66 / 141
66
しおりを挟む
「いかがでございましょう、お豊様」
豊はしばし考えるそぶりを見せ、
「仕事のためとあれば致し方ありません、同道いたします」
と応じた。致し方ない、という言葉にすこし引っかかりをおぼえながらも、ありがとうございます、小平次は礼をのべる。
そして、今に至っているのだ。現在、塩飽島に向かうために舟を都合している最中だ。商家の娘ということもあり、豊がこれに当たりその供として重左エ門がついていた。
することもなく、小平次は浜辺にたたずみ海を眺めている。と、隣に太蔵がやって来た。
「いやあ、お豊はよい娘御でありますなあ。器量はいいし、甲斐甲斐しく働く」
「太蔵、くれぐれも手出しは厳禁ですよ」
女癖の悪い太蔵を小平次はいさめる。この旅程の間ですら先々の女郎屋にしけ込んでいることを把握しているがゆえのせりふだ。が、話は思ってもみなかった方向に転がる。
「なにをおっしゃってるんです、お頭の存念はどうだって話でしょうこれは?」
言われたとたん、以前塩飽に向かう途中で浜辺で豊とふたりきりになったときのことを思い出した。
「お、なにかもう出来いたしたんで?」「な、なにもありません」
太蔵が目敏く気づく。否定する小平次に対し太蔵が言葉をかさねようとしたところで、
「舟の都合がつきました」
と、豊が重左エ門と吉足とともに現れて報告する。
豊はしばし考えるそぶりを見せ、
「仕事のためとあれば致し方ありません、同道いたします」
と応じた。致し方ない、という言葉にすこし引っかかりをおぼえながらも、ありがとうございます、小平次は礼をのべる。
そして、今に至っているのだ。現在、塩飽島に向かうために舟を都合している最中だ。商家の娘ということもあり、豊がこれに当たりその供として重左エ門がついていた。
することもなく、小平次は浜辺にたたずみ海を眺めている。と、隣に太蔵がやって来た。
「いやあ、お豊はよい娘御でありますなあ。器量はいいし、甲斐甲斐しく働く」
「太蔵、くれぐれも手出しは厳禁ですよ」
女癖の悪い太蔵を小平次はいさめる。この旅程の間ですら先々の女郎屋にしけ込んでいることを把握しているがゆえのせりふだ。が、話は思ってもみなかった方向に転がる。
「なにをおっしゃってるんです、お頭の存念はどうだって話でしょうこれは?」
言われたとたん、以前塩飽に向かう途中で浜辺で豊とふたりきりになったときのことを思い出した。
「お、なにかもう出来いたしたんで?」「な、なにもありません」
太蔵が目敏く気づく。否定する小平次に対し太蔵が言葉をかさねようとしたところで、
「舟の都合がつきました」
と、豊が重左エ門と吉足とともに現れて報告する。
0
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
『五感の調べ〜女按摩師異聞帖〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸。盲目の女按摩師・市には、音、匂い、感触、全てが真実を語りかける。
失われた視覚と引き換えに得た、驚異の五感。
その力が、江戸の闇に起きた難事件の扉をこじ開ける。
裏社会に潜む謎の敵、視覚を欺く巧妙な罠。
市は「聴く」「嗅ぐ」「触れる」独自の捜査で、事件の核心に迫る。
癒やしの薬膳、そして人情の機微も鮮やかに、『この五感が、江戸を変える』
――新感覚時代ミステリー開幕!
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる