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姉から強烈な一撃を食らった上、無理やり頭を下げさせられている様子を憐れに思ったのだ。
それに、大げさには云ったが、そのせりふに嘘はない。
なにやら勘違いをして雄彦を姉を謀ろうとしている悪党(わる)と思ってしまったようだが、さいわい何の被害もない。彼としては別段腹も立っていなかった。
それでも幾度も謝罪する咲をなんとかなだめ、雄彦があらためて歩き出したときにはすでに夜が明けていた――
● ● ●
「昨日(さくじつ)は申し訳ありませんでした」
翌日、咲は雄彦が水茶屋の一室に踏み入るや三つ指をついて頭をさげた。
「そう、しゃっちょこ張(ば)らずとも――」
彼はぼんの首に手をやって恐縮しながら、対手に頭をあげるよう促す。
「いえ、木刀といえどの人を命を奪うこともありうると聞き及んでおります……」
「なんのあれしき。それがし、武芸の骨法(こっぽう)を呑んでござれば、そう易々と命を落とすことはありませぬ。子供のいたしたこと、拙者は毫(ごう)も怒りを覚えておらぬゆえ」
心苦しいという顔をしていた彼女も、こちらの説得をうけてやっと表情をゆるめてくれた。
雄彦は腰をおろして咲と向かい合い口を開く。
「弟御はいかなる仕儀でそれがしを襲ったのであろうか?」
「……わたくしたち、姉弟(きょうだい)の母は蒲柳(ほりゅう)の質で、わたくしはなかば長秀の母の代わりを果たしておりました。それゆえ、あの子はわたくしが愛洲殿と敵(かたき)を追っていることを聞き、たわけたことに嫉妬したのでしょう」
いかさま、な――対手の言葉に得心がいき、雄彦はほほ笑んだ。
少しはた迷惑ではあるが、長秀のことも憎めない。
それに、大げさには云ったが、そのせりふに嘘はない。
なにやら勘違いをして雄彦を姉を謀ろうとしている悪党(わる)と思ってしまったようだが、さいわい何の被害もない。彼としては別段腹も立っていなかった。
それでも幾度も謝罪する咲をなんとかなだめ、雄彦があらためて歩き出したときにはすでに夜が明けていた――
● ● ●
「昨日(さくじつ)は申し訳ありませんでした」
翌日、咲は雄彦が水茶屋の一室に踏み入るや三つ指をついて頭をさげた。
「そう、しゃっちょこ張(ば)らずとも――」
彼はぼんの首に手をやって恐縮しながら、対手に頭をあげるよう促す。
「いえ、木刀といえどの人を命を奪うこともありうると聞き及んでおります……」
「なんのあれしき。それがし、武芸の骨法(こっぽう)を呑んでござれば、そう易々と命を落とすことはありませぬ。子供のいたしたこと、拙者は毫(ごう)も怒りを覚えておらぬゆえ」
心苦しいという顔をしていた彼女も、こちらの説得をうけてやっと表情をゆるめてくれた。
雄彦は腰をおろして咲と向かい合い口を開く。
「弟御はいかなる仕儀でそれがしを襲ったのであろうか?」
「……わたくしたち、姉弟(きょうだい)の母は蒲柳(ほりゅう)の質で、わたくしはなかば長秀の母の代わりを果たしておりました。それゆえ、あの子はわたくしが愛洲殿と敵(かたき)を追っていることを聞き、たわけたことに嫉妬したのでしょう」
いかさま、な――対手の言葉に得心がいき、雄彦はほほ笑んだ。
少しはた迷惑ではあるが、長秀のことも憎めない。
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