平安山岳冒険譚――平将門の死闘(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 小狡い真似を――のふは顔をしかめ野太刀の柄を握りなおした。
 音に合わせて機を計る。剣光一閃、のふは正面のひとりに斬りつけた。
 刹那、左右から手鉾の切っ先が伸びる。
 のふは風を巻いて身を躱し、右手の敵へと躍りかかった。

         ● ● ●

 将門は頼慶の足もとを狙った一撃を半歩退がって避ける。
 追撃の突きは体を開いて躱した。攻撃に出ようとすると、棒の反対が旋回して襲ってくる。
 野太刀で攻撃を受けた。さらに旋回して襲ってくる攻撃も防御する。だが、おかげで剣に刃こぼれが生じた。
 将門はとりあえず間合いを取る。
「頼慶、今からでもよい。一党を抜けよ」
 真剣な声で訴えた。
「それは無理な相談というものだ、小次郎」
「なにゆえだ」
「わしの手はすでに血で汚れておるのだ。とある地の横暴な目代をわしは手にかけておる」
「それは」
 将門はさらに言葉を発しようとするが、頼慶の思い詰めた目がそれを許さなかった。まるで、罰してくれ、と頼んでいるようだ。
「そなたか、わしか、どちらかが冥土に行かねばならぬのだよ」
 頼慶は決然とした声で言い切る。
 その言葉で将門の中の何かが吹っ切れた。
 電光石火、将門は足をふり上げる。すると、鰐歯に付着していた柔らかい氷が将門の目もとへ飛んだ。
 転瞬、将門は間合いを詰め刺突を頼慶へと喰らわせている。
 将門は捻って剣を抜いた。直後、頼慶はその場に倒れる。
「すまなかったな、小次郎。辛い思いをおぬしにさせて」
 頼慶の最期の言葉は友を思うものだった。頼慶、おぬし――。
 将門は奥歯を強く噛みその場を離れて山頂を目指した。
 が、すぐにそれは阻まれる。
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