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驚いていたのは彼だけでなく、三蔵一行をのぞくすべての士卒がそうだった――それが、下口の声で眼が覚めたような顔をした。
「見事なり!」
思わず賢兼の口からそんな声がもれている。
「過分なお褒めのお言葉、ありがとう存ずる」
事前に三蔵に指示されていた通りに紅孩児は応じた。
「ほう、異国人だというのに日の本の礼儀作法、言の葉にまで通じているか」
その返答に賢兼はいたく感心した様子を見せる。
「これで、この者が家臣となることに文句がある者はないな?」
「なれど、唐人全員の腕前がそうとも限りませぬ」
その場の一同を見回す城主に、旧来の家臣のひとりがけわしい顔で訴えた。
「よかろう。得心がいくまでやるがいい」
確かにその通りと賢兼はうなずく。
「それでは次の者、前へ出よ」
それを受け、下口が声を張り上げた――
次に旧来の家臣と対峙したのは悟空だった。得物は鉄の棍は危険なために、同じ長さの杖(じょう)で代用していた
柳のような長身痩躯の士が構えるのは薙刀を木で模造した品だ。薙刀は奈良時代が平安時代に移るころ、藤原鎌足の孫にあたる藤原魚名(ふじはらのうおな)が唐からもたらされた眉尖刀(びせんとう)を改良して生まれている。
「――始め!」
下口の合図を受け、弾かれたように悟空は動いた。
「見事なり!」
思わず賢兼の口からそんな声がもれている。
「過分なお褒めのお言葉、ありがとう存ずる」
事前に三蔵に指示されていた通りに紅孩児は応じた。
「ほう、異国人だというのに日の本の礼儀作法、言の葉にまで通じているか」
その返答に賢兼はいたく感心した様子を見せる。
「これで、この者が家臣となることに文句がある者はないな?」
「なれど、唐人全員の腕前がそうとも限りませぬ」
その場の一同を見回す城主に、旧来の家臣のひとりがけわしい顔で訴えた。
「よかろう。得心がいくまでやるがいい」
確かにその通りと賢兼はうなずく。
「それでは次の者、前へ出よ」
それを受け、下口が声を張り上げた――
次に旧来の家臣と対峙したのは悟空だった。得物は鉄の棍は危険なために、同じ長さの杖(じょう)で代用していた
柳のような長身痩躯の士が構えるのは薙刀を木で模造した品だ。薙刀は奈良時代が平安時代に移るころ、藤原鎌足の孫にあたる藤原魚名(ふじはらのうおな)が唐からもたらされた眉尖刀(びせんとう)を改良して生まれている。
「――始め!」
下口の合図を受け、弾かれたように悟空は動いた。
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