53 / 73
私の一日。
しおりを挟む
王宮での生活が始まってから、早2週間が経ちました。
今日は私の一日をお伝えしようと思います。
まず王宮で暮らし始めてからは毎朝金縛り状態で目が覚める。
いつの間にか潜り込んでくるディー様が、しっかり足まで絡めて全力で私を抱き込んで寝ているのだ。
初日はあまりにビックリしてつい叫んでしまったけど、私を助けようとしたモロが壁まで吹き飛ばされるし(モロは遊んでもらったと思っているのか楽しそうだった)、扉の前を守ってくれていた兵士さんが部屋に飛び込んでくるとディー様が『私の寝間着姿を見た』と訳の分からない理由でキレてしまい、死にそうな目に合わされてしまったのだ。それ以降、悲鳴は声にならなくなった。声を出すと(私以外が)危険な目に合うと刷り込まれたらしい。あとはディー様が扉と窓に結界を張って許可された時以外は誰も入ってこられないようにしてしまったので、万が一の場合も被害は最小限(※モロのみ)だろう。
それに私も最初は毎晩ディー様を部屋から追い出そうと頑張っていたけど、ふと目が覚めたら私のベッドで私を抱き枕にして寝ているので、もはや諦めた。以来、広いベッドをお借りしているはずなのに、前よりずっと小さくなって寝ている。
起きたら侍女さんたちが着替えを手伝ってくれるのだが、その日の私のコーディネートはディー様が決める。ドレスのみならず靴からリボンまで、全身コーデだ。そして自身は色やデザインが私とお揃いになるような服をあえて選ぶ。双子コーデに憧れてたのかな?
こちらも初日に一悶着あり、私の準備はすべて自分がするから手を出すなとディー様が侍女さんたちを部屋から追い出そうとした。困っているというよりドン引きした侍女さんたちから『おいおいどうなってんだ』という視線を向けられたが、私も全力で同意だった。何考えてるのこの人は。
結局は必死の抵抗と涙交じりの説得によって何とか着替えは侍女さんたちにお願いできることになったのだが、……ディー様ェ…、何のために侍女さんを私につけてくれようとしたのよ…。
午前中はディー様も私も授業がある。
私はマナーとか歴史とか刺繍とか。こちらの世界で令嬢として生きていくために覚えなくてはならないことが山ほどある。あと魔法も教えてもらえることになったのだ。結構忙しい。
対してディー様はまだ2歳だというのに剣も魔法も勉強もすでに教えることがないと講師に言わしめたらしく、私の講師をしている。……そう、ディー様は私の講師として授業があるのだ…。チートが過ぎる…。
ただ令嬢としてのマナーや刺繍はさすがに専門外なので、その時間はモロを鍛えているらしい。時々遠くからモロの楽しそうな鳴き声と兵士さん達の悲鳴が聞こえたり爆発音が聞こえることもあるが、王宮内ではすでに生活音と同じ扱いの様で、誰一人気にする人がいない。たまに憐れむように音のした方を見つめている人もいるけど。それでいいのか。
食事はディー様の希望で、3食ともディー様の部屋でとる。
両陛下…ディー様のご両親は食堂で食べているらしいが、しがない子爵家の娘が私的な場にお声掛かりもないのに同席させていただくなどあり得ない。私のことは気にせずディー様は行ってきてくださいと提案したが、しょんぼりした顔で「…陛下たちとは食事を共にしても会話もないんだ。だからアイルと2人で食べたい…」と言われてしまっては断れない。私はそこまで鬼じゃない。
が、心を鬼にして断ればよかった。
ディー様は食事中、自分の食事そっちのけで私の口にせっせと食事を運ぶことに余念がない。いくら自分で食べます!とナイフやフォークを持っても、一瞬で手の中から消されるのだ。さながら消失マジック。だが種明かしの時間がないので二度と戻ってこない。もはやただの消失。
食事中のディー様がとても楽しそうなので、機嫌を損ねるよりそっとしておこうという考えなのか、誰も現状にツッコんでくれない。生温かい視線でそっと見守られる居た堪れなさを誰か察してほしい。ハンストは主に私がつらいので決行には至っていないが、マナーを教わる意義を見失ってしまう前にもう一度食事権の自由を交渉しようと思っている。
午後は庭園か温室で、モロを枕にシエスタの時間。あとは私の実家に遊びに行ったり。
結構な頻度で顔を合わせているというのに、ディー様とアンリはなかなか仲良くならない。近付かれるのをアンリが泣いて嫌がるのだ。ディー様がアンリを真顔でじっと見つめるから恐いのかもってアドバイスしても、一向に改善してくれない。曰く、「譲れない戦いが男にはある」らしい。乳児と幼児の譲れない戦いって何だ。詳細を教えてくれないので、私は好きにアンリを可愛がったり、使用人のみんなのお手伝いをしたりすることにした。
最初はやっぱり家族とすぐ会えないのは寂しかったけど、家族と過ごしていた以上の時間を、ディー様がそばに……ゼロ距離でそばに居てくれたので、しんみりする暇もなく慣れました。それにモロもずっと一緒だしね。モロ可愛いよ。
左半身はディー様に、右半身はモロに、常にすり寄られているので歩きにくくて大変だけど、私以上に侍女さんや護衛の兵士さんが戸惑っているのを見ると私自身は冷静になる。2週間で悟りを開いたと言っても過言ではないと思う。
それが私の、最近の日常。
「アイル、そろそろ寝ようか」
「あい、でぃーさま。おやしゅみなしゃい」
「おやすみ、アイル。いい夢を」
「もろも、おやしゅみ」
『おやすみ、あいるー』
でも、なにか大切なことを忘れているような気がするんだよね。
*この内容を普通に書こうとすると、またひらがな地獄が終わらないという絶望感から逃亡。説明回ですみません。
今日は私の一日をお伝えしようと思います。
まず王宮で暮らし始めてからは毎朝金縛り状態で目が覚める。
いつの間にか潜り込んでくるディー様が、しっかり足まで絡めて全力で私を抱き込んで寝ているのだ。
初日はあまりにビックリしてつい叫んでしまったけど、私を助けようとしたモロが壁まで吹き飛ばされるし(モロは遊んでもらったと思っているのか楽しそうだった)、扉の前を守ってくれていた兵士さんが部屋に飛び込んでくるとディー様が『私の寝間着姿を見た』と訳の分からない理由でキレてしまい、死にそうな目に合わされてしまったのだ。それ以降、悲鳴は声にならなくなった。声を出すと(私以外が)危険な目に合うと刷り込まれたらしい。あとはディー様が扉と窓に結界を張って許可された時以外は誰も入ってこられないようにしてしまったので、万が一の場合も被害は最小限(※モロのみ)だろう。
それに私も最初は毎晩ディー様を部屋から追い出そうと頑張っていたけど、ふと目が覚めたら私のベッドで私を抱き枕にして寝ているので、もはや諦めた。以来、広いベッドをお借りしているはずなのに、前よりずっと小さくなって寝ている。
起きたら侍女さんたちが着替えを手伝ってくれるのだが、その日の私のコーディネートはディー様が決める。ドレスのみならず靴からリボンまで、全身コーデだ。そして自身は色やデザインが私とお揃いになるような服をあえて選ぶ。双子コーデに憧れてたのかな?
こちらも初日に一悶着あり、私の準備はすべて自分がするから手を出すなとディー様が侍女さんたちを部屋から追い出そうとした。困っているというよりドン引きした侍女さんたちから『おいおいどうなってんだ』という視線を向けられたが、私も全力で同意だった。何考えてるのこの人は。
結局は必死の抵抗と涙交じりの説得によって何とか着替えは侍女さんたちにお願いできることになったのだが、……ディー様ェ…、何のために侍女さんを私につけてくれようとしたのよ…。
午前中はディー様も私も授業がある。
私はマナーとか歴史とか刺繍とか。こちらの世界で令嬢として生きていくために覚えなくてはならないことが山ほどある。あと魔法も教えてもらえることになったのだ。結構忙しい。
対してディー様はまだ2歳だというのに剣も魔法も勉強もすでに教えることがないと講師に言わしめたらしく、私の講師をしている。……そう、ディー様は私の講師として授業があるのだ…。チートが過ぎる…。
ただ令嬢としてのマナーや刺繍はさすがに専門外なので、その時間はモロを鍛えているらしい。時々遠くからモロの楽しそうな鳴き声と兵士さん達の悲鳴が聞こえたり爆発音が聞こえることもあるが、王宮内ではすでに生活音と同じ扱いの様で、誰一人気にする人がいない。たまに憐れむように音のした方を見つめている人もいるけど。それでいいのか。
食事はディー様の希望で、3食ともディー様の部屋でとる。
両陛下…ディー様のご両親は食堂で食べているらしいが、しがない子爵家の娘が私的な場にお声掛かりもないのに同席させていただくなどあり得ない。私のことは気にせずディー様は行ってきてくださいと提案したが、しょんぼりした顔で「…陛下たちとは食事を共にしても会話もないんだ。だからアイルと2人で食べたい…」と言われてしまっては断れない。私はそこまで鬼じゃない。
が、心を鬼にして断ればよかった。
ディー様は食事中、自分の食事そっちのけで私の口にせっせと食事を運ぶことに余念がない。いくら自分で食べます!とナイフやフォークを持っても、一瞬で手の中から消されるのだ。さながら消失マジック。だが種明かしの時間がないので二度と戻ってこない。もはやただの消失。
食事中のディー様がとても楽しそうなので、機嫌を損ねるよりそっとしておこうという考えなのか、誰も現状にツッコんでくれない。生温かい視線でそっと見守られる居た堪れなさを誰か察してほしい。ハンストは主に私がつらいので決行には至っていないが、マナーを教わる意義を見失ってしまう前にもう一度食事権の自由を交渉しようと思っている。
午後は庭園か温室で、モロを枕にシエスタの時間。あとは私の実家に遊びに行ったり。
結構な頻度で顔を合わせているというのに、ディー様とアンリはなかなか仲良くならない。近付かれるのをアンリが泣いて嫌がるのだ。ディー様がアンリを真顔でじっと見つめるから恐いのかもってアドバイスしても、一向に改善してくれない。曰く、「譲れない戦いが男にはある」らしい。乳児と幼児の譲れない戦いって何だ。詳細を教えてくれないので、私は好きにアンリを可愛がったり、使用人のみんなのお手伝いをしたりすることにした。
最初はやっぱり家族とすぐ会えないのは寂しかったけど、家族と過ごしていた以上の時間を、ディー様がそばに……ゼロ距離でそばに居てくれたので、しんみりする暇もなく慣れました。それにモロもずっと一緒だしね。モロ可愛いよ。
左半身はディー様に、右半身はモロに、常にすり寄られているので歩きにくくて大変だけど、私以上に侍女さんや護衛の兵士さんが戸惑っているのを見ると私自身は冷静になる。2週間で悟りを開いたと言っても過言ではないと思う。
それが私の、最近の日常。
「アイル、そろそろ寝ようか」
「あい、でぃーさま。おやしゅみなしゃい」
「おやすみ、アイル。いい夢を」
「もろも、おやしゅみ」
『おやすみ、あいるー』
でも、なにか大切なことを忘れているような気がするんだよね。
*この内容を普通に書こうとすると、またひらがな地獄が終わらないという絶望感から逃亡。説明回ですみません。
0
あなたにおすすめの小説
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
転生メイドは貞操の危機!
早桃 氷魚(さもも ひお)
恋愛
クララは乙女ゲームの世界に転生した、モブのメイド。
最推しキャラの公爵令息、ロルフのメイドとして、不幸フラグを折りながら、天使のように愛らしい推しを守ってきた。
ロルフはクララに懐き、魔法学園に入学するときも、離ればなれになるのを嫌がるほど。
「帰ってきたら、ずっと一緒だからね?」
ロルフとそう約束してから三年後。
魔法学園を卒業したロルフが、ついに屋敷へ戻ってきた!
だが、クララの前に現れたのは、
かつての天使ではなく、超イケメンの男だった!
「クララ、愛している」
え!? あの天使はどこへ行ったの!?
そして推し!! いま何て言った!?
混乱するクララを、ロルフはベッドに押し倒してきて……!?
-----
Kindle配信のTL小説
『転生メイドは推しを甘やかしまくった結果、貞操の危機です!』
こちらは番外編です!
本編よりずっと前の、推しがまだ天使だった頃のお話です。
本編を知らなくても読めます。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる