神様の転生のお供に選ばれまして ~異世界転生したら溺愛されるなんて聞いてません~

ものぽりー

文字の大きさ
3 / 73

神様の趣味。

しおりを挟む
 

「………天帝さん、こちらは……?」
「ここは僕の趣味の部屋だよ」


 その部屋は、なんというかひと言でいうと。





 「めっちゃ汚部屋」
 「それな」


 いや、それなじゃないわ。






「天帝っていろいろ仕事があって忙しくてね。片付ける暇もなく積み上げていたらこうなっちゃったんだ」

 
 困ったな、と頬を指で掻きながら少し頬を染めて恥ずかしそうにしているのは大変美女然としていて周りに花でも飛んでるみたいではあるものの、そんなものでは私は騙されない。

 いやちょっとだけ『トゥクン…』ってしたけど。気の迷い。私はきっと疲れてる。



「ゴミがあるとかじゃないですけど、物が多すぎです。積み上げすぎです。足の踏み場もないし崩れてきそうで怖いし見た目が汚いです」
「うん、ボロクソだね」
「何ですかこの山? ………マンガ…?」
「あ、その辺りはドラゴンボー〇だね」


 山の一角からこぼれ落ちた1冊を手に取ると、なんだか見たことのあるマンガだった。


 「…なんで??」
 「だから、僕の趣味」

 

 天帝さんはガチオタだった。






「マンガは何でも読むね。少年漫画も少女漫画も。アニメもチェックもする。でも最近はゲームをしてることの方が多いかな」
「…多趣味ですね」


 天界では、娯楽といえば宴らしい。飲んだくればっかりとか不健全すぎる。

 でも天帝さんは身分のこともあるし、他の神様たちと一緒だと気を遣われすぎて、あんまり楽しんで飲めない。故に一人で楽しめるものを探した結果…マンガやゲーム、アニメがお気に召したようで、休憩となるとこの部屋で過ごすのだとか。
 実に立派なインドアで引きこもりな自宅警備員だ。
 それはつまり…


「なるほど。ユーは友達が少ない、いわゆるボッチというやつですね?」
「別に嫌われてるわけじゃないよ、浅く広いドライな付き合いは向いてないだけだよ」
「じゃあ深く狭いディープな付き合いの方はいるんですか?」
「そんなに簡単に親友心の友は見つからないものだよ」
「なるほどつまりボッチということですね?」
「傷口に岩塩ねじ込まないでよ…」


 やべ、天帝さん泣かせちゃった。
 でも泣いてる天帝さんマジ美女。よき。



「まぁそんなことはどうでもいいです」
「………どうでもいい……」


 遠くを見つめる天帝さんは心が瀕死の様ですが、こっちなんて瀕死どころか死にたてなんで、普段より荒ぶってるんです。
 今はサラッと流させていただきます。




「もしかして神様の用件っていうのは、この部屋を片付けてほしいとか、そういうことですか?」


 腐海の一角を指さしながら、天帝さんに確認を取る。
 クセで首を傾げると、天帝さんも同じ方に首を傾けて笑顔になった。

 ナルホド、他の神様に片付けを頼むにしても、相手はみんな腐っても『神様』なんだから。さすがにマズいよね。

 ……目の前のこの人が一番偉いんだから、頼んだだけでパワハラになるのかな。


 少なくとも神様に頼むよりは、人間に頼んだほうが問題なさそうなのは確かだよね。
 でも私、そんなに片付け得意っていうほどじゃないんだけど…大丈夫なのかな。

 
 今は物が多すぎてよくわからないが、おそらく20畳は軽くあるんじゃない?というくらいに広い。
 全く部屋の端が見えない。床も見えない。物が多すぎるせいで壁も見えない。
 窓が見えない上に電気がついてるわけでもないのに暗くないのは不思議だ。原理は…まぁ知ったところで役に立つわけではないだろうし、気にしないことにする。

 一体何日かかるのか…と気が遠くなっている私の指を、近づいた天帝さんが両手でそっと包みこんだ。



「愛瑠に頼みたいのは片付けではないよ」
「急に呼び捨てですか。コミュ障に対する距離の詰め方がエグイ。いやまぁいいですけど」
「……不快だった…?」
「いや、あの、……ダイジョウブデス、」



 そんな捨てられそうなチワワみたいな目で見られると、なぜか罪悪感半端ない。だって私もボッチ仲間だし。
 ちょっと激しくわかりやすく動揺しちゃうよ!顔だって真っ赤だよきっと!
 どさくさの呼び捨てくらい許しちゃうってば!


「…よかった」
「あのもうほんとかんべんしてください!!!」



 ほっとした顔で笑う美形とか、ただの犯罪でしかない。
 それに握りこまれたままだった指を、ちょっと強めにきゅっとされるとか…
 今度は私のほうが瀕死ですっ。
 いやもう死んでるんだった!!


 もはや顔どころか首まで真っ赤だと思うので、見られないようにしゃがみ込み、空いてる手で頭を抱えて隠した。


「どうしたの愛瑠?…やっぱり怒ってる?」
「怒ってないです大丈夫です問題ないのでちょっと離れてむしろ部屋から出て行ってください!!ハウス!!」


 引っ張ったのに離してもらえなかった手につられたのか、目の前に一緒にしゃがみ込んでこっちを窺う追撃とか、ほんとやめて!

 叱られた柴犬みたいな顔とかほんと私のこと殺しにかかってるでしょボッチのくせに!
 いやもう死んでるけど!!
 ついでにさっきから『ボッチ』のブーメランで、こっちも地味にダメージ受けた心がブロークン!

 
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転生メイドは貞操の危機!

早桃 氷魚(さもも ひお)
恋愛
クララは乙女ゲームの世界に転生した、モブのメイド。 最推しキャラの公爵令息、ロルフのメイドとして、不幸フラグを折りながら、天使のように愛らしい推しを守ってきた。 ロルフはクララに懐き、魔法学園に入学するときも、離ればなれになるのを嫌がるほど。 「帰ってきたら、ずっと一緒だからね?」 ロルフとそう約束してから三年後。 魔法学園を卒業したロルフが、ついに屋敷へ戻ってきた! だが、クララの前に現れたのは、 かつての天使ではなく、超イケメンの男だった! 「クララ、愛している」 え!? あの天使はどこへ行ったの!? そして推し!! いま何て言った!? 混乱するクララを、ロルフはベッドに押し倒してきて……!? ----- Kindle配信のTL小説 『転生メイドは推しを甘やかしまくった結果、貞操の危機です!』 こちらは番外編です! 本編よりずっと前の、推しがまだ天使だった頃のお話です。 本編を知らなくても読めます。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...