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「殺しはせぬ。大人しく出てくるがよい」
甚助が抑揚を欠いた口調で告げてくる――
その言葉に、判断をあおぐように仲間と安兵衛の視線が三蔵に集まった。
「悟空、外の気配はどうだ?」
判断材料を求め三蔵は彼にたずねる。紅孩児ほどではないが、彼も人の気配を感知する能力には長けていた。
「――囲まれてるぜ」
悟空が険しい表情で応じる。
(……――状況の推移を見守るしかないか)
三蔵は苦い思いとともにその事実を認めた。
「とりあえず、対手の言葉に従おう」
彼女の言葉に、仲間たちがうなずく――その表情は、三蔵のことを信頼しているものだ。
(勝秀は『朋輩の乱波の知らせ』がきたと云った。反撃に出るなら、手勢を集めるはず――時間を稼げば、あるいは援軍がくる可能性もある)
そんな算段を胸に秘めながら、三蔵たちはゆっくりと障子を開け放ち廊下へ出る。各々、油断なく得物を構えていた。
外――廊下には血刀をさげた甚助と床に倒れ事切れている勝秀が、庭には乱波の姿があった。師が薩摩の島津に仕えていることを考えれば、乱波たちの呼び名は『山潜(やまもぐ)り』ということになる。
彼らを、空に浮かぶ鮮血の色をした満月が惨劇を期待するように見下ろしている。
そして、甚助の脇には表情をこわばらせた紅孩児がたたずんでいる。
「どうだ、おぬしたち? 今からでも遅くはない、わしのもとへ来い」
甚助は感情のない眼でこちらを見つめていた。
甚助が抑揚を欠いた口調で告げてくる――
その言葉に、判断をあおぐように仲間と安兵衛の視線が三蔵に集まった。
「悟空、外の気配はどうだ?」
判断材料を求め三蔵は彼にたずねる。紅孩児ほどではないが、彼も人の気配を感知する能力には長けていた。
「――囲まれてるぜ」
悟空が険しい表情で応じる。
(……――状況の推移を見守るしかないか)
三蔵は苦い思いとともにその事実を認めた。
「とりあえず、対手の言葉に従おう」
彼女の言葉に、仲間たちがうなずく――その表情は、三蔵のことを信頼しているものだ。
(勝秀は『朋輩の乱波の知らせ』がきたと云った。反撃に出るなら、手勢を集めるはず――時間を稼げば、あるいは援軍がくる可能性もある)
そんな算段を胸に秘めながら、三蔵たちはゆっくりと障子を開け放ち廊下へ出る。各々、油断なく得物を構えていた。
外――廊下には血刀をさげた甚助と床に倒れ事切れている勝秀が、庭には乱波の姿があった。師が薩摩の島津に仕えていることを考えれば、乱波たちの呼び名は『山潜(やまもぐ)り』ということになる。
彼らを、空に浮かぶ鮮血の色をした満月が惨劇を期待するように見下ろしている。
そして、甚助の脇には表情をこわばらせた紅孩児がたたずんでいる。
「どうだ、おぬしたち? 今からでも遅くはない、わしのもとへ来い」
甚助は感情のない眼でこちらを見つめていた。
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