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53話 またまたギルの家にお邪魔することになりました
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ギルのお母さんに会いに行く。そう決めてから行動は早かったです。
二人でコースフェルト家の屋敷まで向かい、今夜のことをリアたち使用人に伝えてからギルの家。バルツァー公爵家のお屋敷に向かいます。
リアに思いっきり頑張ってくださいねと声をかけられましたが、今日何をしに行くか知っているのでしょうか。
いえ、バルツァー公爵家の屋敷に行くということだけで、彼女は私にそういいますね。
「使用人は連れてこなくて良かったのか?」
「はい、ギルのおうちまでそう遠くありませんし、ギルがいれば大丈夫ですよ」
「そうか」
私はギルの腕にしがみ付くと、ギルは少しだけ照れてしまったのでしょうか。そぶりは一切お見せしませんが、なんだか最近ギルのことがわかるようになってきました。
貴族街の整備の行き届いた道を歩くこと数分。貴族街にある一際大きなお屋敷であるバルツァー公爵家にたどり着きました。
私がここに徒歩で来たのは、初めてかもしれません。以前は一応馬車で行きましたし。ギルは毎日この道を歩いて帰っているんですね。
「いらっしゃるのでしょうか?」
「おそらくな」
ギルが門番の方とお話をし、門を潜り抜けます。
「どうやら母さんは既にいるみたいだ」
「は、はい」
私はあからさまに緊張した返事をしてしまい、私を見たギルが鼻で笑います。
「今、笑いましたね?」
「幸せすぎてな」
「もう!」
二人でエントランスまで入り、ギルが出迎えに来た執事に何かを伝えます。きっと夫人の件でしょう。身体がゾクリと震え、今逃げ出せばまだ間に合うという考えが何度も何度も何度も頭によぎります
そのたびにそんな気持ちを振りほどくように頭を振っていたら、いつものように頭の上には温かい手のひらが乗せられました。
私はいつものように手のひらを乗せてきた人に抱き着きますと、いつもと全く違う感触。具体的にいえば、ギルの胸部ではありえない柔らかさ。
「ギルベルト? 貴方の恋人は随分と甘えん坊なのね」
「え?」
それは日中に私に不合格と言いつけた人の声。恐る恐る今、抱き着いた人の服を見ると、女性ものの豪華なドレス。
間違いなくギルではない。てゆうか、この人。
視線を上げて抱き着いた人と目があいます。彼女は、日中お会いしたギルのお母さんでした。
「私に用があってきたのですよね?」
「は、はい」
ギルのお母さんはギルのように強引に私をがっしりと掴み、逃がさない様にしてきます。でもなんだか、ギルと話す様になった最初の頃を思い出す感覚。
この人は、やはりどことなくギルに似ている。だから、この人に気に入られたい。
「あの! 教えてください。何がダメなんですか。何が足りないんですか? どうしたら合格をもらえますか?」
「…………やっぱりダメね。全然わかっていないわ」
ギルのお母さんは、私から離れると、今度はどこかにむかって真っすぐ歩きます。エントランス近くの廊下手前まで来ますと、彼女は振り向いて私を見ました。
そのまま動く気配もありません。私まで固まっていると、ギルが私の背中を押します。
「マリー、呼ばれているんだ。ついていきなさい」
ギルがこっそりと呟き、私が慌ててギルのお母さんについていき始めますと、彼女も正面を向き直って歩き始めました。
しばらく歩いて一つの部屋の前。ギルのお母さんはその部屋に入り、私も続いていきました。
「ギルベルト、貴方は少し席を外しなさい」
「はい」
そしてドアが閉じられると、応接室のような豪華な部屋には、私とギルのお母さんだけ。二人きりになってしまいました。
どうしましょう。いえ、全然大丈夫ですけど、全然大丈夫じゃない。
「貴女は保守派と革新派の派閥をご存じかしら?」
二人でコースフェルト家の屋敷まで向かい、今夜のことをリアたち使用人に伝えてからギルの家。バルツァー公爵家のお屋敷に向かいます。
リアに思いっきり頑張ってくださいねと声をかけられましたが、今日何をしに行くか知っているのでしょうか。
いえ、バルツァー公爵家の屋敷に行くということだけで、彼女は私にそういいますね。
「使用人は連れてこなくて良かったのか?」
「はい、ギルのおうちまでそう遠くありませんし、ギルがいれば大丈夫ですよ」
「そうか」
私はギルの腕にしがみ付くと、ギルは少しだけ照れてしまったのでしょうか。そぶりは一切お見せしませんが、なんだか最近ギルのことがわかるようになってきました。
貴族街の整備の行き届いた道を歩くこと数分。貴族街にある一際大きなお屋敷であるバルツァー公爵家にたどり着きました。
私がここに徒歩で来たのは、初めてかもしれません。以前は一応馬車で行きましたし。ギルは毎日この道を歩いて帰っているんですね。
「いらっしゃるのでしょうか?」
「おそらくな」
ギルが門番の方とお話をし、門を潜り抜けます。
「どうやら母さんは既にいるみたいだ」
「は、はい」
私はあからさまに緊張した返事をしてしまい、私を見たギルが鼻で笑います。
「今、笑いましたね?」
「幸せすぎてな」
「もう!」
二人でエントランスまで入り、ギルが出迎えに来た執事に何かを伝えます。きっと夫人の件でしょう。身体がゾクリと震え、今逃げ出せばまだ間に合うという考えが何度も何度も何度も頭によぎります
そのたびにそんな気持ちを振りほどくように頭を振っていたら、いつものように頭の上には温かい手のひらが乗せられました。
私はいつものように手のひらを乗せてきた人に抱き着きますと、いつもと全く違う感触。具体的にいえば、ギルの胸部ではありえない柔らかさ。
「ギルベルト? 貴方の恋人は随分と甘えん坊なのね」
「え?」
それは日中に私に不合格と言いつけた人の声。恐る恐る今、抱き着いた人の服を見ると、女性ものの豪華なドレス。
間違いなくギルではない。てゆうか、この人。
視線を上げて抱き着いた人と目があいます。彼女は、日中お会いしたギルのお母さんでした。
「私に用があってきたのですよね?」
「は、はい」
ギルのお母さんはギルのように強引に私をがっしりと掴み、逃がさない様にしてきます。でもなんだか、ギルと話す様になった最初の頃を思い出す感覚。
この人は、やはりどことなくギルに似ている。だから、この人に気に入られたい。
「あの! 教えてください。何がダメなんですか。何が足りないんですか? どうしたら合格をもらえますか?」
「…………やっぱりダメね。全然わかっていないわ」
ギルのお母さんは、私から離れると、今度はどこかにむかって真っすぐ歩きます。エントランス近くの廊下手前まで来ますと、彼女は振り向いて私を見ました。
そのまま動く気配もありません。私まで固まっていると、ギルが私の背中を押します。
「マリー、呼ばれているんだ。ついていきなさい」
ギルがこっそりと呟き、私が慌ててギルのお母さんについていき始めますと、彼女も正面を向き直って歩き始めました。
しばらく歩いて一つの部屋の前。ギルのお母さんはその部屋に入り、私も続いていきました。
「ギルベルト、貴方は少し席を外しなさい」
「はい」
そしてドアが閉じられると、応接室のような豪華な部屋には、私とギルのお母さんだけ。二人きりになってしまいました。
どうしましょう。いえ、全然大丈夫ですけど、全然大丈夫じゃない。
「貴女は保守派と革新派の派閥をご存じかしら?」
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