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「わたしにあきなかったとしても、でぃーさまはこのくにのおうさまになるひとでしゅ。こんやくしゃができないわけないじゃないでしゅか。こんやくしゃができたら、こんなふうにいっしょにはいられないでしゅよ。おあいてのごれいじょうがゆるすわけないじゃないでしゅか。だからそのときは、たとえおそばにいなくても、ちゃんととおくからみまもってましゅから、」
「僕とアイルの時間を邪魔するような存在は地上から消え去るのが自然の摂理だから気にすることないよ。アイルと一緒に居られなくなるなら皇帝になどなる気はないし、その時は一緒に冒険者にでもなろうね。それにアイルがずっと僕を見ていてくれるというのはとても気分がいいけど、遠くになんて絶対に行かせないよ?」
「…………」


 なんだか病んでない…?気のせい?
 これ以上続けるのはマズい気がして、口を閉じる。
 するとディー様はニコニコ顔に戻った。


「アイルがそんな風に考えてくれているなんて思ってなかった。ありがとう、とても嬉しいよ。そうだよね、ずっと一緒だもんね。今後余計な口出しされないように、今日は頑張ってくれる?」
「…あい、がんばりましゅ」
「よろしくね、アイル」


 非常に嬉しそうに再び蕩けた笑みを見せたディー様は、私の右手をそっと持ち上げて、手にちゅっとキスをした。


「ちょっ…⁉なにしてりゅんでしゅか、でぃーしゃまっ⁉」
「アイルがとても可愛い」
「こたえになってないでしゅ!」
「アイルがとってもとっても可愛い」
「だからっ!」


 頬にぶわっと熱が上った私は必死に手を取り戻そうと引っ張るが、何の抵抗も感じていないようなディー様がさらに手に頬をすり寄せるので、混乱が極まって反対の手でディー様の頭をバシバシ叩く。
 だがそれすら嬉しいと言わんばかりのディー様は、2歳児らしからぬうっとりした顔で色気を垂れ流す。そうだった、天帝さんはMマゾだった‼これは火にガソリンを注ぐ行為だ!






 そんな私たちのやり取りを、実はずっと私の身支度を手伝うために部屋の中に控えていたため目撃していたマーサさん。


「……アイル様は、殿下のあのあからさまな執着と独占欲に一切気付いていないのでしょうか……。アイル様以外の誰かを婚約者として殿下に宛がおうなど、一瞬で国どころか大陸ごと世界地図から消えることになりますわ…」


 顔を蒼褪めさせた彼女が、私にどう自覚さたらいいのかと頭を抱えて真剣に悩んでいたことなど気付かずに、時間ギリギリまで騒ぎ続けた。




*ディー様が自然とダークサイドに片足突っ込む。おかしい。こんなはずでは…。
 そしてなかなかお茶しに行ってくれない。こんなはずでは…!
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