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――丑(うし)三つ時、三蔵は気配を感じて素早く掻巻(かいまき)を撥ね退けて起きる。
藁蒲団(わらぶとん)の上で片膝立ちになった彼女の周囲には、同様の姿勢をとった仲間の姿がある。変事が出来(しゅったい)した場合にそなえて、二間つづきの部屋の中央で寝ていた。
外の廊下に面する障子の外に気配が出現している――そこに、三蔵たちは視線を向けた。
俺が行く、と身ぶりで示して悟空が障子の前に移動する。
「そこにいるのは分かってるぜ」
悟空が低い声で告げた。
「勝秀(かつひで)でござる」
人数の関係上、離れで寝ていたはずの乱波の声がこたえる。
「こんな時間に何の用だ?」
悟空が怪訝な顔をするのが、斜め後方の三蔵からうかがえた。
――? 三蔵自身もいぶかしい思いを抱く。
「朋輩の乱波から知らせがきたのだ。この集落もすでに一揆の煽動者の手に落ちている。こちらが罠にかかったと思っている奴輩の寝首を掻く――ガッ……」
障子が破れる音とともに乱波の声が不自然に途切れた――直後、膝立ちになっているらしき彼の顔に位置の障子が赤く染まった。
一瞬、何が起きたかわからない……視野に映っている景色は、赤く染まった障子、障子を突き破っている銀色の鋭い刃、という異常なものだ。
が、瞬時に“赤”と“刃”が脳裡でひらめきの火花を散らす。
(赤は“血”の赤、刃は刀の切っ先――)
それを悟ったとたん、三蔵は勘を頼りに鏢を取り出し投じた。ほぼ同時に刀の刃が引き抜かれ視界から消える。
――標的を捉えた手応えはない。
逆に烈風のような剣気が障子の外から吹きつけてきた。
こ、れ、は……――三蔵は戦慄とともに対手の正体を理解する。
「師父っ……」
仲間の誰かがかすれた声でつぶやいた。
――丑(うし)三つ時、三蔵は気配を感じて素早く掻巻(かいまき)を撥ね退けて起きる。
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外の廊下に面する障子の外に気配が出現している――そこに、三蔵たちは視線を向けた。
俺が行く、と身ぶりで示して悟空が障子の前に移動する。
「そこにいるのは分かってるぜ」
悟空が低い声で告げた。
「勝秀(かつひで)でござる」
人数の関係上、離れで寝ていたはずの乱波の声がこたえる。
「こんな時間に何の用だ?」
悟空が怪訝な顔をするのが、斜め後方の三蔵からうかがえた。
――? 三蔵自身もいぶかしい思いを抱く。
「朋輩の乱波から知らせがきたのだ。この集落もすでに一揆の煽動者の手に落ちている。こちらが罠にかかったと思っている奴輩の寝首を掻く――ガッ……」
障子が破れる音とともに乱波の声が不自然に途切れた――直後、膝立ちになっているらしき彼の顔に位置の障子が赤く染まった。
一瞬、何が起きたかわからない……視野に映っている景色は、赤く染まった障子、障子を突き破っている銀色の鋭い刃、という異常なものだ。
が、瞬時に“赤”と“刃”が脳裡でひらめきの火花を散らす。
(赤は“血”の赤、刃は刀の切っ先――)
それを悟ったとたん、三蔵は勘を頼りに鏢を取り出し投じた。ほぼ同時に刀の刃が引き抜かれ視界から消える。
――標的を捉えた手応えはない。
逆に烈風のような剣気が障子の外から吹きつけてきた。
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「師父っ……」
仲間の誰かがかすれた声でつぶやいた。
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