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19話 ブランクの魔法
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私は自室の床に突然浮かび上がった魔法陣の上に立たされました。
青白い光に六芒星のような形。それからぐにょぐにょの読むことができない文字が羅列しています。
「これ本当に大丈夫なんですよね?」
「平気平気」
協力してくれと言ってくる彼が、わざわざ私に害を与えるとは思えませんし、そのつもりだったら既に私の前に現れることなくやっているでしょう。だからきっと大丈夫。
私が六芒星の中央に立つことで、青白い光は私の背を軽く超える高さまで伸び、ブランクと私は一瞬互いの視界から消え去ってしまった。周囲すべてが青白い光に包まれ、私は何が起きているかとか考える余裕もありませんでした。徐々に青白い光が床に向かって下がっていくと、やっと周囲が見えるようになりましたが、何かがおかしい。
周囲の物の高さが低くなっているのだ。そして私は不意に足元に目線を向けようとした時、幼児では存在するはずのない大きな胸部があることに気付いた。あと床も遠い。間違いない、私は大人の姿になっている。
「これは?」
「一時的に未来の君の姿に成長させただけさ。お忍びで行くのに子供の姿はまずいだろう? 君は君が思っている以上に有名人だし、いなくなればすぐに捜索が始まるだろ」
「それもそうね」
それにしても地味なドレスね。町娘風というか…………ああ、お忍びで行くからいいのか。緑色のワンピースのような服。可愛さはあまりないけど、この時代ならこういうものなのでしょう。そういえば外って歩いたことないし、乙女ゲームでもほとんどが煌びやかなドレスか魔法学園の制服くらいしか着ていなかったわね。デートの時に外に出ても制服なのは手抜きって言われてたっけ。
「ありがとうブランク! それでどうやって外に出ればいいの?」
「ちょっと待ってくれ」
そういったブランクは、私が使った魔法陣の上に立つと、そこには私より頭一個以上の大きさの男性が現れた。相変わらずフードを被っているが、顔の位置が私より高いせいで、彼の顔を少しだけ覗くことができた。白い髪に金色の瞳。その瞳は真っすぐ私を捉えると、ブランクはフードを深くかぶって瞳を隠した。
「さてと、これでいいか。次はゲートを開く。俺から離れるなよクリスティーン」
「急に俺って言いだすのね」
「子供の姿だといつの間にか僕になってな。それにこの低い声で僕は気持ち悪いだろう?」
言われてみれば私の声も大人の声になっているが、男性であるブランクの声は少年の姿と違い完全に男性の低い声に代わっていた。少年の時と青年の時でCVが変わるあれですね、わかります。
「私はどちらでもいいと思います、子供らしい喋り方でも、思春期男子っぽい喋り方も」
「シシュンキダンシ? 馬鹿にされているような気がするが、まあいいだろう」
そういった彼は、壁に魔法陣を描き始めました。ふと床の魔法陣に視線を向けると、そこにはいつもの床しかなく魔法陣もありませんし、跡が残っているわけでもありませんでした。すごい技術よね魔法。私も時空魔法の一部は扱えるけど、他の魔法がどれくらい使えるのかわかりません。
ただ、人を成長した姿にする魔法なんておそらく存在しません。やはりブランクが使っている魔法はおかしい。それにゲートとは何でしょうか。時空魔法の一種でしょうか。
「ついてこい」
「ええ」
ブランクが壁に描かれた青白い光を出す魔法陣に触れると、彼の手は壁の向こうへとすり抜けた。私はとにかく彼を信じてそのまま魔法陣を潜り抜けました。すると、まだまだ夕暮れ時。でも町は未だに賑わっています。露店で様々なものが売られたり、中央でダンスなどのパフォーマンスを披露している方々。
初めて出た王宮の外は、こんなにも賑わっていたのですね。私は嬉しくなって走り出そうとしてしまったところで、ブランクが私の腕を握ります。
「何よ?」
「俺とはぐれたら宮殿に戻れないぞ」
「そうね、じゃこの手は離さないでね」
「……いいだろう」
私とブランクのお忍び建国祭デートが始まった。
青白い光に六芒星のような形。それからぐにょぐにょの読むことができない文字が羅列しています。
「これ本当に大丈夫なんですよね?」
「平気平気」
協力してくれと言ってくる彼が、わざわざ私に害を与えるとは思えませんし、そのつもりだったら既に私の前に現れることなくやっているでしょう。だからきっと大丈夫。
私が六芒星の中央に立つことで、青白い光は私の背を軽く超える高さまで伸び、ブランクと私は一瞬互いの視界から消え去ってしまった。周囲すべてが青白い光に包まれ、私は何が起きているかとか考える余裕もありませんでした。徐々に青白い光が床に向かって下がっていくと、やっと周囲が見えるようになりましたが、何かがおかしい。
周囲の物の高さが低くなっているのだ。そして私は不意に足元に目線を向けようとした時、幼児では存在するはずのない大きな胸部があることに気付いた。あと床も遠い。間違いない、私は大人の姿になっている。
「これは?」
「一時的に未来の君の姿に成長させただけさ。お忍びで行くのに子供の姿はまずいだろう? 君は君が思っている以上に有名人だし、いなくなればすぐに捜索が始まるだろ」
「それもそうね」
それにしても地味なドレスね。町娘風というか…………ああ、お忍びで行くからいいのか。緑色のワンピースのような服。可愛さはあまりないけど、この時代ならこういうものなのでしょう。そういえば外って歩いたことないし、乙女ゲームでもほとんどが煌びやかなドレスか魔法学園の制服くらいしか着ていなかったわね。デートの時に外に出ても制服なのは手抜きって言われてたっけ。
「ありがとうブランク! それでどうやって外に出ればいいの?」
「ちょっと待ってくれ」
そういったブランクは、私が使った魔法陣の上に立つと、そこには私より頭一個以上の大きさの男性が現れた。相変わらずフードを被っているが、顔の位置が私より高いせいで、彼の顔を少しだけ覗くことができた。白い髪に金色の瞳。その瞳は真っすぐ私を捉えると、ブランクはフードを深くかぶって瞳を隠した。
「さてと、これでいいか。次はゲートを開く。俺から離れるなよクリスティーン」
「急に俺って言いだすのね」
「子供の姿だといつの間にか僕になってな。それにこの低い声で僕は気持ち悪いだろう?」
言われてみれば私の声も大人の声になっているが、男性であるブランクの声は少年の姿と違い完全に男性の低い声に代わっていた。少年の時と青年の時でCVが変わるあれですね、わかります。
「私はどちらでもいいと思います、子供らしい喋り方でも、思春期男子っぽい喋り方も」
「シシュンキダンシ? 馬鹿にされているような気がするが、まあいいだろう」
そういった彼は、壁に魔法陣を描き始めました。ふと床の魔法陣に視線を向けると、そこにはいつもの床しかなく魔法陣もありませんし、跡が残っているわけでもありませんでした。すごい技術よね魔法。私も時空魔法の一部は扱えるけど、他の魔法がどれくらい使えるのかわかりません。
ただ、人を成長した姿にする魔法なんておそらく存在しません。やはりブランクが使っている魔法はおかしい。それにゲートとは何でしょうか。時空魔法の一種でしょうか。
「ついてこい」
「ええ」
ブランクが壁に描かれた青白い光を出す魔法陣に触れると、彼の手は壁の向こうへとすり抜けた。私はとにかく彼を信じてそのまま魔法陣を潜り抜けました。すると、まだまだ夕暮れ時。でも町は未だに賑わっています。露店で様々なものが売られたり、中央でダンスなどのパフォーマンスを披露している方々。
初めて出た王宮の外は、こんなにも賑わっていたのですね。私は嬉しくなって走り出そうとしてしまったところで、ブランクが私の腕を握ります。
「何よ?」
「俺とはぐれたら宮殿に戻れないぞ」
「そうね、じゃこの手は離さないでね」
「……いいだろう」
私とブランクのお忍び建国祭デートが始まった。
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