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51話 入学式前夜
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父と母との絆を確かめることができた初めての外出から九年。
あの後、すぐに母の懐妊がわかり、私達家族には新たなに男の子を迎えることができました。王族の嫡男。この子が次期国王。
私は柔らかいほっぺたを撫でると、産まれたばかりの命が幸せそうに笑う。私の弟。私が守るべき弟。
私は姫として礼儀作法や、魔法学園で学ぶための基礎知識を学ばされました。それまでの過程でヒロインの話は一度も上がってこない。
それに復活しているはずの魔王はこの期間何をしていたのでしょうか。
思えば魔王はジェラールやエリザベートが学園に通っていた頃から活動していたはず。
わからないことはおいといてこの九年間で、友人である皆様も成長されました。
臆病で優しい少年だったミゲルはガエルのように背が伸び、声変わりもした。目標は王国騎士団長だなんてお父様に憧れているのね。あのころとは違い、同じ騎士団の子供たちと仲良くなり、交友関係も広くなっています。
ビルジニは背も高くすらりとした長身の女性になりました。未だに男装を辞めないし、私と目が合うと王子様ムーブを始める困った親友です。そんなことしていたらいい縁談が来なくなってしまいますよ? 今ではたくさんの令嬢から理想の王子様として扱われています。
リビオは私よりちょっとだけ大きいくらいの背でとどまっています。顔は綺麗ですが、性格は可愛くありません。それにあいかわらず一人で魔法の研鑽をしていますので、たまに構いに行ってあげています。私たち以外に友達を作らないところが少々心配です。
アレクシスは背が伸び、まさにステレオタイプのクール系キャラに育ちました。ちょっと厳格に育ってしまいましたが、クールで思いやりのある優しいお兄さんです。従兄ですけど。いつのまにか伯爵家以上の子息子女を連れ歩くようになりました。ちょっと変わったわね。アレクシスは一歳年上ですので、既に魔法学園に通っています。
ジョアサンはアレクシスと同じくらい背が伸び、型幅も広く男らしい体格に育ちましたが、ぼんやりしているところは今も昔も変わりません。教会関係者の知人や王都近辺の子供たちの強い味方で、今では教会に集まる子供たちには優しい和やかな保育士さんポジションです。しかし、私が来たとわかると妙に警戒されるというか、顔は笑っているのに心が笑っていない。そういう冷たい印象を感じることもあります。
さてと…………ベッドの上にはまだ一度も袖を通していない制服。
白い制服はところどころ金色の刺繍がはいっており、これで豪華さを表しているなら、正直子供だましなのではと思いましたが、そもそもこの世界の基盤である乙女ゲームの対象年齢が十二歳以上でした。
思えば中学生や高校生なら騙せそうなデザイン。いや、私目線でも十分可愛いかな。…………魔法学園か。
ついにゲームの舞台…………の数年後の世界に足を踏み入れるのね。一応全寮制ではありませんので、私は王宮から通う予定です。
学園には自身の従者を連れていくことができるのです。私が連れていくのはセシルではなく、私と同じころに産まれ乳兄弟ならぬ乳姉妹のスザンヌです。
「失礼します」
部屋に入ってくるのは、五歳のころに私を世話してくれたセシルにそっくりの綺麗な茶髪にサイドテールのメイド。彼女がスザンヌです。
セシル同様に私の言うことはなんでも聞いてくださるのですが、年はほとんど一緒ですので甘やかされるみたいなことはありません。
「おや、制服を着られるのですか? お手伝いしますよ?」
「いいのよいいの! この制服は平民も着れるように手伝い不要なのですから」
「ですがクリスティーン様は、平民の服すら、ご自分で着たことがありませんよね?」
「…………そ、そうね。ではお願いしようかしら」
言われてみればこの十四年間一度も自分で服を着たことがありませんね。
今まではそもそも手が届かない位置に留め具のある服でしたから手伝ってもらって当然でしたが、この服なら私でも着れるだなんてして、突然着れるようになっていたら不自然よね。
大人しくスザンヌに制服を着せて貰います。
着てみると肌触りもよく世界観より一世紀か二世紀進んで良そうな技術で作られていそうな服を着てくるりと一回転。
膝を隠す長さのスカートの裾がぶわっと広がる。ピタッと止まってスザンヌに目を合わせ、にこりと笑って見せた。
「どうかしら?」
「とても似合っていますクリスティーン様」
彼女は無表情で私を褒めたたえます。その無表情さがジェラールを思い出せます。
今では笑うことも増えましたが、なんだか昔のジェラールみたい。
「そう思うならもうちょっと笑いながら言ってよね?」
「おぅっお嬢様っ…………と、とてもおおおおお似合い。ぶふっ」
「貴女そんな笑い方しないでしょ!!!!!!!!」
クールで愛嬌のない子ですが、突然悪ふざけをしてくる困ったメイドです。
「もう…………明日はいよいよ入学式ね」
目的は一つ。
学園に通う短い期間で可能な限り多くのワンダーオーブを回収する。ワンダーオーブといえば、もうブランクとは九年間ずっとあっていませんね。
ちゃんと協力してくださるのかしら?
あの後、すぐに母の懐妊がわかり、私達家族には新たなに男の子を迎えることができました。王族の嫡男。この子が次期国王。
私は柔らかいほっぺたを撫でると、産まれたばかりの命が幸せそうに笑う。私の弟。私が守るべき弟。
私は姫として礼儀作法や、魔法学園で学ぶための基礎知識を学ばされました。それまでの過程でヒロインの話は一度も上がってこない。
それに復活しているはずの魔王はこの期間何をしていたのでしょうか。
思えば魔王はジェラールやエリザベートが学園に通っていた頃から活動していたはず。
わからないことはおいといてこの九年間で、友人である皆様も成長されました。
臆病で優しい少年だったミゲルはガエルのように背が伸び、声変わりもした。目標は王国騎士団長だなんてお父様に憧れているのね。あのころとは違い、同じ騎士団の子供たちと仲良くなり、交友関係も広くなっています。
ビルジニは背も高くすらりとした長身の女性になりました。未だに男装を辞めないし、私と目が合うと王子様ムーブを始める困った親友です。そんなことしていたらいい縁談が来なくなってしまいますよ? 今ではたくさんの令嬢から理想の王子様として扱われています。
リビオは私よりちょっとだけ大きいくらいの背でとどまっています。顔は綺麗ですが、性格は可愛くありません。それにあいかわらず一人で魔法の研鑽をしていますので、たまに構いに行ってあげています。私たち以外に友達を作らないところが少々心配です。
アレクシスは背が伸び、まさにステレオタイプのクール系キャラに育ちました。ちょっと厳格に育ってしまいましたが、クールで思いやりのある優しいお兄さんです。従兄ですけど。いつのまにか伯爵家以上の子息子女を連れ歩くようになりました。ちょっと変わったわね。アレクシスは一歳年上ですので、既に魔法学園に通っています。
ジョアサンはアレクシスと同じくらい背が伸び、型幅も広く男らしい体格に育ちましたが、ぼんやりしているところは今も昔も変わりません。教会関係者の知人や王都近辺の子供たちの強い味方で、今では教会に集まる子供たちには優しい和やかな保育士さんポジションです。しかし、私が来たとわかると妙に警戒されるというか、顔は笑っているのに心が笑っていない。そういう冷たい印象を感じることもあります。
さてと…………ベッドの上にはまだ一度も袖を通していない制服。
白い制服はところどころ金色の刺繍がはいっており、これで豪華さを表しているなら、正直子供だましなのではと思いましたが、そもそもこの世界の基盤である乙女ゲームの対象年齢が十二歳以上でした。
思えば中学生や高校生なら騙せそうなデザイン。いや、私目線でも十分可愛いかな。…………魔法学園か。
ついにゲームの舞台…………の数年後の世界に足を踏み入れるのね。一応全寮制ではありませんので、私は王宮から通う予定です。
学園には自身の従者を連れていくことができるのです。私が連れていくのはセシルではなく、私と同じころに産まれ乳兄弟ならぬ乳姉妹のスザンヌです。
「失礼します」
部屋に入ってくるのは、五歳のころに私を世話してくれたセシルにそっくりの綺麗な茶髪にサイドテールのメイド。彼女がスザンヌです。
セシル同様に私の言うことはなんでも聞いてくださるのですが、年はほとんど一緒ですので甘やかされるみたいなことはありません。
「おや、制服を着られるのですか? お手伝いしますよ?」
「いいのよいいの! この制服は平民も着れるように手伝い不要なのですから」
「ですがクリスティーン様は、平民の服すら、ご自分で着たことがありませんよね?」
「…………そ、そうね。ではお願いしようかしら」
言われてみればこの十四年間一度も自分で服を着たことがありませんね。
今まではそもそも手が届かない位置に留め具のある服でしたから手伝ってもらって当然でしたが、この服なら私でも着れるだなんてして、突然着れるようになっていたら不自然よね。
大人しくスザンヌに制服を着せて貰います。
着てみると肌触りもよく世界観より一世紀か二世紀進んで良そうな技術で作られていそうな服を着てくるりと一回転。
膝を隠す長さのスカートの裾がぶわっと広がる。ピタッと止まってスザンヌに目を合わせ、にこりと笑って見せた。
「どうかしら?」
「とても似合っていますクリスティーン様」
彼女は無表情で私を褒めたたえます。その無表情さがジェラールを思い出せます。
今では笑うことも増えましたが、なんだか昔のジェラールみたい。
「そう思うならもうちょっと笑いながら言ってよね?」
「おぅっお嬢様っ…………と、とてもおおおおお似合い。ぶふっ」
「貴女そんな笑い方しないでしょ!!!!!!!!」
クールで愛嬌のない子ですが、突然悪ふざけをしてくる困ったメイドです。
「もう…………明日はいよいよ入学式ね」
目的は一つ。
学園に通う短い期間で可能な限り多くのワンダーオーブを回収する。ワンダーオーブといえば、もうブランクとは九年間ずっとあっていませんね。
ちゃんと協力してくださるのかしら?
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