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閑話*もふもふ。
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お父様を見送った後、私に見せたいものがあるというディー様に手を引かれやってきたのは、昨日案内されたディー様の部屋。…の隣の部屋の前だった。
「ここがアイルの部屋だよ」
「でぃーさまのおへやのおとなりでしか」
「すぐ行き来できるように、部屋の中にも扉があるからね」
「にゃんでそんなもにょでつなげちゃったんでしゅか」
「万が一アイルが一人で廊下に出て攫われたら大変だからね。大丈夫、僕とアイル以外は開けられないように設定してあるから」
「でぃーさまがあけられるじてんで、まったくだいじょーぶじゃないでしゅ」
私のプライバシーどこ行った。
「見せたいものはアイルの部屋にあるんだ。開けてみて」
「しゃらっとながしましたね」
最優先で扉を塞ぎ行き来できないようにすることにして、まずは部屋に入る。
すると、
「きゃんっ!」
「ふぉっ⁉」
扉を開けた途端に、温かくて柔らかくてもふっとしたものに押し倒された。
「なんでしゅか、なにごとでしゅか、なにもみえにゃいけどぜんしんがしあわしぇでしゅ!」
「くぅーん!」
「あ、あ、あたまなめりゃれてましゅか、がんめんがもふっと、あったかいでしゅ、おひさまのかおりでしゅっ」
床に転がったまま全身を程よい重さに押しつぶされぬくぬくするし、顔面は柔らかなもふもふに埋もれ、毛繕いしてくれているつもりなのか頭をサリサリとなめられている。足の方で微かに左右に振れるような振動を感じるのは、もしかして激しく尻尾振ってたりするから?なにそれ想像だけで可愛いよ、謎のもふもふ!状況も何もわからないけど幸せすぎる。押しつぶされている危機的状況だというのに、全く抵抗する気が起きない。
「………アイルを押し倒して舐めまわすとか、殺処分されたいのかな?この駄犬が」
「きゃんっ」
「あ、」
幸せにしがみついていた私だったが、隣からヒヤリとしたディー様の声がした瞬間に、腕の中から幸せが消えた。
急に与えられ儚く消えた幸せの衝撃に床で寝そべったまま呆然としていると、ディー様が手を引いて体を起こしてくれる。
すると2m程離れた室内には、へそ天状態で仰向けになり尻尾を足の間に巻き込んだ状態で必死に視線を逸らして震えている白銀の毛並みの大型犬がいた。
…ディー様の下僕かな?
「でぃーさま、あのわんこ…」
「あれはフェンリルだよ。まだ子どもだからあのサイズだけど、成長するとアイルと僕を乗せてもまだ余裕があるくらいの大きさになる」
「ふぇんりりゅって、ふぁんたじーものでよくでてくりゅ、でんせちゅのまもにょじゃなかったでしゅか…?」
「そうだね。この世界でも伝説の魔獣とされているよ。彼らは賢くて強い種族で、滅多に人間の前に姿を見せることはないんだ」
「……めのまえに、いましゅけど…?」
「アイルのペットにちょうどいいと思って連れてきたんだ」
「わたしのぺっと⁉」
そんな伝説の魔獣が、平々凡々な私のペットになってくれるとは思えないんですけど。
もし万が一の可能性でペットになってくれたとしても、『じゃれついた拍子についついご主人様引き裂いちゃった☆』とか有り得そうすぎて怖いんですけど!
「転生前に約束した、もふもふだよ」
「いえ、ふつうのわんことか、にゃんことかでじゅーぶんなんでしゅが」
「フェンリルは気に入らない?」
「気に入らないわけじゃないでしゅが、もっとちいさいほうが「くーん…」…え?」
ディー様が転生前の約束を守ってくれたことは非常に嬉しい。気持ちは嬉しいのでありがたく受け取る。
が、サイズ感が私の思うもふもふと激しく乖離している。クマのキーホルダー頼んだのにコス●コのビッグベア渡された時くらいの、『それじゃない』感。
気に入らないわけじゃなく手に負えないのでクーリングオフもしくはチャンジで、と言おうとしたのだが、とても切ない鳴き声が割り込んできた。
フェンリルはへそ天から伏せの状態になっており、つぶらな瞳をウルウルさせてこちらをじっと見つめ、首を少し傾げる。私は目をそらすことができず、しばし見つめ合う。
ああ、脳裏に草原で一緒にかけっこする光景や、花畑でフェンリルにもたれて一緒にお昼寝する光景が浮か「くーん」
「おともだちかりゃおねがいしましゅ」
「きゃん!」
魔性の魅力に逆らえず首にひっしと抱き着くと、フェンリルはご機嫌な声で一声鳴き、尻尾をはち切れんばかりに振り回した。かわええ。
「アイルが気に入ってくれてよかった。…良かったんだけど、なんとなく腹が立つ気がするのはなんでだろう」
「でぃーさま、このこのなまえはなんでしゅかー?」
「きゃんきゃん!」
フェンリルの背中をわしゃわしゃ撫でながら、扉を入ってすぐの場所からじっとこちらを見ているディー様に、この子の名前を聞く。
ディー様は疲れたような表情で片手で髪をかき上げ、小さくため息をついてからゆっくりと近づいてきた。幼児とは思えぬR指定な雰囲気を撒き散らす危険物だったので、フェンリルの目をそっと隠し、頭の中でモザイク処理を施しておく。アレは情操教育に悪影響を及ぼします。見ちゃいけません。
「このフェンリルはアイルのペット…従魔になる予定だったから、まだ名前はつけてないんだ。アイルが名前を付けてくれる?」
「え?じゃあ、いままで、なんてよんでたんでしゅか?」
「フェンリル」
「…にんげんにむかって、『にんげん』ってよぶのといっしょでしゅよ、そりぇ」
「うん。だから早くアイルがつけた名前を呼んであげないとね」
「ここがアイルの部屋だよ」
「でぃーさまのおへやのおとなりでしか」
「すぐ行き来できるように、部屋の中にも扉があるからね」
「にゃんでそんなもにょでつなげちゃったんでしゅか」
「万が一アイルが一人で廊下に出て攫われたら大変だからね。大丈夫、僕とアイル以外は開けられないように設定してあるから」
「でぃーさまがあけられるじてんで、まったくだいじょーぶじゃないでしゅ」
私のプライバシーどこ行った。
「見せたいものはアイルの部屋にあるんだ。開けてみて」
「しゃらっとながしましたね」
最優先で扉を塞ぎ行き来できないようにすることにして、まずは部屋に入る。
すると、
「きゃんっ!」
「ふぉっ⁉」
扉を開けた途端に、温かくて柔らかくてもふっとしたものに押し倒された。
「なんでしゅか、なにごとでしゅか、なにもみえにゃいけどぜんしんがしあわしぇでしゅ!」
「くぅーん!」
「あ、あ、あたまなめりゃれてましゅか、がんめんがもふっと、あったかいでしゅ、おひさまのかおりでしゅっ」
床に転がったまま全身を程よい重さに押しつぶされぬくぬくするし、顔面は柔らかなもふもふに埋もれ、毛繕いしてくれているつもりなのか頭をサリサリとなめられている。足の方で微かに左右に振れるような振動を感じるのは、もしかして激しく尻尾振ってたりするから?なにそれ想像だけで可愛いよ、謎のもふもふ!状況も何もわからないけど幸せすぎる。押しつぶされている危機的状況だというのに、全く抵抗する気が起きない。
「………アイルを押し倒して舐めまわすとか、殺処分されたいのかな?この駄犬が」
「きゃんっ」
「あ、」
幸せにしがみついていた私だったが、隣からヒヤリとしたディー様の声がした瞬間に、腕の中から幸せが消えた。
急に与えられ儚く消えた幸せの衝撃に床で寝そべったまま呆然としていると、ディー様が手を引いて体を起こしてくれる。
すると2m程離れた室内には、へそ天状態で仰向けになり尻尾を足の間に巻き込んだ状態で必死に視線を逸らして震えている白銀の毛並みの大型犬がいた。
…ディー様の下僕かな?
「でぃーさま、あのわんこ…」
「あれはフェンリルだよ。まだ子どもだからあのサイズだけど、成長するとアイルと僕を乗せてもまだ余裕があるくらいの大きさになる」
「ふぇんりりゅって、ふぁんたじーものでよくでてくりゅ、でんせちゅのまもにょじゃなかったでしゅか…?」
「そうだね。この世界でも伝説の魔獣とされているよ。彼らは賢くて強い種族で、滅多に人間の前に姿を見せることはないんだ」
「……めのまえに、いましゅけど…?」
「アイルのペットにちょうどいいと思って連れてきたんだ」
「わたしのぺっと⁉」
そんな伝説の魔獣が、平々凡々な私のペットになってくれるとは思えないんですけど。
もし万が一の可能性でペットになってくれたとしても、『じゃれついた拍子についついご主人様引き裂いちゃった☆』とか有り得そうすぎて怖いんですけど!
「転生前に約束した、もふもふだよ」
「いえ、ふつうのわんことか、にゃんことかでじゅーぶんなんでしゅが」
「フェンリルは気に入らない?」
「気に入らないわけじゃないでしゅが、もっとちいさいほうが「くーん…」…え?」
ディー様が転生前の約束を守ってくれたことは非常に嬉しい。気持ちは嬉しいのでありがたく受け取る。
が、サイズ感が私の思うもふもふと激しく乖離している。クマのキーホルダー頼んだのにコス●コのビッグベア渡された時くらいの、『それじゃない』感。
気に入らないわけじゃなく手に負えないのでクーリングオフもしくはチャンジで、と言おうとしたのだが、とても切ない鳴き声が割り込んできた。
フェンリルはへそ天から伏せの状態になっており、つぶらな瞳をウルウルさせてこちらをじっと見つめ、首を少し傾げる。私は目をそらすことができず、しばし見つめ合う。
ああ、脳裏に草原で一緒にかけっこする光景や、花畑でフェンリルにもたれて一緒にお昼寝する光景が浮か「くーん」
「おともだちかりゃおねがいしましゅ」
「きゃん!」
魔性の魅力に逆らえず首にひっしと抱き着くと、フェンリルはご機嫌な声で一声鳴き、尻尾をはち切れんばかりに振り回した。かわええ。
「アイルが気に入ってくれてよかった。…良かったんだけど、なんとなく腹が立つ気がするのはなんでだろう」
「でぃーさま、このこのなまえはなんでしゅかー?」
「きゃんきゃん!」
フェンリルの背中をわしゃわしゃ撫でながら、扉を入ってすぐの場所からじっとこちらを見ているディー様に、この子の名前を聞く。
ディー様は疲れたような表情で片手で髪をかき上げ、小さくため息をついてからゆっくりと近づいてきた。幼児とは思えぬR指定な雰囲気を撒き散らす危険物だったので、フェンリルの目をそっと隠し、頭の中でモザイク処理を施しておく。アレは情操教育に悪影響を及ぼします。見ちゃいけません。
「このフェンリルはアイルのペット…従魔になる予定だったから、まだ名前はつけてないんだ。アイルが名前を付けてくれる?」
「え?じゃあ、いままで、なんてよんでたんでしゅか?」
「フェンリル」
「…にんげんにむかって、『にんげん』ってよぶのといっしょでしゅよ、そりぇ」
「うん。だから早くアイルがつけた名前を呼んであげないとね」
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