷めてくれるのか、上位αの執着になってしまうのか。けれどお前がいれば導いてくれるだろうと思っていた。初めはお前も苛つくだろうが俺の意図を理解してくれると、連絡を取りながら何とか…と、今のお前ならと思って架向を託そうとした。」
 俺の思いを聞いて折れてくれないか、
「だろうね。」
 それもわかっていたのか。なのに…!
「でも、陸が他のオスと逃げるなんて許せる訳がないだろう」
 無理矢理バースを書き換えて、しかも番契約までされたら、他の人とのセックスなんて不可能だ。しかも、本来の俺の性的対象は女性だ。それでも、猪瀬をオスと表現するのか。この男にとって俺は……人である前に所有物のメスなのか。

 20年……コイツの何を見てきたのだろう、俺は……。
 そうだ、人間の本質がそう簡単に変わる訳がない。
 この男は残酷で冷酷で俺が……俺である必要は無いのだ、生きていれば良いと言っていたではないか、心が壊れようとも男の側にいる事が重要だと。
 数年がかりの男の謝罪を受け入れた自分は本当に愚かだ……

 捨てよう。
 ふっと思った
 捨てよう
 偽物なんていらない
 けれど、それは今では無い。
 家ではなく、架向と猪瀬を守る為にそれまでは己を偽ろう。

「そんなつもりは一切なかったんだ。俺はお前の番だぞ。ただ合意の無いビッチングを止めたかっただけなんだ、浅慮でお前を不安にさせた。すまない……。」
 コレで手打ちにしてくれないか、そう申し出た俺を男が探る様に見る。もともとの問題が解決してないのだ、俺が隙をみて逃げ出すとおもっているのだろう。
 それでも、俺の提案には乗ってきた
「傷付いたよ」
「すまない。」
「陸を失う恐怖でおかしくなりそうだ。陸が私を安心させてくれないか」
「………」
 自ら体を差し出せと言っているのだ。
 娼婦と俺はどう違うのか。客を選べるだけ娼婦の方が良いかも知れない。
 それでも……
 迷いなく男に近づき口づけした。
「それだけ?」
「ここでは嫌だ」
 猪瀬の家でする程、残酷なことはない。この男はソレを望んだのだろうが、ものは言いようだ
「自分の家の方が安心する」
 男がにこりと笑う。
「そうだね、巣に帰ろう、私と陸の巣に」
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