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閑話10話 あの日と同じ 58話 ギルベルト視点
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マリーを連れて会場まで足を運ぶ。彼女の表情は少しだけ暗い。まあ、無理もないだろう。
マリーにはまだ、会場にいる人間のチェックが残っており、なるべく会場をぐるりと回る。
彼女が他の男の顔をチェックしていると思うと気に入らないが、どの男にも負けるつもりはない。
公妃であるあの人も中央で色々な人間と挨拶をしているようだ。有名人なだけあり、彼女の周りにはどんどん人が集まる。
本当はあの人がちゃんと時間を護っていれば、俺たちは夜会で人探しをする必要なんてなかったんだけどな。
だが、マリーは責めようとしない。だから俺も責めないでおいてやろう。
しばらく歩き回ったが、例の男は見つかる様子もなく、どうやらオリーブ・プライスの同伴者で間違いないようだ。
「マリー、少し風にあたろう」
俺は疲れた顔のマリーに提案をすると、彼女は俺を見てにこりと笑う。しかし、その笑顔は頑張って作ったものだと感じた。
「……はい」
元気のない返事。やはりすぐに休ませよう。いや、もっと早く休憩させるべきだったのだろう。
俺はマリーの手を引き、テラスまで足を運ぶ。人目がなくなった瞬間。マリーは崩れるように前に倒れ込みそうになった。
慌てて彼女を支えると、いつも彼女を支えているような気がしてならなかった。
もはや、わざとなのではないのかと疑いたくなるほどだ。
だが、もしわざとだというのなら、何度でも彼女に付き合って支えてあげよう。そんな可愛い甘え方をされてしまったら、言いなりになるしかないだろう。
まあ、マリーがそんな駆け引きをするほど意地悪じゃないのは、俺も良く知っているが。普通によろけたのだろう。
「大丈夫かマリー」
「……はい、なんとか」
そして彼女は支えてきた俺に抱き着き、身を委ねる。そこまで信頼されてしまうと、少し困るな。
こんなに信頼されているのに、俺はこれからも彼女の期待通りの俺でいられるだろうか。何かをきっかけに幻滅されたりするのだろうか。
「ギル、私怖いです。未だに人身売買が行われていることも、そういうことをしていた人たちに、安全だと思っていた場所で襲われたことも。いつまた別の人に襲われるかも」
「…………」
彼女がそう言い、俺は彼女の言葉を黙って聞く。彼女を抱きしめていると、不思議と大丈夫だと声をかけたくなる。
「昔、貴族街を一人で歩いていたことがあります」
何かを思い出したのか、彼女は語り始める。
「昔、私は人さらいに襲われたことがあるんです」
彼女がそういうと、俺は昔、貴族街で目撃した誘拐を思い出した。「あれはもしや」ふと、小さな声で呟くほど、俺には衝撃的だった。
「それはどのくらい前だ?」
確かめたい。あの少女が誰だったか。今となってはどうでも良いことだと思っていたが、今、強く確かめたいと思い、マリーに聞く。
「…………幼い頃としか。初等部には入学していました」
「そうか、続きを聞こうか」
その後、彼女は俺に昔の記憶を話す。初等部に入学して間もない頃にあった誘拐事件。結果的にいえば、マリーの体が細かったことと、縛り上げられた縄が子供相手だから緩めだったことが幸いし、抜け出すことに成功したそうだ。
その後も逃げ隠れをし、何とか知っている道まで逃げ延びたらしい。
そこで彼女は、目に入った少年に飛びついたそうだ。その記憶は、俺の幼い頃とも一致した。
マリーと同じ茶髪に、マリーと同じすみれ色の瞳。怖がりでビクビクしていて、それでいて何かに安心を求める彼女。
「ギル、もしかしてあの時」
「……ああ、やはりあれは君だったか。実は高等部で君にあった日。ふと、あの時の少女のことを思い出したんだ。泣き虫で怖がりでそれでいて逃げることとが得意な少女」
「それ褒めてますか?」
「褒めているさ。マリーが逃げるのが得意だったから、今俺に捕まっているんだろう?」
「それは逃げれたとは言えませんね。逃げませんけど」
逃げないでくれるなら、それに越したことはないが、俺も彼女を逃げすつもりはない。だから彼女に嫌われない様に、幻滅されない様に、それでいても俺らしく生きよう。
少なくとも、今俺の腕の中で幸せそうに笑っている彼女がいると言うことは、今の俺は合格らしい。
あの時、マリーに出会えてよかった。マリーがあの時と同じように嬉しそうで、俺も嬉しい。
全部、鮮明に覚えている。だから今、同じ人を同じように抱きしめている。こんなことで彼女が幸せそうにしてくれるならいくらでも。
マリーにはまだ、会場にいる人間のチェックが残っており、なるべく会場をぐるりと回る。
彼女が他の男の顔をチェックしていると思うと気に入らないが、どの男にも負けるつもりはない。
公妃であるあの人も中央で色々な人間と挨拶をしているようだ。有名人なだけあり、彼女の周りにはどんどん人が集まる。
本当はあの人がちゃんと時間を護っていれば、俺たちは夜会で人探しをする必要なんてなかったんだけどな。
だが、マリーは責めようとしない。だから俺も責めないでおいてやろう。
しばらく歩き回ったが、例の男は見つかる様子もなく、どうやらオリーブ・プライスの同伴者で間違いないようだ。
「マリー、少し風にあたろう」
俺は疲れた顔のマリーに提案をすると、彼女は俺を見てにこりと笑う。しかし、その笑顔は頑張って作ったものだと感じた。
「……はい」
元気のない返事。やはりすぐに休ませよう。いや、もっと早く休憩させるべきだったのだろう。
俺はマリーの手を引き、テラスまで足を運ぶ。人目がなくなった瞬間。マリーは崩れるように前に倒れ込みそうになった。
慌てて彼女を支えると、いつも彼女を支えているような気がしてならなかった。
もはや、わざとなのではないのかと疑いたくなるほどだ。
だが、もしわざとだというのなら、何度でも彼女に付き合って支えてあげよう。そんな可愛い甘え方をされてしまったら、言いなりになるしかないだろう。
まあ、マリーがそんな駆け引きをするほど意地悪じゃないのは、俺も良く知っているが。普通によろけたのだろう。
「大丈夫かマリー」
「……はい、なんとか」
そして彼女は支えてきた俺に抱き着き、身を委ねる。そこまで信頼されてしまうと、少し困るな。
こんなに信頼されているのに、俺はこれからも彼女の期待通りの俺でいられるだろうか。何かをきっかけに幻滅されたりするのだろうか。
「ギル、私怖いです。未だに人身売買が行われていることも、そういうことをしていた人たちに、安全だと思っていた場所で襲われたことも。いつまた別の人に襲われるかも」
「…………」
彼女がそう言い、俺は彼女の言葉を黙って聞く。彼女を抱きしめていると、不思議と大丈夫だと声をかけたくなる。
「昔、貴族街を一人で歩いていたことがあります」
何かを思い出したのか、彼女は語り始める。
「昔、私は人さらいに襲われたことがあるんです」
彼女がそういうと、俺は昔、貴族街で目撃した誘拐を思い出した。「あれはもしや」ふと、小さな声で呟くほど、俺には衝撃的だった。
「それはどのくらい前だ?」
確かめたい。あの少女が誰だったか。今となってはどうでも良いことだと思っていたが、今、強く確かめたいと思い、マリーに聞く。
「…………幼い頃としか。初等部には入学していました」
「そうか、続きを聞こうか」
その後、彼女は俺に昔の記憶を話す。初等部に入学して間もない頃にあった誘拐事件。結果的にいえば、マリーの体が細かったことと、縛り上げられた縄が子供相手だから緩めだったことが幸いし、抜け出すことに成功したそうだ。
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マリーと同じ茶髪に、マリーと同じすみれ色の瞳。怖がりでビクビクしていて、それでいて何かに安心を求める彼女。
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「……ああ、やはりあれは君だったか。実は高等部で君にあった日。ふと、あの時の少女のことを思い出したんだ。泣き虫で怖がりでそれでいて逃げることとが得意な少女」
「それ褒めてますか?」
「褒めているさ。マリーが逃げるのが得意だったから、今俺に捕まっているんだろう?」
「それは逃げれたとは言えませんね。逃げませんけど」
逃げないでくれるなら、それに越したことはないが、俺も彼女を逃げすつもりはない。だから彼女に嫌われない様に、幻滅されない様に、それでいても俺らしく生きよう。
少なくとも、今俺の腕の中で幸せそうに笑っている彼女がいると言うことは、今の俺は合格らしい。
あの時、マリーに出会えてよかった。マリーがあの時と同じように嬉しそうで、俺も嬉しい。
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