神様の転生のお供に選ばれまして ~異世界転生したら溺愛されるなんて聞いてません~

ものぽりー

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閑話*オーディン視点

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*オーディン視点のお話です。しばらく続きます。





 庭園に横たわり、探索魔法により生み出された青い蝶に向かってそっと手を伸ばす、まだ小さく無邪気な少女。

「ちょーちょさん、わたしのはじめてのおともだちに、なってくれましゅ?」

 まるで鈴の音のような至上の響き。
 その声を聴き、この世界に転生して初めて、自分の頬が緩んだのがわかった。


 ああ、やっとだ。


「アイルの初めての友達には、僕が立候補したいな」


 この日を、ずっと待っていた。








 アイルと共にこの世界に転生し、1年。
 ここは天界に居た頃と変わらず、むしろアイルを見守ることすらできなくなり、僕にとっては無味乾燥な日々でしかなかった。

 色のない世界。
 ノイズのような雑音ばかりの世界。
 欲望に醜く歪んだ、気持ちの悪い仮面を付けた存在しかいない世界。

 アイルと一緒ならどんなに楽しいだろうと、あれ程期待していたのにね。
 
 退屈で、不愉快。それだけの世界。
 このままでは僕は、イラっとしてついこの世界を壊すかもしれないな。
 転生の際に人間の枠に収まるよう枷をつけ抑えた力でも何とかなってしまいそうだから、このままではマズイかも。


 一刻も早く、僕の『あの子』を探しに行かなきゃ。
 僕の可愛いあの子が……僕の大事なアイルが、幸せであるかすぐに確かめなきゃ。

 そして今度こそ離れず傍にいないと。守らないと。

 そうじゃないと、僕が・・ダメになる。






「父上」
「珍しいな、オーディン。どうしたのだ?」

 父上……皇帝陛下の執務室。珍しいことに母上も居る。伝えに行く手間が省けてちょうどいい。僕が自分から会いに行くことは滅多にないので、少し驚いた様子で迎え入れられた。
 長居する気はない。一応報告しにきただけだ。

「これから僕の大事な子を迎えに行ってきます。そのまま僕の部屋の隣で暮らしてもらうので、侍女を数名専属でつけます。一応お伝えしておこうかと」
「「………………は?」」


 並んだぽかんとした顔は滑稽だ。それを見ても、別に面白くもなんともないけど。
 ……あぁ、そういえば転生してから笑っていないな。表情が動かない。
 アイルと話をした時は、些細なやり取りすら尊く、あんなに自然と気持ちも表情も動かされたというのにね。
 前世のアイルも表情が動くことは少なかったけれど、今の僕はそれ以上だろう。アイルは表情が豊かじゃないだけで、瞳が雄弁だったから。

「それでは」
「…はっ!ま、待て、オーディン。だ、大事な子…とは、誰のことだ⁉」
「僕の大事な子です」


 教えるのももったいない。僕の宝物だから、僕が大事にする。烏合の衆に晒す気はない。



「全く詳細がわからん!相手はいくつなのだ?男か、女か⁉貴族なのか⁉」
「今日で1歳になる女の子ですよ。一応貴族子女です」

 父上は興奮した様子で次々と質問を投げつけてくる。
 だが、アイルの詳細を教える気はない。最低限だけ伝え、ドアに手をかける。
 転移魔法で迎えに……いや、アレに乗って迎えに行けば、驚いて、喜んでくれるかな。


「お待ちなさい、オーディン」
「………チッ。………なんでしょう、母上」
「舌打ちはお止めなさい。…相手はまだ1歳の少女なのですね?」
「そう言っております」

 せっかくアイルが驚いている様子を想像して、少し楽しい気持ちになっていたのに。
 邪魔されてつい舌打ちすると、無の表情の母がしつこく確認してきた。こういう時に、人間の若者は「うるせぇババア!」と言いたくなるんだろうな、と天界から見ていた若者たちのことを思い出した。口汚いな、と思っていたが、成程。同意だ。


「ならば、先に部屋を整えなさい」
「は?」

 すぐに行き来できるように、僕の隣の部屋をアイルの部屋にすると決めている。天界の僕の趣味部屋を『汚部屋』と言っていたアイルの為、物は少なくスッキリとした部屋。整えなくてはならないような所はない。

「貴族の子女であれば、多少は精神発達も早いでしょうが、それでも1歳。親元から引き離す気でいるのであれば、寂しさを紛らわすような気遣いをしなければなりません。少女の喜ぶような内装。ぬいぐるみや人形。まずはそちらの準備が先です」
「……一理ありますね」

 隣室は、今は殺風景な部屋だ。
 雑然とした部屋はアイルの好みではないだろうが、それでもカーテンの色を替えたりドレッサーを用意したり……アイルの為の部屋を用意するのは楽しそうだ。
 

「自分の為を考え用意された自分好みの部屋。少女はきっと私の為に⁉と感動し、あなたを意識することでしょうね」
「彼女をすぐに迎えに行くのは一旦保留にして、部屋を整えます。母上の御用達の商会を呼んでも?」
「かまいませんよ」
「ありがとうございます。急用ができましたので、失礼します」


 母上の言葉に何だか惹かれるものがあり、アイルにはもう少し待っていてもらって、先に部屋をアイル仕様に整えることにした。
 そうと決まれば、やることは多々ある。こんなところで無駄にする時間などない。
 即退室を告げて執務室を後にする。


「……あの子、案外単純だったのですね」
「……そうだな……」

 アイルの好みを考えるのに夢中だった僕には、両親の言葉は耳に入らなかった。


 
 
 
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