19 / 228
19話 ブランクの魔法
しおりを挟む
私は自室の床に突然浮かび上がった魔法陣の上に立たされました。
青白い光に六芒星のような形。それからぐにょぐにょの読むことができない文字が羅列しています。
「これ本当に大丈夫なんですよね?」
「平気平気」
協力してくれと言ってくる彼が、わざわざ私に害を与えるとは思えませんし、そのつもりだったら既に私の前に現れることなくやっているでしょう。だからきっと大丈夫。
私が六芒星の中央に立つことで、青白い光は私の背を軽く超える高さまで伸び、ブランクと私は一瞬互いの視界から消え去ってしまった。周囲すべてが青白い光に包まれ、私は何が起きているかとか考える余裕もありませんでした。徐々に青白い光が床に向かって下がっていくと、やっと周囲が見えるようになりましたが、何かがおかしい。
周囲の物の高さが低くなっているのだ。そして私は不意に足元に目線を向けようとした時、幼児では存在するはずのない大きな胸部があることに気付いた。あと床も遠い。間違いない、私は大人の姿になっている。
「これは?」
「一時的に未来の君の姿に成長させただけさ。お忍びで行くのに子供の姿はまずいだろう? 君は君が思っている以上に有名人だし、いなくなればすぐに捜索が始まるだろ」
「それもそうね」
それにしても地味なドレスね。町娘風というか…………ああ、お忍びで行くからいいのか。緑色のワンピースのような服。可愛さはあまりないけど、この時代ならこういうものなのでしょう。そういえば外って歩いたことないし、乙女ゲームでもほとんどが煌びやかなドレスか魔法学園の制服くらいしか着ていなかったわね。デートの時に外に出ても制服なのは手抜きって言われてたっけ。
「ありがとうブランク! それでどうやって外に出ればいいの?」
「ちょっと待ってくれ」
そういったブランクは、私が使った魔法陣の上に立つと、そこには私より頭一個以上の大きさの男性が現れた。相変わらずフードを被っているが、顔の位置が私より高いせいで、彼の顔を少しだけ覗くことができた。白い髪に金色の瞳。その瞳は真っすぐ私を捉えると、ブランクはフードを深くかぶって瞳を隠した。
「さてと、これでいいか。次はゲートを開く。俺から離れるなよクリスティーン」
「急に俺って言いだすのね」
「子供の姿だといつの間にか僕になってな。それにこの低い声で僕は気持ち悪いだろう?」
言われてみれば私の声も大人の声になっているが、男性であるブランクの声は少年の姿と違い完全に男性の低い声に代わっていた。少年の時と青年の時でCVが変わるあれですね、わかります。
「私はどちらでもいいと思います、子供らしい喋り方でも、思春期男子っぽい喋り方も」
「シシュンキダンシ? 馬鹿にされているような気がするが、まあいいだろう」
そういった彼は、壁に魔法陣を描き始めました。ふと床の魔法陣に視線を向けると、そこにはいつもの床しかなく魔法陣もありませんし、跡が残っているわけでもありませんでした。すごい技術よね魔法。私も時空魔法の一部は扱えるけど、他の魔法がどれくらい使えるのかわかりません。
ただ、人を成長した姿にする魔法なんておそらく存在しません。やはりブランクが使っている魔法はおかしい。それにゲートとは何でしょうか。時空魔法の一種でしょうか。
「ついてこい」
「ええ」
ブランクが壁に描かれた青白い光を出す魔法陣に触れると、彼の手は壁の向こうへとすり抜けた。私はとにかく彼を信じてそのまま魔法陣を潜り抜けました。すると、まだまだ夕暮れ時。でも町は未だに賑わっています。露店で様々なものが売られたり、中央でダンスなどのパフォーマンスを披露している方々。
初めて出た王宮の外は、こんなにも賑わっていたのですね。私は嬉しくなって走り出そうとしてしまったところで、ブランクが私の腕を握ります。
「何よ?」
「俺とはぐれたら宮殿に戻れないぞ」
「そうね、じゃこの手は離さないでね」
「……いいだろう」
私とブランクのお忍び建国祭デートが始まった。
青白い光に六芒星のような形。それからぐにょぐにょの読むことができない文字が羅列しています。
「これ本当に大丈夫なんですよね?」
「平気平気」
協力してくれと言ってくる彼が、わざわざ私に害を与えるとは思えませんし、そのつもりだったら既に私の前に現れることなくやっているでしょう。だからきっと大丈夫。
私が六芒星の中央に立つことで、青白い光は私の背を軽く超える高さまで伸び、ブランクと私は一瞬互いの視界から消え去ってしまった。周囲すべてが青白い光に包まれ、私は何が起きているかとか考える余裕もありませんでした。徐々に青白い光が床に向かって下がっていくと、やっと周囲が見えるようになりましたが、何かがおかしい。
周囲の物の高さが低くなっているのだ。そして私は不意に足元に目線を向けようとした時、幼児では存在するはずのない大きな胸部があることに気付いた。あと床も遠い。間違いない、私は大人の姿になっている。
「これは?」
「一時的に未来の君の姿に成長させただけさ。お忍びで行くのに子供の姿はまずいだろう? 君は君が思っている以上に有名人だし、いなくなればすぐに捜索が始まるだろ」
「それもそうね」
それにしても地味なドレスね。町娘風というか…………ああ、お忍びで行くからいいのか。緑色のワンピースのような服。可愛さはあまりないけど、この時代ならこういうものなのでしょう。そういえば外って歩いたことないし、乙女ゲームでもほとんどが煌びやかなドレスか魔法学園の制服くらいしか着ていなかったわね。デートの時に外に出ても制服なのは手抜きって言われてたっけ。
「ありがとうブランク! それでどうやって外に出ればいいの?」
「ちょっと待ってくれ」
そういったブランクは、私が使った魔法陣の上に立つと、そこには私より頭一個以上の大きさの男性が現れた。相変わらずフードを被っているが、顔の位置が私より高いせいで、彼の顔を少しだけ覗くことができた。白い髪に金色の瞳。その瞳は真っすぐ私を捉えると、ブランクはフードを深くかぶって瞳を隠した。
「さてと、これでいいか。次はゲートを開く。俺から離れるなよクリスティーン」
「急に俺って言いだすのね」
「子供の姿だといつの間にか僕になってな。それにこの低い声で僕は気持ち悪いだろう?」
言われてみれば私の声も大人の声になっているが、男性であるブランクの声は少年の姿と違い完全に男性の低い声に代わっていた。少年の時と青年の時でCVが変わるあれですね、わかります。
「私はどちらでもいいと思います、子供らしい喋り方でも、思春期男子っぽい喋り方も」
「シシュンキダンシ? 馬鹿にされているような気がするが、まあいいだろう」
そういった彼は、壁に魔法陣を描き始めました。ふと床の魔法陣に視線を向けると、そこにはいつもの床しかなく魔法陣もありませんし、跡が残っているわけでもありませんでした。すごい技術よね魔法。私も時空魔法の一部は扱えるけど、他の魔法がどれくらい使えるのかわかりません。
ただ、人を成長した姿にする魔法なんておそらく存在しません。やはりブランクが使っている魔法はおかしい。それにゲートとは何でしょうか。時空魔法の一種でしょうか。
「ついてこい」
「ええ」
ブランクが壁に描かれた青白い光を出す魔法陣に触れると、彼の手は壁の向こうへとすり抜けた。私はとにかく彼を信じてそのまま魔法陣を潜り抜けました。すると、まだまだ夕暮れ時。でも町は未だに賑わっています。露店で様々なものが売られたり、中央でダンスなどのパフォーマンスを披露している方々。
初めて出た王宮の外は、こんなにも賑わっていたのですね。私は嬉しくなって走り出そうとしてしまったところで、ブランクが私の腕を握ります。
「何よ?」
「俺とはぐれたら宮殿に戻れないぞ」
「そうね、じゃこの手は離さないでね」
「……いいだろう」
私とブランクのお忍び建国祭デートが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!
ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。
婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。
「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」
「「「は?」」」
「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」
前代未聞の出来事。
王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。
これでハッピーエンド。
一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。
その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。
対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。
タイトル変更しました。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる