125 / 136
125
しおりを挟む
小狡い真似を――のふは顔をしかめ野太刀の柄を握りなおした。
音に合わせて機を計る。剣光一閃、のふは正面のひとりに斬りつけた。
刹那、左右から手鉾の切っ先が伸びる。
のふは風を巻いて身を躱し、右手の敵へと躍りかかった。
● ● ●
将門は頼慶の足もとを狙った一撃を半歩退がって避ける。
追撃の突きは体を開いて躱した。攻撃に出ようとすると、棒の反対が旋回して襲ってくる。
野太刀で攻撃を受けた。さらに旋回して襲ってくる攻撃も防御する。だが、おかげで剣に刃こぼれが生じた。
将門はとりあえず間合いを取る。
「頼慶、今からでもよい。一党を抜けよ」
真剣な声で訴えた。
「それは無理な相談というものだ、小次郎」
「なにゆえだ」
「わしの手はすでに血で汚れておるのだ。とある地の横暴な目代をわしは手にかけておる」
「それは」
将門はさらに言葉を発しようとするが、頼慶の思い詰めた目がそれを許さなかった。まるで、罰してくれ、と頼んでいるようだ。
「そなたか、わしか、どちらかが冥土に行かねばならぬのだよ」
頼慶は決然とした声で言い切る。
その言葉で将門の中の何かが吹っ切れた。
電光石火、将門は足をふり上げる。すると、鰐歯に付着していた柔らかい氷が将門の目もとへ飛んだ。
転瞬、将門は間合いを詰め刺突を頼慶へと喰らわせている。
将門は捻って剣を抜いた。直後、頼慶はその場に倒れる。
「すまなかったな、小次郎。辛い思いをおぬしにさせて」
頼慶の最期の言葉は友を思うものだった。頼慶、おぬし――。
将門は奥歯を強く噛みその場を離れて山頂を目指した。
が、すぐにそれは阻まれる。
音に合わせて機を計る。剣光一閃、のふは正面のひとりに斬りつけた。
刹那、左右から手鉾の切っ先が伸びる。
のふは風を巻いて身を躱し、右手の敵へと躍りかかった。
● ● ●
将門は頼慶の足もとを狙った一撃を半歩退がって避ける。
追撃の突きは体を開いて躱した。攻撃に出ようとすると、棒の反対が旋回して襲ってくる。
野太刀で攻撃を受けた。さらに旋回して襲ってくる攻撃も防御する。だが、おかげで剣に刃こぼれが生じた。
将門はとりあえず間合いを取る。
「頼慶、今からでもよい。一党を抜けよ」
真剣な声で訴えた。
「それは無理な相談というものだ、小次郎」
「なにゆえだ」
「わしの手はすでに血で汚れておるのだ。とある地の横暴な目代をわしは手にかけておる」
「それは」
将門はさらに言葉を発しようとするが、頼慶の思い詰めた目がそれを許さなかった。まるで、罰してくれ、と頼んでいるようだ。
「そなたか、わしか、どちらかが冥土に行かねばならぬのだよ」
頼慶は決然とした声で言い切る。
その言葉で将門の中の何かが吹っ切れた。
電光石火、将門は足をふり上げる。すると、鰐歯に付着していた柔らかい氷が将門の目もとへ飛んだ。
転瞬、将門は間合いを詰め刺突を頼慶へと喰らわせている。
将門は捻って剣を抜いた。直後、頼慶はその場に倒れる。
「すまなかったな、小次郎。辛い思いをおぬしにさせて」
頼慶の最期の言葉は友を思うものだった。頼慶、おぬし――。
将門は奥歯を強く噛みその場を離れて山頂を目指した。
が、すぐにそれは阻まれる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる