直刀の誓い――戦国唐人軍記(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)

牛馬走

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 試合の開始の合図を受けて、浪人は左上段に木刀を取った。そして、間合いが詰まった瞬間、八相に構える。
 ……先に攻撃したのは悟空だった。面、足と棍を旋回さえて一閃、二閃。
 浪人もその迅さに顔を歪めながら必死に防御する。
 悟空は再度の面を狙った――刹那、対手はそれを受け流した。これが木刀同士の戦いならこれで隙ができた彼は斬られている。
 が、結果は違った――電光石火、棍が旋回して反対側から面を打つ。刀と違って両端が攻撃に使える特性と、それを熟知した悟空の棍運びが勝因だ。
「――それまで!」下口はまたも三蔵側の勝利と判断する。勿論、今度は文句のつけようがあるはずもない。
「あれは京流の流れを汲んでいるな」と、またも大部が浪人の太刀筋について説明する。そして、
「京流は平安の世に陰陽師の鬼一方眼(きいちほうがん)を開祖とする流派で、京から西ではよく見られる……」
 独り言に近い口調で大部が言葉を継いだ。
 今度は三蔵も礼を言うのが面倒で黙っていた。
 そして、三人目、四人目と浪人たちは呆気なく三蔵たちの前に敗れ去った――。

     ● ● ●

 御前試合を行った日は市が立つ日だったため、三蔵たちはそのまま城下に繰り出した。
 最早初めてではないが、やはり斜陽の国である明にはない熱気――例え、それが戦国といういつ誰が死んだとしてもおかしくない状況の中であっても、心が躍るものがある。
 紅孩児、悟空、金角と銀角はあっという間にはぐれてしまった……
 まったく、あいつらは――呆れながらも、その無邪気さに三蔵の口もとはつい弛む。
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